建設業や飲食業などデスクレスワーカー向け求人サービスのWorkstreamが約10.7億円調達

デスクレスワーカー(教育、建設、接客などデスクワークではない労働者)は世界の労働力の80%を占めているが、Desmond Lim(デズモンド・リム)氏にとってその労働者は世界のすべてだ。

リム氏はシンガポールで育った。父は週6日、毎朝5時に起きて運転手の仕事に向かった。清掃員として働いていた母とリム氏は、時々父の車に乗ることがあった。リム氏は、時間給労働者やデスクレスワーカーが仕事をすばやく見つける簡単な方法が必要だと考えた。

リム氏はWorkstreamの創業者だ。Workstreamは、中小企業が空きポジションを埋めたいときに使えるエンドツーエンドのソフトウェアソリューションとなる。同社は米国時間5月7日に、シリーズAラウンドで1000万ドル(約10億7000万円)を調達したことを発表した。これまでの調達総額は1250万ドル(約13億3000万円)となった。

ベイエリアに拠点を置く同社の主な顧客は、ホスピタリティ、レストラン、スーパーマーケット、デリバリービジネスなど、売上高が大きい業界における採用担当マネージャーだ。

Workstreamは、通常数週間にわたって行われるプロセスの多くを自動化する。同社のテクノロジーにより、企業は採用にかかる時間を70%節約できるという。また、透明性も加わる。求職者が会社に足を踏み入れ、応募用紙に記入し、良い結果を期待するといったプロセスに代わり、求職者と雇用者の会話を促進するプラットフォームを提供する。

Workstreamのプロダクトには2つの部分がある。まず求職者は、プラットフォームで仕事の検索から仕事を確保した後の入社手続きまで行うことができる。しっかりした仕事を探せるこの無料のワンストップショップは、かつてリム氏の父親がシンガポールで直面した課題に取り組んでいる。求職者のダッシュボードには面接日程を常に把握できるリマインダーもある。

もう1つの部分は採用側に関するものだ。従業員の退職率が高い企業は、突然辞めてしまうことのないような信頼できる人材を見つけるのに苦労している。採用側はWorkstreamにつなぎ、ワンクリックで最大24の地域の求人掲示板に投稿できる。また、リアルタイムメッセージング、テレビ会議、面接のタイミングや事務処理などに関するテキストメッセージによるリマインダーを通じて、採用側が求職者と直接やり取りできる。

Workstreamの重要な特徴は、電子メールではなくテキストメッセージによる求職者とのコミュニケーションに重点を置いていることだ。デスクレスワーカーは電子メールアドレスを持っていないことが多く、また率直にいって時間もないため、労働市場で最も「つながりにくい」グループだといえる。外出先で長い時間を過ごす人に対しては、ローテクかつ包括的な方法でリアルタイムに更新情報を届ける必要がある。デジタルデバイドは現実のものだ。Workstreamはモバイルベースのテキストメッセージに重点を置いているため、その日に従業員を雇うことができる。

例えば応募者は求人に応募するたびに、採用側から追加情報が記載されたテキストメッセージを受け取る。テキストには、企業文化についての説明や選択式の質問などが含まれている。忙しく、時には掛け持ちをしている労働者を念頭に置いた質問となっている。質問の重点項目は、職場からの距離や信頼性の高い交通手段へのアクセスなどだ。

同社は採用する会社に対し、選択した機能と年間の雇用数に基づいて料金を請求する。

Workstreamは競争の激しい求人プラットフォームのマーケットに参入しようとしている。成功するとすれば小規模事業者に特化している点が勝因かもしれない。シリコンバレーから生まれるLever(レバー)やX(エックス)などの多くの求人プラットフォームは知的労働者向けに構築されていると同社は述べる。対照的にWorkstreamは小規模事業者に狭く深く焦点を合わせている。父親のバンで何時間も過ごしたリム氏の幼少時の経験からの答えだ。

新型コロナウイルス(COVID-19)に伴う外出禁止命令のため、小規模事業者は以前に比べて顧客対応が減っており時間に余裕がある。そのため新しいソフトウェア、非接触型の採用活動、ビデオメッセージングなどを試すことに対して、よりオープンになっているとリム氏は言う。このスタートアップは現在、Jamba Juice(ジャンバ・ジュース)やDunkin’ Donuts(ダンキンドーナツ)などのフランチャイズビジネスを含む5000社の採用担当マネージャーを顧客に持つ。同社には医療業界や製造業からの引き合いもある。

「ビデオ会議のやり方がわからないという人は非常に少なくなっている」とリム氏は語る。「採用側はシステムを考え直している」。

こうした要因が同社を助け、投資家らを引き付け、パンデミックによって遅延することなく資金調達ラウンドを完了した。

今回のラウンドはFounders FundとBasis Set Venturesがリードした。その他の投資家として、AffirmのCEOであるMax Levchin(マックス・レブチン)氏、DoorDashのCEOであるTony Xu(トニー・スー)氏、LatticeのCEOであるJack Altman(ジャック・アルトマン)氏、LucidchartのCEOであるKarl Sun(カリ・サン)氏などが参加した。Slack、Brex、Airbnb、Instacart、Pinterestなどの企業のリーダーらからも資金を集めた。

ラウンドを積み重ねていけば浮き沈みがあるものだが、オールスターな企業陣の参加は、既存のシリコンバレーネットワーク出身ではないリム氏のような創業者にとって、役立つ実績となる。

同社は今回の新たな資金調達ラウンドでバリュエーション、売上高、収益性を明らかにしなかったが、同社によると投資家は同社に対してもっと資金を投入して成長に再投資するよう促しているという。

このアドバイスは、市場が混乱してランウェイの延長を求める声が増える中、投資家から最近耳にすることとはまったく対照的だ。おそらくそれは、市場が最悪の状況であってもWorkstreamの事業には自身に賭ける余裕があることを意味している。

画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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