商業不動産情報の大規模データベース運営のReonomyが約65億円を調達

不動産の投資、建設、購入、賃貸、保守を行う個人や企業が関わる不動産業界は、特にデータソースに関しては非常に細分化されている。不動産に関するすべてのデータを統合するデータベースを構築している、ニューヨーク拠点のスタートアップが、米国外への進出のため、グロースラウンドで資金を調達した。

Reonomy(リオノミー)がシリーズDラウンドで6000万ドル(約65億円)の調達を完了した。同社は公開・非公開を問わず約100件のソースから取り込んだデータをAIで処理し、開発者、投資家、購入者など商業不動産(企業向けビルから集合住宅までを含み、個人向けの戸建ては含まない)に関わるすべての人が使える市場情報を提供するスタートアップだ。

現在、同社には10万人以上の顧客がいる。1人の顧客が複数のユーザーアカウントを持っていることもある。データベースは米国内の商業不動産の約99%にあたる約5000万の物件をカバーする。 データベースには、企業が8000万社、不動産に関わる個人が3億人、住宅ローンが3800万件、販売事例が6800万件登録されている。

データソースは増え続けている。このラウンドに併せてReonomyは、CoreLogic、Black Knight、Dun&Bradstreetとの新しいパートナーシップを発表した。

フィナンシャルインベスターとストラテジックインベスターの両方が資金を出した。これは会社の可能性と現在の顧客の質の良さの両方を示している。Georgian Partnersがリードするこのラウンドには、Wells Fargo Strategic CapitalとCiti Ventures(不動産融資に関わる両社はReonomyのユーザーでもある)、既存株主からSapphire Ventures、Bain Capital、Primary Venture Partnersが参加した。

Reonomyはバリュエーションを公表していないが、創業者兼CEOのRich Sarkis(リッチ・サーキス)氏は「間違いなく最高のラウンド」だと述べた。2013年に設立された同社はこれまでに1億2800万ドル(約140億円)を調達し、PitchBookのデータによると直近ラウンド(2018年)でのポストマネーのバリュエーションは1億5300万ドル(約170億円)だった。これは、現在のバリュエーションがおそらく2億ドル(約220億円)を大きく上回っていることを意味する。

「家のように安全」という表現は、不動産価格は常に上昇するため良い投資であるという考えから生まれた。だが、現代における市場の広範な発展によって、非常に不安定な領域になる可能性がある。クオンツによる難解なアルゴリズム、果てしない欲望、止むことのない腐敗、世界経済の状況などが市場に強い影響を与え、巨大なブームや破壊的な不均衡をもたらしている。

Reonomyは、現在何が起こっているかを正しく把握するだけでなく、将来何が起こるかを予測するためのツールとしての地位を確立した。 多数の異なるデータソースから成るデータベースであることを踏まえれば当然かもしれないが、いざ自分で同じものを構築するとなれば、多くの人手と投資を必要とするはずだ。

データベースプラットフォームによってはシェーピングとクエリに技術的な知識が必要だが、Reonimyが目指すのはユーザーの水先案内人として、技術の知識がなくても使えるデータベースを開発することだ。

「Reonomyが使えそうな分野は多岐にわたる」とサーキス氏は語った。すぐに思いつく分野は販売だが、研究などの分野でも使用されている。顧客には、住宅ローンの貸し手や不動産購入者だけでなく、不動産業界でも現場に近い場所で働いている人たちもいる。例えば、屋根修理業者がある時期に開発された建物のリストから、屋根の交換が必要になる建物のリストを作成できる。

サーキス氏は「顧客に共通しているのは、不動産市場について何かを理解するためのソリューションを探しているということだ。我々は乱雑なデータを意味のあるデータに変える。Reonomyの利用者が投資家、屋根修理業者、ローンの引き受け人であるかどうかに関係なく」と説明した。

サーキス氏によると、同社は現在、米国の商業不動産の約99%をカバーしており、カナダ、アジア、オーストラリア、英国、ヨーロッパなどの類似した市場でそのコンセプトを拡大する計画だ。

Georgian PartnersのプリンシパルであるEmily Walsh(エミリー・ウォルシュ)氏は声明で「Reonomyは、米国の商業不動産1つ1つに識別子を割り当て、強力なプラットフォームを開発した。この識別子を大企業が活用し、公開・非公開両方のデータソースを結び付け、以前は達成できなかった不動産データの可視化を進めている」と述べた。

画像クレジット:Spencer Platt

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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