問い合わせ対応ソフトShelf.ioが過去1年間でARR4倍に、57.7億円という巨額のシリーズBを完了

上場企業の取材に少々気が重くなることがある。上場企業というものは毎年そこそこ成長し、担当アナリストは粗利益率の改善や営業担当者の効率性について質問攻めにする。やや単調にもなり得るのだ。一方、スタートアップ企業の成長は早く、語るのも楽しい。

それはShelf.io(シェルフ・アイ・オー)にも当てはまる。同社は米国時間8月23日、2020年7月から2021年7月までの間に年間経常収益(ARR)を4倍に伸ばしたことなど、一連のすばらしい指標を発表した。また、Tiger GlobalとInsight PartnersがリードするシリーズBで5250万ドル(約57億7500万円)を獲得したことも発表した。

シリーズA以降のスタートアップとしては早い成長だ。Crunchbaseには、シリーズBの前に820万ドル(約9億円)を調達したとあるが、PitchBookでは650万ドル(約7億円)となっている。いずれにせよ、同社は今回の資金調達の前に、限られた資本で効率的に事業を拡大していた。

同社のソフトウェアは何をするのか。Shelfは、企業の情報システムに接続してデータを学習し、従業員が検索などで情報収集をしなくても、問い合わせに対応できるようにする。

同社はまず、カスタマーサービスをターゲットにしようとしている。ShelfのCEOであるSedarius Perrotta(セダリウス・ペロッタ)氏によると、Salesforce(セールスフォース)、SharePoint(シェアポイント)、従来のナレッジマネジメントプラットフォームや、Zendeskなどから情報を吸収することができるという。そして、モデルやスタッフのトレーニングを経て、サポートスタッフが顧客とリアルタイムで会話をしながら、顧客の質問に対する回答を提供することができる。

また、同社のソフトウェアは、人間のエージェントに向けられたわけではない顧客からの質問に対する回答を提供したり、企業のナレッジを検索可能なデータベースとして提供したりすることで、従業員が顧客の問題を迅速に解決できるようにする。

ペロッタ氏によると、Shelfが次にターゲットにしているのは営業市場で、その他の分野も追いかけるという。Shelfは営業にどうフィットするのだろうか。同社のソフトウェアは、スタッフに対し、すでにある類似案件の提案書やその他の関連コンテンツを提示できるかもしれないという。要するに、Salesforceをクリックしたり、サポートの問い合わせに答えたりと、多くの従業員が同じような仕事をしている企業では、Shelfがそうした活動を学習して、従業員の仕事をより賢く支援できる。ソフトウェアの学習能力も、時間とともに向上していくものと思われる。

現在100人程度のShelfは、年内に規模を2倍にし、2022年にはさらに2倍にしたいと考えている。

そこで新たな資本が投入されることになった。機械学習やデータサイエンスの分野で人を雇うのは、非常に高くつく。また、採用規模を早く拡大したいなら、銀行口座に多額の残高が必要になる。

Shelfが、少なくともそれまでの資金調達額と比較し、今回のような桁違いのシリーズBを確保できた理由は、ARRの急成長だけではない。ペロッタ氏によると、同社は純額で130%の契約保持を達成しており、解約もない。これは、同社の顧客が定着し、有機的に拡大していることを意味している。

現在のShelfは興味深い存在であり、現在の形で販売できるニッチな分野を見つけたことは確かだが、筆者はMerlinAIと呼ばれる機械学習システムをどこまで進化させることができるかに興味がある。もしこの技術が十分に賢くなれば、従業員を促したり、助けたりする機能によって、新入社員研修の時間を短縮し、従業員の研修にかかるコスト全般を削減することができるだろう。それは巨大な市場になると思われる。

これはいかにもTigerが入り込んできそうな取引だ。過去のラウンドと比べて大規模な高成長企業への投資で、その企業が向かう市場には大きな空白がある。Tigerがこの会社の株をいくらで買ったとしても、数年間の継続的な成長があれば、投資のリスクを打ち消すはずだ。筆者の読みでは、Tigerは、ソフトウェア市場の長期的な成長に関して強気なファンドで、その点でまさに市場をリードしている。Shelfはその仮説にきちんと合致しているのだ。

画像クレジット:Vladyslav Bobuskyi / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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