唾液とアプリだけで迅速・正確な新型コロナの検査を可能にする英Vatic

新型コロナウイルスのパンデミックでは、デルタ型の感染が一気に拡大する局面を迎えている。しかし、世界中で予防接種が進む今、社会にとっての主なコストは、医療サービスが逼迫することではなく、企業の従業員が追跡システムによって自己隔離を強制されるためにその会社に生じる大規模な混乱だ。このように、職場(あるいはその他の環境)におけるバイオセキュリティが非常に重要になっている。

上の段落は、英国の著名な科学者たちがパンデミックの次の段階に関して最近政府に送った公開書簡の内容を言い換えたものだ。

職場のバイオセキュリティがより効率的でなければならないとすれば、より迅速で優れた検査方法が必要になる。英国のスタートアップが、この問題を解決したかもしれないと考えている。

バイオセキュリティ企業のVatic(バティック)は、新型コロナの「KnowNow」検査を開発した。同社は、この検査が、ラテラルフロー検査よりも正確で、より速く、より簡単で(必要なのは口の中に入れる綿棒だけ)、検査データの共有が可能で、さらにサービスや職場へのアクセスを可能にする「パスポート」のQRコードも作成できると主張している。

Vaticは今回、家庭用検査の展開のために637万ドル(約7億1000万円)を調達した。まず新型コロナウイルス向け検査から始める。

今回のシード資金ラウンドは、ロンドンのVCであるLocalGlobeとHoxton Venturesが主導した。

2019年創業のVaticは、家庭内でデータを生成することを目的とした唾液ベースの検査を開発した。同社によると、検査にかかる時間は15分以内で、身体が感染を撃退したことにともなう偽陽性を回避し、検査時に実際に感染している人を特定できるという。今までの抗原検査では、200人に1人の割合で偽陽性になる可能性があった。

Vaticの検査

Vaticによると、同社の検査は、人間の細胞表面を模倣することで感染性ウイルスを特定するもので、ラテラルフロー検査の開発方法を効果的に再設計し「その精度を高めている」という。

唾液のみによる新型コロナのスピード抗原検査KnowNowは、CEマークの承認を得て、実際に英国で使用されている。唾液検査とアプリを組み合わせることで、自宅での検査結果を医療機関や他のプラットフォームと即座に共有することが可能になる。唾液を使った検査は、喉の奥や鼻腔を綿棒でこする必要がある現在のラテラルフロー検査に比べ、はるかに簡単で不快感も少ないことは明らかだ。Vaticは現在、FDA(米食品医薬品局)から緊急使用許可を得るために米国で臨床試験を行っている。

Vaticの共同創業者でCEOのAlex Sheppard(アレックス・シェパード)氏は次のように説明した。「新型コロナのスピード検査導入が最近減少している理由の1つは、サンプリング技術にあります。今の検査は、受ける人にとって非常に不快でわずらわしいものです。今後、オフィスや学校、接客業などで新型コロナが発生した際の混乱を最小限に抑え、正常な状態に戻すためには、大量の検査を行う際の苦痛を取り除く必要があります。そのために私たちは、検査と一緒にバイオセキュリティ技術を開発し、ユーザーが独自のQRコードを作成して会場に安全に入場できるようにしました」。

どのような仕組みなのか。Vaticによると、同社の技術は、感染力の指標としてウイルスの「スパイク」を探すが、ウイルスの潜在的な変異に対しても免疫があり、どのような変異があっても新型コロナを検査することができるという。

シェパード氏によれば、このVaticの検査はまだ第1段階に過ぎないという。人間の細胞の表面を模倣することで、他の感染性ウイルスも検出できる。

「私たちは、新型コロナウイルスの中から、皮下注射針のようにスパイクを使ってヒトの細胞に侵入する部分を選びました」とシェパード氏は話した。「この部分が、今回の検査で基本的に相互作用する部分です。つまり、今回の検査では人間の細胞を模倣していることになりますが、これは完全にユニークなものです。通常のラテラルフロー検査とはまったく異なるエンジンを搭載していますが、それは動力源となる化学物質がまったく異なるからです」。

Vaticの検査のもう1つの特徴は、唾液の交換検査と連動したアプリを採用していることだ。検査が終わると、暗号化されたQRコードが表示される。

「NHS(英国民保険サービス)の検査とまったく異なるというわけではありません」とシェパード氏はいう。「しかし、完全に信頼ベースのシステムなので、健康データを危険にさらす必要はありません。政府のウェブサイトに自宅の住所を書き込むわけではないのですから。もちろん、通知可能な疾患の報告に関する政府の要件を満たしていますが、健康データを提供しすぎていないことを確認できるよう設計されています。安全なのです」。

シェパード氏と共同創業者のMona Omir(モナ・オミール)氏は、オックスフォード大学の2019年9月のアクセラレータープログラム「Entrepreneur First」で出会い、その後、ロンドンの投資家と、オックスフォード大学のOxford FoundryとInnovate UKからの助成金支援の両方から資金を調達している。

LocalGlobeのパートナーであるJulia Hawkins(ジュリア・ホーキンス)氏は、次のようにコメントした。「Vaticのテクノロジーは検査の未来です。英国の多くのトップ企業が率先して、従業員の検査を事業回復計画の最優先事項としていると聞き、すばらしいことだと思っています。今回の新たな投資は、英国内および海外でのKnowNow検査の展開を成功させ、中断を最小限に抑えて経済活動を再開させるための鍵となるでしょう」。

Hoxton VenturesのパートナーであるRob Kniaz(ロブ・ニアズ)氏は「綿棒で唾液のみの採取は、不快で厄介なスピード検査の世界では真のブレイクスルーであり、Vaticチームの市場への投入の速さは非常に印象的です。Vaticにとっては、この検査は旅の始まりに過ぎず、家庭での検査という市場に革新をもたらす機会は無限にあります」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Vatic新型コロナウイルスアプリイギリス資金調達

画像クレジット:Vatic founders, Alex Sheppard and Mona Kab Omir

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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