小さなカーリングロボットのCurlyがストーンをみごとに投げた

最近はロボットがいろいろなスポーツで活躍しているが、本質的に得意とするのは特定の動作を繰り返すスポーツだ。ある種のスポーツ、例えばカーリングではタスクが限定された動きなのでロボットに非常に適している。韓国とドイツの研究者チームは国際大会に出場できるレベルでストーンを投げるロボットを開発した。

カーリングは氷の上に描かれた的に向かってストーンを投げるゲームだ。やったことないなら残念だが、大変おもしろい。ストーンを滑らせて押し出す動作は簡単に見えるが、適切な戦略を立ててスピード、方向とスピンを微妙にコントロールしなければならない。

ストーンは家庭で使う大型のやかんぐらいの大きさの非常に重い石で、これを氷上に描かれたサークルの中心にできるだけ近い位置に止めなければならない。このとき敵チームのストーンを弾き飛ばしたり、味方のストーンに当てて位置を動かしたりすることがテクニックとなる。ロボットのCurlyはまさにこれができるので驚きだ。

ソウルの高麗大学とドイツのベルリン工科大学(Berlin Institute of Technology)の研究者は「流動的な現実環境に応じて対話的に人工知能を利用するシステム」の実験としてCurlyを開発したという。つまりロボットは常に変化する的の状況を認識し、それに応じて自己の戦略を決定し、高い精度で実行しなければならない。

Curlyは2つのシステムで構成されるロボットだ。一つは的の状況を観察し戦略を決定するスキップの役割だ。もうひとつのシステムが実際にストーンを投げる。今のところ氷をホウキで掃いてストーンの進路を調整するスウィーパーはおらず、「ハード、ハード!」という叫びも聞かれない。しかし将来はスウィーパーロボットも開発されるのだろう。

このロボットのAIはストーンと氷の相互作用を物理的にシミュレーションしたカーリングのコンピューターゲームで訓練された。こうしたシミュレーションの成否はモデル化の正確さにかかっている。Curlyの場合これが極めてうまくいっているようだ。各ラウンドの第一投で氷の状況を確認し、それに応じて以後の戦略が決定される。

 

ロボットの動作は非常に優秀で、韓国の女子カーリングチームのトップや車椅子カーリングの国際試合の代表チームのレベルだ(4戦して3勝している)。スイーパーを含めた場合試合の結果がどう変わるかは興味のあるところだが、現時点では十分な成果とみていいだろう

ロボットの開発チームによれば、人間と試合をして好成績を収めたということよりも、現実のダイナミックな状況を認識し、リアルタイムで適切な戦略を決定できたことが重要なのだという。開発チームがロボットにいちいち新しい状況に応じた動作をプログラムしているわけではない。つまりロボティックスにとっての成果である一方、AIが自ら状況を認識してリプログラミングするという能力を実現できたことが大きい。最近までこのような複雑な状況をAIによって認識、分析することは極めて困難だった。

CurlyのAIその他エンジニアリング上の詳細についてはScience Roboticsに掲載された論文を参照 。

画像:Korea University

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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