あまり驚きではないニュースだろうが、それでも多くの人に注意を促すものだろう。モバイル端末を頻繁に使用する2〜5才の幼児は発達スクリーニングテストの点数がよくないことが研究で明らかになった。その根拠は明白だ。子どもがスクリーンを前にしているとき、基本的なスキルが身に付くはずの話す、歩く、遊ぶということをしないからだ。
幼少時のモバイル端末使用の賛否についてはかなりの議論が展開されていて、微妙なテーマではある。これはまた、子育てにも通じる話だ。多くの人にかかわることであり、根拠のない話が広まっている。しかし今回のような研究に基づいて考えるべきだろう(もちろん、研究結果についても分析しなければならない)。
今回の研究は、カルガリー大学の心理学者が成長期にある子どものスクリーンタイムが基礎的なスキルにどう影響するか、2才、3才、5才時点にフォーカスして調べた。そしてその論文を専門誌JAMAに今日発表した。研究では、親など子どもの面倒をみる人が子どもの平均的なスクリーンタイムを報告し、運動能力やコミュニケーション能力についての一般的な質問に答えた。
結果にはかなり明白な相関関係が示された。
2才でスクリーンタイムが多かった子どもは3才時点での発達スクリーニングテストの成績は芳しくなく、3才でスクリーンタイムが多かった子どもは5才時点での発達スクリーニングテストの点数が低かった。
重要なのは、影響は双方向的のものではなく、多義のものでもなかったことだ。つまり、スクリーンタイムが多い子どもは通常においてスコアが低いが、スコアが低い子どもが必ずしもスクリーンタイムが多いとは限らない。これは、スクリーンタイムがテストの点数を下げるという仮説を支えるものとなる。
正確なメカニズムは現データでは分析できないが、筆頭著者のSheri Madiganはまったく謎ではないと考えている。
「子どもの体の発達、そして認知の発達を促すようなポジティブな刺激の多くは、面倒をみる人とのやりとりから得られる」とMadiganはカルガリー大学のニュースリリースで述べている。「子どもが端末を使っていると、こうした重要な親と子どものやりとりが起こらない」。
しかもそれだけではない。論文ではより詳細に説明されている。
幼い子どもがスクリーンをみるとき、子どもは対人関係や運動、コミュニケーションのスキルを訓練して習得する重要な機会を逸してしまう。たとえば、子どもたちがインターラクティブな、あるいは肉体的な要素を伴わずにスクリーンをみていると、子どもたちは座りがちになり、ゆえに歩いたり走ったりという運動能力が鍛えられない。これが運動能力の発達の遅れにつながる。端末の使用はまた、理想的な成長や発達に不可欠の言語的・非言語的な社交の機会を制限することで面倒をみる人とのやりとりを妨げる。
これに対する反論を見つけるのは難しい。スクリーンタイムは単に悪いというものではない。そして多くの人が、端末はどこにでもあり避けられないものだと指摘してきた。そこで問題は「使わせるべきか、使わせないべきか」ではなく「どれくらい使わせるか」になる。
スクリーンタイムの質の善悪の区別、そして有益かどうかの区別については議論があるが(研究では区別されなかった)、より洗練された方法で端末を使用できる年のいった子どもについては、そうした区別は適用できる。幼い子どもについては、基本的なスキルを発達させるようなアクティビティに多くの時間を費やした方がいい、ということを否定するのは難しい。
参考までに、研究対象となった子どものスクリーンタイムは1日あたり平均2〜3時間だった。しかし、どれくらいの時間だったら大丈夫か、あるいは有害かを示すものはなかった、というのは記すに値するだろう。「残念ながら我々が行なった統計分析ではその“境目”を引き出すことはできない」とMadiganは私に送ってきた電子メールで述べた。「我々の今後の研究で重要なポイントとなるだろう」。
だから、子どもの目にふれることがないよう端末を全て隠し、あなたが食事を終えるまでなんとかもう30分子ども番組のDoraでごまかせるかどうかを心配しなければならないようだ。この裏の意味は、スクリーンタイムが本質的に悪いものであるということではなく、発達期には不可欠な“質の高い大人と子どものやりとり”を端末に置き換えるのはリスクを伴うということだ。それゆえに、解決策というのは、必ずしもスクリーンタイムを抑制するということではなく、より多くの良い時間を子どもと過ごす、ということになる。
親にアドバイスをおくる、というのはテックブログの範囲外のことではある。しかし姪や甥を持つ叔父として、そして人間として、端末ベースのコンテンツを通常の遊びに統合する素晴らしい方法があると言って差し支えないと私は考えている。実際、多くの企業がこの可能性を追求している。
もしMinecraftで兄弟と協力している子どもであれば、ゲームをすることはコミュニケーションにマイナスの影響を与えてはいない。そうではないだろうか。もしくは、コミュニケーションや新たなチャレンジを促すようなポジティブな方法で番組を観るとしたらどうだろう。親はどれが良いのか知っているはずだ。しかしまずは注意を払うことが大事だ。そして、研究で提案されているような良い結果をもたらす端末の使用方法にすることが、端末を子どもに使用させるもう一つの理由となる。
私はこの研究について研究者にいくつか質問をしていて、返事があれば記事をアップデートする。
イメージクレジット: Aping Vision / STS
(原文へ 翻訳:Mizoguchi)