多拠点居住プラットフォーム「ADDress」正式ローンチ、MaaSとの定額組み合わせサービス提供も

写真右から4人目:アドレス代表取締役社長の佐別当隆志氏

月額制で全国住み放題の多拠点居住プラットフォーム「ADDress」を展開するアドレスは10月29日、JR東日本スタートアップほかを引受先とする資金調達の実施とサービスの正式なスタートを発表した。

同時にJR東日本スタートアップ、ANA、IDOMとの提携により、飛行機・電車・クルマといったモビリティとコリビングを組み合わせた、定額制の「住まい+移動社会」実現に向けて、サービスの実証実験を開始することも明らかにしている。

年内50拠点、3年後に2000拠点・会員1万人を目指す

ADDressは月額4万円からの料金で、全国24カ所にある拠点に自由に住める多拠点コリビング(Co-living)サービスだ。各拠点では個室を確保しながら、シェアハウスのようにリビングやキッチンなどを共有する。空き家や空き別荘のオーナーと契約することで、遊休不動産の活用とコスト抑制を図っている。

2018年12月にサービス提供を発表したADDressは、これまで3回にわたるクラウドファンディングを通じて会員を募集。初回、Makuakeで実施したクラウドファンディングでは1200万円超を集めた。現在はお試しの1カ月契約会員も含めると200人が登録して実際に利用。クラウドファンディングからの募集が終了してからは、3000人が正式サービス開始の案内を待つ状況だったという。

ADDressは本格始動に伴い、サービスを公式サイトへ移し、本人確認や反社チェック、契約、決済をシステム化した上で、新規会員の募集を開始した。またサービスの正式なスタートに伴い、ADDressでは新しい料金メニューを新設している。

個人メニューは年契約のみとなり、1アカウント月額4万円の「レギュラープラン」に加え、月額6万円〜で専用個室が使える「専用個室プラン」の2種類と、オプションでカップルや友人が月額2万円の追加で同室利用できる「パートナープラン」が設定されている。

法人メニューには1アカウントあたり月額5万円、3アカウント(3人)からの契約で、年間を通して滞在可能な固定ベッドが利用できる「ベーシックプラン」、1アカウントを3人で共有利用できる代わりに固定ベッドなし、月額8万円で使える「チームシェアプラン」の2種類がある。

またADDressは新規20拠点のオープン予定地を発表。現在の24拠点から年内50拠点への拡大を目指す。

拠点開拓はこれまで、不動産オーナーと会員を共同利用者とした賃貸借契約に基づいて行われているが、新拠点のうち、北鎌倉については土地と古民家をアドレスで購入してリノベーションを行い、自社物件として展開するフラッグシップ拠点となる予定だ。改築などオープンのために必要となる3600万円あまりの資金は、不動産型クラウドファンディング「クラウドリアリティ」を利用した調達を予定する。

アドレス代表取締役社長の佐別当隆志氏は「3年で会員数を1万人、拠点数を2000に増やしたい」と話している。年内にも合計300人の会員受け入れ体制を用意したい、ということだ。元別荘の空き家活用などのほかに、旅館の閑散期の部屋を借りるといった方法も採り、拠点の獲得に努める。

プラットフォーム構想第一弾は「住まい+モビリティ」定額サービス

佐別当氏はADDressの今後の展望について、「脱・全国住み放題サービス」を打ち出している。これは単に住まいを提供するということだけではなく、住む人と地域を結ぶプラットフォーム構想から来るものだという。

佐別当氏は、今後移動しながらその土地その土地で働く人が増える、として「多拠点居住により、地方のあり方は変わる」と語る。「ADDressでは、会員が多拠点だけど頻繁に通い暮らす地域で、観光人口から関係人口として、生産する人として『帰属』することで、地方活性化を実現させたい」(佐別当氏)

佐別当氏はADDressを都市と地方の両方に暮らす人を作り、地方創生ではなく「全国創生」を実現するライフプラットフォームと位置付ける。その第一弾として、アドレスではモビリティパートナー3社との提携により、住まいと移動の定額化を図り、都市と地方の人口の共有、各地の関係人口増を目指す。

JR東日本スタートアップとの協業では、同社の持つネットワーク、交通インフラのほか、不動産や駅などの遊休資産活用も考えられているという。事業連携の具体的なプランは11月以降、順次発表されるという。

ANAホールディングスとは、ADDressの利用料金にプラス月額2〜3万円で、全国の指定路線・便限定で2往復できるサービスの実証実験を、2020年1月から実施する。路線によっては平日昼間は3割が空席ということもある座席を有効活用することで、多拠点生活者が移動しやすいように便宜を図る。

IDOM(旧・ガリバーインターナショナル)は、同社の定額乗り換え放題のカーシェアサービス「NOREL(ノレル)」をADDressの指定物件の駐車場に設置。各物件間と中古車販売のガリバー販売店で乗り捨て可能なサービスを1月から開始する予定だ。

佐別当氏は将来的に「3社とADDressのプランを合わせて、全部で月額10万円ぐらいの定額で提供できるようになれば」と話す。

シリーズAラウンド継続、JR東ほか出資者と事業提携進める

今回の第三者割当増資には、JR東日本スタートアップをはじめ、以下の株主が引受先として参加している。

このうち、地域の起業支援を行うILPとは、全国の地域プロデューサーとの連携や物件調達を、AIAとはADDressの各物件の管理者「家守(やもり)」を育成するオンラインスクール「家守の学校」を共同で開校する。

今回の資金調達はアドレスのシリーズAラウンドに当たる。本ラウンドは継続中で、提携先を含む複数の事業会社やVCなどから追加調達を実施し、2019年中にクローズ予定だということだ。

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TechCrunch Japan

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