女性CEOの失脚には理由がある

4年前に創業したWinnieは少し変わったスタートアップだった。私にとってビジネスの成功以上に重要だったのは、誰もが働きたいと思う文化を作り出すことだった。当時私は新米の母親として、従業員が深夜や週末に働かない会社にしようと心に決めた。従業員がプライベートとバランスを取れる柔軟性があり、母親であることがペナルティではなくボーナスであり、少数派であってもきちんと評価され、昇格の機会が与えられる。こういった取り組みのせいで会社が失敗するなら、それまでだと思っていた。

4年経った今、共同創業者のAnne Halsall(アン・ハルソール)と私が築いた文化に誇りを持っている。結局、従業員を適切に扱い、家族とのプライベートな時間を大切にし、チームを多様化することは、正しいだけでなく競争上の優位性にもなる。

それでも、私は女性でありながら共同創業者兼CEOの役割を引き受けたがために、攻撃の対象になってしまうのではないかと心配している。

アグレッシブ鈍感。怒りっぽい。Thinx、Cleo、Rent the Runway、ThirdLoveなどの著名企業の女性CEOの行動を批判する時に使われた言葉だ。同じく女性が経営するAwayは、12月5日のThe Vergeの記事で集中砲火を浴びた。

はっきりさせておきたいのは、有害な職場文化は決して受け入れられないということ。誰が会社を創業したのか、会社にまん延するストレスがどんなものかに関わらず、従業員に対するひどい扱いは決して許されない。憎むべき行為が明らかになることもある。セクシャルハラスメント、他人の実績について嘘をつくこと、少数派の居場所をなくすこと、従業員を酷使すること。経営者が女性であれ男性であれ、こういった行為はあらゆる企業で公に指摘し、排除する必要がある。Awayの件も例外ではない。

しかし、成長企業の女性創業者兼CEOとして私は尋ねたい。なぜ報道される多くの有害企業が女性によって創業され、経営されているように見えるのか。女性CEOが率いる主要な公開企業の数は5%未満であり、米国に拠点を置く134のユニコーンのうち、共同創業者の肩書きを持つ女性がいるのはわずか14社だ。

女性が経営する企業の数がかなり少ないことを考えれば、女性のCEOが受ける否定的な報道の量は著しく不釣り合いだ。理由はいくつかある。

まず、報道で明らかになる内容の多くは不愉快なものだが、女性リーダーを「ビッチ」と見るステレオタイプのせいでもある。女性CEOが罵り、叫び、怒りやいかがわしさをあらわにするときは、ショックが大きく、男性が同じ行動を取った時よりも記事で誇張されることが多い。女性リーダーには成功するだけでなく、女性らしく好意的であることが求められる。私自身も、暖かく友好的な態度を取らなかったり、あまりにも鈍いことを言ったりして批判された経験は数え切れない。

次に、倫理的な失敗に関しては、女性は「男性よりも厳しく判断される」ことが研究で明らかにされている。ThirdLoveの記事は、「女性による、女性のための会社である」ThirdLoveで、従業員が給与交渉する気を削ぐような企みがあったことにとりわけ失望したと述べている。CleoがカーテンとTaskRabbit(米国の家具設置サービス)を使って土壇場で授乳室を用意した様子を、従業員が創業者の「とんでもない」行動の例として描写した。私は授乳中の母親として、授乳室がきちんと用意されていない状況は好きになれない。男性経営者の会社では例外なく授乳施設がお粗末だ。

女性の創業者とCEOを標的にしたとしても、男女平等の促進には何の役にも立たない。男性よりも厳しい基準にさらされるプレッシャーの下、女性のCEOの数が減少していくのを目の当たりにするだけだ。では、公平かつ正確に物事を把握するために我々一人一人に何ができるのか。

記者は企業に説明責任を求め続けるべきだが、男性経営者の企業の数に応じて記事を書いてほしい。似たような話はそこら中にあふれているが、報じられるのはほんの少しの、際立ってひどい話だけだ。次のTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏やAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏を暴くならもっと迅速にやってほしい。

読者として自分自身の偏見を自覚することにも価値がある。こう自問するのも良い。女性の行為だから腹が立つのか。世間の厳しい目にさらされていない男性は本当にいないのか。成功した女性が一気に追い詰められるのを楽しんでいるのではないか(答えがノーであることを願う)。

私はWinnieで健康的な職場環境を実現し続けたい。私が作りたいのは、従業員がたくましく成長し、私自身も最高水準の行動規範を維持できる会社だ。だが、すでに巷に少ない女性CEOが一人ずつ倒れ続ける中で私にできるのは、私自身の試みが十分なものだと信じることだけだ。

【編集部注】筆者のSara Mauskopf(サラ・マスコフ)氏はデイケアと幼稚園のマーケットプレイスであるWinnieのCEO兼共同創業者。全米の400万人以上の父母らを支援する。Winnieの創業前は、Postmates、Twitter、YouTube、Googleでプロダクト担当の幹部を務めた。

画像クレジット:Roy Scott / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。