国際送金サービスを手掛けるTransferWiseの企業評価は5250億円、330億円のセカンダリーセールを受け

英国・ロンドンに本社を置き国際送金サービスを提供するTransferWise(トランスファーワイズ)は、未公開市場で現在50億ドル(約5250億円)で評価されていることを明らかにした。Sky News(スカイニュース)の報道を認めた。これはバリュエーションが2019年5月以降43%増加したことを意味する。この価値は3億1900万ドル(約330億円)の株式のセカンダリーセールによって顕在化した。

「セカンダリー」株式ラウンドをリードしたのは、新規投資家のD1 Capital Partners(D1キャピタルパートナーズ)と既存株主のLone Pine Capital(ローンパインキャピタル)だ。セカンダリーラウンドでは、従業員を含む既存株主が持ち株の一部を他の新規または既存投資家に売却するため、TransferWiseの貸借対照表には資金が入らない。

Vulcan Capital(バルカンキャピタル)も新規投資家として参加した。Baillie Gifford(ベイリーギフォード)、Fidelity Investments(フィデリティインベストメント)、LocalGlobe(ローカルグローブ)は既存の持ち株に追加で投資した。

注目したいのは、50億ドル(約5250億円)の評価では欧州で最も評価の高いフィンテックの未公開企業になるわけではないということだ。Klarna(クラーナ)が昨年8月に公表(未訳記事)した55億ドル(約5780億円)のバリュエーションで最初に登場し、今年2月には新型コロナウイルス危機が起きる直前にRevolut(レボリュート)が続いた

上述の例はフィンテック企業を評価し、成長させる対照的な方法を示しているように見える。それぞれの会社の規模拡大は、収益性とエクイティファイナンスによる成長のバランスが異なる。

KlarnaとRevolutのバリュエーションはいずれもプライマリーファンディングを通じて到達した金額だ。Klarnaは4億6000万ドル(約480億円)、Revolutは5億ドル(約530億円)を調達した。TransferWiseは、未公開のセカンダリーマーケットの評価のみをベースとして高いバリュエーションを実現した。同じことが2019年5月にも起こった。その時投資家は同社を35億ドル(約3680億円)で評価し、2億9200万ドル(約310億円)のセカンダリーラウンド(未訳記事)が行われた。2017年後半の2億8000万ドル(約290億円)のシリーズEラウンドで達成したバリュエーションの2倍以上だ。

さらに、2010年創業のTransferWiseは2017年のどこかの時点から利益を上げ始めた。2005年創業のKlarnaは初日からかなりの利益を上げていたが、昨年のグローバル展開へ向けた投資により初めて損失を計上した。ずっと新参のRevolutは損失を出し続けているが、何よりも成長を優先している。伝えられるところ(Financial News記事)によると今年中の黒字転換を目指しているという。

一方のTransferWiseは現在、世界中の800万人の顧客にサービスを提供しており、2500種類の通貨ルートと54種類の通貨で、毎月約40億ポンド(約5450億円)の国境を越える支払いを処理している。同社は最近、規制当局から新しく認可を取得し、TransferWiseボーダーレスアカウントを通して英国で貯蓄と投資の選択肢を提供することも発表(未訳記事)した。この新しいプロダクトは「今後12カ月以内に」立ち上げる予定だ。

「当社は過去数年間、顧客のみが資金の調達手段だった。外部から資金を調達する必要はなかった」と共同創業者で現在のCEOであるKristo Käärmann(クリスト・カーマン)氏は声明で述べた。「今回のセカンダリーラウンドは、これまでの成功に貢献してくれた投資家や従業員に報いるとともに、新しい投資家が参入する機会を提供する」。

もちろん、重要な資金調達ラウンド(セカンダリーまたはプライマリー)があるといつも、TransferWiseは上場するのか、またはいつなのかという、気が早い質問が飛んでくる。これは議論の余地がある質問だ。アーリーステージから長く投資する投資家は今後も未公開市場で流動性を享受できるからだ。ただレイトステージのセカンダリーの大口投資家は普通、遅かれ早かれIPOを念頭に置いている。

カーマン氏は先月末に「当社は『メリットは何なのか』によってその決定を下す。会社にとって有益な時期なのか。その時期はまだ来ていない」と筆者に電話で話し、「IPOが起こるとすれば会社にとっても顧客にとっても有益な時期に限定される」と付け加えた。

ただし、同社の動向を観察している人なら、TransferWiseのCEOがそれ以外のことを言うとは思わないはずだ。

画像クレジット:TransferWise

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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