デバイス依存からは誰も逃れられない。アップルのCEOであるティム・クック氏でさえ例外ではないのだ。とりわけ、スマホやタブレットを使っている子供たちは、アプリやゲームの誘惑に対する抵抗力が弱い。常にログインし続けて、すぐに返事を返さなければならないという強迫観念を抱いている子も多い。Sesame Workshopと、非営利の児童擁護団体のCommon Senseによる公共広告は、子供によるモバイルデバイスの不健全な使い方に対処することを目指している。夕食のテーブルにデバイスを持ち込む、という典型的な問題に焦点を当てたものだ。
この、#DeviceFreeDinnerキャンペーンが実施されたのは今回が初めてではない。去年までは「気もそぞろなお父さん」としてWill Ferrell氏が登場し、スマホを食卓に持ち込んで家族の会話を無視する様を演じていた。
今年、Common SenseはSesame Workshopと提携して、そのキャラクタを新しい公共広告に登場させている。そう、「セサミストリート」のマペットが、デバイスを片付けて健全なスマホの使い方の手本を示そうというのだ。
スマホは引き出しの中にしまい、タブレットは棚に置き、他のデバイスはハンドバッグに入れる。それから、そう、マペットによってはゴミ箱に投げ込んだり、カボチャの中に隠したりもする。
その後、マペットたちはテーブルを囲んで集まり、楽しそうに会話を始める。しかし、クッキーモンスターだけは、まだスマホでメッセージを打っていた。最後にはみんなの非難を受けて、スマホを食べてしまうことになる。
Common Senseの説明によれば、これによって、メディアのバランスに関する意識を高め、家族が多くの時間を一緒に過ごすことを奨励する。
また現状では、0〜8歳の子供の3分の1が「頻繁に」モバイルデバイスを使用しているという。しかし、デバイスを使うのをやめる時間を作れば、家庭が生活の中心となって栄養状態が改善され、学校での問題も少なくなると、Common Senseは主張する。
その際、電話から手を放して置くだけではだめだという。食卓の上にスマホを置かないようにする必要がある。ある研究によれば、テーブルの上にスマホが乗っているだけでも会話の質が損なわれることが分かっている。
このようにCommon Senseは、子供たちと家族のために多くの情報を提供しているが、それより興味を惹かれるのは、Sesame Workshopがこの新しい公共広告に関わっていることだ。特に、最近の同社とアップルとの関係を考えればなおさらだ。
Sesame Workshopがプロデュースした新しいショーも、間もなく開始されるアップルのストリーミングサービスで放送される。こちらは子供たちにプログラミングの基本を教えるもの。アップルが、自社のプログラミング言語Swiftを、次の世代のプログラマーの手に渡そうという計画の一環だ。
公共広告では子供たちにスマホを片付けようと言っているのと同じ「セサミストリート」のキャラクタが、こちらのショーでは就学前の児童にコーディングの楽しさを売り込もうとするわけだ。
プログラミングに注力したアップルの子供向けのショーと、今回の公共広告が、同じキャラクタを共有しているのは、デバイスを使う子どもたちを取りまく複雑な問題を、みごとに象徴している。親たちは、一方で子供たちにSTEM、つまり理系の科目に強くなってもらいたいと考えている。そのためには、子どもたちは日常的にコンピュータや、その他のデバイスを使って、新しいスキルを学習する必要がある。たとえば、MITが開発したScratchでのコーディングや、Minecraft上での開発などだ。また一方では、子どもたちにデバイスを与えると、あっという間に中毒になってしまうのも目にしている。
親たちにとっての本当の問題は、おそらく、子どもたちにデバイスを与えるべきか否か、ということだろう。つまり、かつて砂糖をたっぷりまぶしたコーンフレークが避けられるようになったのと同様、自分の子供からはデバイスを取り上げるハイテク企業の億万長者やシリコンバレーに住む親たちの真似をすべきかどうか、ということになる。
Sesame Workshopは、この問題について、どちらの側につくのか、態度をはっきりさせるべきではないだろうか。片や、デバイス依存の問題に関する責任を放棄しようとしている億万長者の企業と手を組みながら、もう片方では子供たちのデバイス依存の問題を取り上げる公共広告を放映するという、どっちつかずの態度はいかがなものか。
もしかすると、Sesame Workshop自身も、われわれと同じように、どこに線を引くべきかについて混乱しているのかもしれない。
米国時間の4月23日から、この「セサミストリート」をテーマにした新しい公共広告が、NBC、Fox、Xfinity、Comcast、Charter、Cox、National Geographic、NCM、PBS、Univision、Telemundo、HITN、それからXfinity Latinoといったネットワークとプラットフォームに配信される。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)