山火事の消火活動を機械学習と過去データを駆使して効果的なものにするCornea

ありがたいことに、まだ山火事シーズンではない。米国西部の火事を予防したり対処したりするという、年々複雑にそして対応しにくいものになっているタスクにどう立ち向かうか、消防士や救急隊員が計画を立てる小休止の時間となっている。米国西部の山火事は近年、カリフォルニアなどの州にとって喫緊の課題だ。ほとんどが気候変動による高温、火花発生につながる朽ちつつある送電インフラ、木が生い茂る危険な地域や大火災につながる群葉によるものだ。

過酷な消防活動が何年も展開され、いくつかのスタートアップは消防をいかに改善できるかを模索している。そうしたスタートアップの1つがCornea(コーニー)だ。公共部門にフォーカスしているベンチャースタジオHangar(ハンガー)の一種のスピンアップだ。Hangarは2020年、政府をターゲットとした新しいスタートアップを立ち上げるために1500万ドル(約16億円)を調達した

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Hangarにとって最初の企業の1つが数年前に登場したCorneaで、ポテンシャルという点で最も興味深い1社であり続けている。どこで消火活動を積極的に行い、炎が燃え盛る状況でいつ退却すべきか誘導して最前線の消防士たちをサポートできる機械学習に、地理、天候、歴史上重要な火事のデータを融合させるのがCorneaが取り組んでいることだ。

Corneaは2021年2つの主要プロダクトを立ち上げようとしている。1つは、消防士たちの間で「Suppression Difficulty Index(鎮圧困難インデックス)」として知られるものに関するより良い状況認識の提供にフォーカスしている。これらは本質的に、かなり特定の地理的ロケーションで消火の危険を消防士に伝える重要な地図だ。例えば特定のロケーションでは、風や水の状況が火を勢いづかせたり注意しなければ隊員を危険な目に合わせるかもしれない。

もう1つのプロダクトは「Potential Control Lines(潜在的制御ライン)」にフォーカスしている。これは防火帯やその他の活動が火を押し戻すかもしれないロケーションのことだ。植生、無数のその他データを使うことで、Corneaは消火活動でかなり成功を収められそうな場所を特定できる。

Corneaの消防責任者はTom Harbour(トム・ハーバー)氏で、同氏は以前、米森林局で火災対応責任者を10年務めた。「50年前、私は『なぜ』という言葉を知らないカルチャーの中で育ちました。現場での消防の決定では、ただ命令に従っていました」と同氏は話した。「頭の中で言葉が回っていました」。Corneaと同社が手がけているプロダクトで、我々は「『なぜ』を元に、目にしている情報を消防士が感じ取れるようにし始めました」。

ハーバー氏は、今日現場で最も一般的なツールは紙の地図とマーカーだと話す。というのも、単に「何も壊したりできないときに壊れないと知っているから」だ。Corneaのプロダクトは活動中の消防士をサポートするかもしれないが、どこに消火活動のリソースを向けるべきか戦略的決定を下す消防作戦センターにより大きな影響を及ぼす。

Hangarの創業者でマネジングパートナーのJosh Mendelsohn(ジョッシュ・メンデルゾーン)氏は、CorneaがHangarの投資テーマの中心にあると話す。「Corneaはこれらの大きなデータセットに取り組んで効果的に処理し、(消防士に)可能な限りシンプルに多くの分析的影響を与えることにフォーカスしています」と述べ「このマーケットでは最も良いユーザーエクスペリエンスはPDFであることも明らかになっています」と指摘した。

実際、このマーケットにおける大きな課題はエンタープライズのSaaSなどと比べて災害対応の他に類を見ないダイナミックさだ。「Corneaは顧客と話し、必要とされるかどうかを検証を行うプロセスを経なければなりませんでした」とメンデルゾーン氏は話した。「すべて必要だと感じますが、すぐさま影響を及ぼすために行動の変化を最小限にする正しいこととは何でしょうか」。消火に関して特に問題なのは、火災現場からチームへのフィードバックループだ。「火災は季節性であり、我々は漸進的に改善しなければなりませんでした」と同氏は述べた。

Corneaのチームは現在、3人のフルタイムとコンサルタントがいる。Hangarが同社のスタッフでCorneaのチームを支えている。Corneaは消火のサイエンスを深めるために連邦研究助成金を部分的に使っているプロダクトを構築した。そして2021年、このモデルを現場に持ってくるために森林局や州消防当局と協業することを願っている。「人間の対応能力には限界があります。そうしたモデルを効果的に使うことで消防士がさらに活動するのをサポートするために、限られたリソースをどのように使うのでしょうか」とメンデルゾーン氏は述べた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Cornea自然災害機械学習

画像クレジット:David McNew / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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