山火事発生時に避難情報を伝える双方向緊急プラットフォームをPerimeterが開発

窓の外では火が燃え盛っていて、それがどんどん近づいてくる。混乱している。恐怖。クルマに逃げ込む。道路が当局によって突然閉鎖される。渋滞に巻き込まれる。炎が止まったかと思うと、突然、炎が方向を変えて飛び出してくる。普段の日常生活の中では、誰もがこれからやることの予定を立てている。しかし、誰かが避難のために家を出た瞬間、その「やること」は破棄されてしまう。

だが、いざというときこそ、何をすべきか、どこに行くべきか、正確に把握しておくことは、誰にとっても必要だ。とはいえ、残念ながら、そのような情報が必要な形で得られることはほとんどない。

カリフォルニア州のサンフランシスコ北部に住むBailey Farren(ベイリー・ファーレン)氏の家族は、このような事態をもう4回も経験している。気候変動による乾燥化で山火事がかつてないほど多発しているにもかかわらず、避難は相変わらず大混乱になる。カリフォルニア大学バークリー校の学生だった彼女は、何が起きていたのか、なぜ家族が安全かつ迅速に避難するために必要な情報が常に不足していたのかを調べ始めた。「第一応答者は、必要な情報をすべて持っていると思っていました」と、彼女はいう。

しかし、そうではなかった。最前線で活動する消防士には、正確な情報をオペレーションセンターに伝え、市民に避難方法を指示するためのテクノロジーを持ち合わせていないことが多い。市民には最新の情報を常に伝えなければならないが、その手段を関係当局は簡単なテキストメッセージに頼っていることが多く、例えば、郡全体の人々に避難するように伝えるだけで、それ以上の情報はほとんど伝えられない。

2018年にカリフォルニア州で発生した史上最悪の火災「Camp Fire(キャンプ・ファイア)」をきっかけに、ファーレン氏は公安担当者へのインタビューに留まらず、さらに解決策の構築を目指すようになった。2019年春に大学を卒業すると同時に、彼女は同じバークリー校の卒業生であるNoah Wu(ノア・ウー)氏と、Perimeter(ペリメーター)を設立した。

Perimeterは、ファーレン氏の言葉によれば、地理空間データを中心にした双方向のコミュニケーションを提供することで「機関と市民の間のギャップを埋める」ために設計された緊急対応プラットフォームだ。

同社は米国時間4月12日、プレシードラウンドで100万ドル(約1億900万円)の資金を調達したと発表した。この投資ラウンドはParade Ventures(パレード・ベンチャーズ)のShawn Merani(ショーン・メラニ)氏と、Dustin Dolginow(ダスティン・ドルジノウ)氏が主導し、SIO(ソーシャル・インパクト・オーガニゼーション)のOne World(ワンワールド)と、Alchemist Accelerator(アルケミスト・アクセレレーター)が参加。Alchemistはこのスタートアップの最初の資金提供者だった。

Perimeterの共同創業者でCEOのベイリー・ファーレン氏(画像クレジット:Benjamin Farren via Perimeter)

市民はPerimeterを利用して、新たに発生した火災や、倒れて道路を塞いでいる木など、地理的にタグづけされた情報をアップロードすることができる。「消防隊員が到着する前に、市民が最も正確でリアルタイムな情報を持っていることがあります。それを【略】政府の役人と共有してもらいたいのです」と、ファーレン氏は語る。しかし、その情報はすぐには一般には広まらない。まずは第一応答者が情報を調査し、市民が常に正確な情報をもとに行動を起こせるようにする。「ソーシャルメディアのようにはしたくないのです」と、彼女は説明する。

その一方で、オペレーションセンターはPerimeterを使って、市民に正確で詳細な避難地図と避難経路を送ることが可能だ。単なるテキストメッセージとは異なり、PerimeterはメッセージとURLの両方を送信し、地図や災害の進行状況に関するリアルタイム情報を表示できる。

現時点では、このプラットフォームはウェブアプリとして配布されており、災害時に備えて市民が事前にインストールしておく必要はない。ファーレン氏によれば、同社はネイティブアプリにも取り組んでおり、特に被災地では携帯電話の電波が断続的になることが多いため、堅牢なオフライン機能を必要とする救急隊員のために開発を進めているという。

ファーレン氏と彼女のチームは、緊急管理機関に広くインタビューを行っており、最初の顧客はパロアルトのOffice of Emergency Services(緊急管理局)だった。「研究開発に重点を置き、機関と手を取り合って構築しました。過去2度の火災が多い時期には、技術のベータテストを行いました」と、ファーレン氏は述べている。

現在、Perimeterには4人のフルタイム従業員がいる。リモートで仕事をしているが、全員がカリフォルニア在住だ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Perimeter火災資金調達Alchemist Acceleratorカリフォルニア

画像クレジット:Patrick T. Fallon/Bloomberg / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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