大学の入門コースをオンラインで提供、単位も取得できるOutlier.orgが32億円調達、コロナ禍で需要増大

大学の初心者向けコースを比較的手頃な料金でオンラインで提供しているスタートアップOutlier.orgがシリーズBラウンドで3000万ドル(約32億円)を調達したと発表した。

Outlier.orgは、CEOのAaron Rasmussen(アーロン・ラスムセン)氏が創業した。同氏は以前、MasterClassを共同創業している(MasterClassは約2697億円という評価額で新たに資金調達中だとAxiosが報じている)。MasterClassのように、Outlierも美しく撮影されたオンラインコースを提供している。ただ、学生は実際に大学の単位を取ることができるという点がMasterClassと異なる。

Outlierが2019年秋にサービスを開始したとき、ラスムセン氏は大学の教育をより手頃な授業料に、そしてアクセスしやすいものにすることが目標だと述べた。ただ、Outlierは初心者レベルの授業をオンラインに持ってくることにフォーカスしていて、カリキュラム全体ではないとも話している。

このアプローチは、完全に「ノーマル」な大学教育を学生が受けられていないパンデミックでは特に魅力的なようだ。実際、Outlierとの提携を望む大学からかなりの関心が寄せられた、とラスムセン氏は話した。特に、一部の大学は学生を集めるのに苦労しており、今後難しい経済的選択が待ち構えているため、そうした大学は提供するコースを補完するためにOutlierを活用できる。

「多くの大学が、高品質な入門クラスのアイデアを気に入っていることがわかりました」と同氏は話した。「それは我々にとって大きな疑問でしたが、多くの人が『我々は上級レベルのコースにフォーカスしたい。なのでこれは学生が適切な授業を受けられるようにするすばらしい方法だ』と話しています」。

そのためにOutlierは提携の責任者としてAnjuli Gupta(アンジュリ・グプタ)氏を雇った。グプタ氏は以前、Courseraで大学との提携を統括していた。ラスムセン氏はOutlierが大学だけでなく、高校や雇用者とも協業できるかもしれないと示唆した。

もちろん、パンデミックはOutlierにとっていくつかの困難ももたらした。当初、授業を制作し続けるために、同社はインストラクターに「文字どおり、500ポンド(約226kg)の撮影機材」を送っていたとラスムセン氏は話した。そして現在、同社は少人数の撮影クルーがすべてをセットするという制作方法を開発し、インストラクターはそのセットの中で教えている。

「セットの中にいるのはあなた、そして動きが制御される台車、どのボタンを押すかを案内する細切れのテープがあるだけです。(クルーは)遠隔からカメラを動かし、あなたが録画を始めるとクルーはフィードを通じて届くものを目にします。ですのであなたはリモートで指示を受けます」。

Outlierは現在6つのクラスを提供している。ここには微分積分学Ⅰ、ミクロ経済学、天文学、哲学などが含まれ、2022年末までに14クラスに拡大することを目指している。学生は2週間ごとに新しいグループでコースに参加でき、講義が事前に録画されたものでも受講者は同じクラスを取っている学生と一緒にコースを進む、とラスムセン氏は話した。このシステムでは学生が「遅れを取っている」場合にその事実を把握でき、サポートを提供するために学生に連絡を取ることができる。

同社はまたピッツバーグ大学との提携を5年契約に拡大した。学生は、教育内容を監修しているピッツバーグ大学ジョンズタウン校の学部から単位を取得する(ただ、一部の教職員はこの措置について良くは思っていないようだ)。そしてOutlierとピッツバーグ大学は1000人のフロントラインワーカー向けに380万ドル(約4億1000万円)の奨学金を提供することでも提携した。

Outlierの各コースは400ドル(約4万3000円)で、これは従来の大学の授業料の約6分の1だとしている。ラスムセン氏は「私自身は若い頃、授業料を捻出できませんでした」と話した。だからこそ同氏はプログラムをよりリーズナブルな授業料にする方法を模索している。奨学金、そしてKlarnaを活用した月払いプランだ(Outlierが学生の支払いにかかる利子をカバーしている)。

新たな資金調達はGV(以前のGoogle Ventures)がリードし、Unusual Ventures、GSV、Harrison Metal、Gaingelsなどが参加した。Outlierの累計調達額は4600万ドル(約49億円)となった。

「我々は教育へのアクセスと公平さを増やし、学生の借金を減らすというOutlier.orgのミッションに刺激を受けています」とGVのJohn Lyman(ジョン・ライマン)氏は声明で述べた。「アーロン・ラスムセン氏と創業チームのビジョンが、世界中の何億もの学生に、より手頃な授業料の教育へのアクセスを提供すると我々は強く信じています」。

カテゴリー:EdTech
タグ:Outlierオンライン学習資金調達

画像クレジット:Outlier

原文へ

(文:Anthony Ha、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。