就農プラットフォーム「LEAP」、運営元がグリーVや寺田倉庫、三菱UFJから3億円を調達

2016年に200万人を割り込むなど、年々減り続けている国内の就農人口。この事態に歯止めをかけるべく、農林水産省が旗振り役となって青年等就農計画制度や青年就農給付金といった支援制度をつくり、若者の就農人口を増やそうとしている。だが農業を始めるハードルは高く、思うように若者の就農人口は伸びていない。

そんな課題に着目し、解決しようとするサービスがある。それが「LEAP」だ。同サービスを展開するseakは4月3日、グリーベンチャーズ寺田倉庫三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当、日本政策金融公庫農林水産事業の「青年等就農資金」を活用し、総額約3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社は2016年9月1日に寺田倉庫、三菱UFJキャピタル、個人投資家らを引受先とした総額6000万円の資金調達を実施。今回が2度目の資金調達となる。今回調達した資金は、LEAPの栽培検証のさらなる体制拡充と、フランチャイズモデルを開始する為のシステムを含めたプラットフォームの機能改善・拡充に充てる予定だという。

新規就農者に生じる課題をワンストップで解決する

LEAPは農地の確保から販路の開拓に至るまで、農業に必要な機能を全て提供する垂直統合型の農業プラットフォーム。通常、就農を希望する人はまず最初に各自治体で2年間ほどの農業研修を受けなければならず、研修後も耕作放棄地しか紹介してもらえなかったり、施設や機材を購入するのに融資が下りなかったりと、クリアすべき課題が非常に多かった。

そんな課題をLEAPはワンストップで解決してくれる。例えば研修に関しては、運営元であるseak代表取締役の栗田紘氏が研修済み農家として神奈川県藤沢市の自治体に登録されており、この傘下で就農するLEAPでは研修を受ける必要がない。また、LEAPで押さえている農地を借りることができるほか、seakを担保にして施設や機材を融資してもらえる。ただし、ホームページを見る限り、栽培できる野菜は現在トマトとキュウリに限られているようだ。

昨今、クラウドやIoTを活用した「農業×IT」のサービスが主流となっているが、なぜ栗田氏はLEAPを立ち上げることにしたのだろうか? 栗田氏はこう語る。

「自分も最初は農業×ITのサービスを考えていました。ただ、クラウドやIoTを活用したサービスで効率化できるのは農業のほんの一部分。このままでは農業を始めるハードルは下がらないし、若い人は絶対にやりたいと思わない。だからこそ、農業を始めるにあたって生じる課題をワンストップで解決できるサービスを提供すれば、若い人の就農人口も増えると思ったんです」(栗田氏)

LEAPは2016年9月1日に一般公開。栗田氏によれば、この半年間で12人が新規就農者となり、野菜の出荷に至っているという。

美味しい野菜の栽培を、より簡単に

また、seakは今回の資金調達の発表に併せて、LEAPの機能の拡張も発表している。神奈川県藤沢市から法人としては初の認定新規就農者の認定を取得したほか、独自のビニールハウス供給体制を確立したことで、既存より43%安い価格(seakの調査結果)にて施設一式を提供してもらえる。

農業を始めるハードルを低くしても、良い野菜を栽培できなければ、途中で離脱していってしまうだろう。だからこそ、LEAPは準備の段階だけでなく、栽培から販売までのステップも徹底的にサポートする。

調達に伴い新たに最高開発責任者(CDO)が就任し栽培検証体制の強化を図るほか、農作業のやり方を予習・復習できるオンラインコンテンツを提供するほか、何か異変があった際に写真と一緒にLEAP栽培管理本部に相談できるチャットツール、リアルタイムにデータを取得出来るセンサーなどを実装した栽培管理システムを構築。栗田氏は「経験や勘に頼ることなく、誰もが一定の基準の野菜を作れるようになっている」と語る。

生産された野菜は「ゆる野菜」という独自ブランドのもと、百貨店地下にある都心の高級スーパーで販売。都心の高級スーパーへの販路を開拓することで農家は薄利多売にならずに済む。また、朝収穫した農産物を昼に店舗に直接出荷する配送の仕組みも構築されているので、消費者は新鮮で美味しい野菜を手にすることができる。

2018年度中にフランチャイズモデルを展開する予定

現在、神奈川県藤沢市に限定して展開されているLEAPだが、今後は2018年度中を目処にフランチャイズモデルの展開にも着手する。

「この半年間運営してみて、想像以上に全国から問い合わせをいただきました。就農人口をさらに増やしていけるよう、全国、アジアを視野に入れてフランチャイズモデルを展開していこうと思います」(栗田氏)

具体的には農地斡旋、資金融資、栽培、販売といった各ステップに手数料を設定することで、利益が得られる仕組みにしていく予定だそうだ。また栗田氏によれば、フランチャイズモデルの展開と同時期に、第一勧業信用組合と提携して開発した、農業を始める際の初期費用を工面するLEAP独自のローンメニュー「LEAPスタートローン T」の提供も予定しているという。

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TechCrunch Japan

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