成長第一、広告は二の次:Facebook戦略はInstagramにも

山火事のように燃え広がっている時に、はした金のために水を注すことはない。Facebookは広告を我慢することでウェブとモバイルアプリの成長を促し、同じ戦略をInstagramにも使おうとしている。ウォール街は写真アプリ買収に費した7億ドル超を取り戻すよう、Facebookにわめきかけているが、Mark Zuckerbergは今日の10セントのために明日の1ドルを捨てるつもりはない。

Facebookが広告に真剣に取り組むまでには何年も要した。成長とユーザー体験を何よりも重視したからだ。Facebook初の広告は「フライヤー」と呼ばれるキャンパス内イベントの宣伝だった。それはソーシャルネットワークの価値を損うことなくうまく適合した。Facebookがより伝統的な広告主に対して販売を開始した時、広告ユニットは小さく、本来のコンテンツが前面中央を占めるようサイドバーに追いやられていた。他で見られる派手なバナーやポップアップと比べると、Facebookは保護区のように見えた。この戦略は奏功し、またたく間に何億人ものユーザーを集めた。

Facebookは2008年7月にiPhoneアプリを公開した。3年間、一切広告はなかった。世界がモバイルへと移行し始めた時、Facebookはこれを欲得ではなく心から歓迎したいと考えた。2010年から2011年にかけて、Facebookのスマートフォンアプリは驚異的なペースで成長し、モバイルの一番人気となった。最も勢いのある時に広告で邪魔していたらモバイルの成長は止まっていたかもしれない。

2011年末までに、FacebookアプリはiOS、Android版合わせて5700万人以上の日間アクティブユーザーを持ち、月間アクティブはその2倍近かった。友達にFacebookアプリをダウンロードさせることに罪の意識はなかった。HTML5に頼ったたために最速とは言えなかったが、広告主から金を引き出すために限られた画面領域を浪費することはなかった。

2012年初期、ついにFacebookはモバイルおよびデスクトップのニュースフィードに広告を表示すると発表した。その頃までに先進国の多くの人々はすでに、Facebookのウェブとスマートフォンアプリを使っていた。最重要市場である米国、英国、カナダの成長は滴り程度までに鈍化していた。成長は主としてFacebookの多機能電話アプリを利用している発展途上国によるものだった。

ウェブやiOS、Androidのフィードに広告を出し始めた時、Facebookにとって失うものはごくわずかだった。Facebookアプリがバイラルに広がり多くのユーザーを増やすことは、第一世界でもはや必要なかった。必要なのは人々が〈離れる〉のを防ぐことだけだった。広告はFacebookが人々の反応を確かめられるよう、ゆっくりと表れはじめ、わずかな広告のためにフィードを見なくなる人の数がさほどでもないとわかると加速された。

戦略は成功した。Facebookがもっと早く収益化を始めていれば預金がさらに数十億ドル増えていたのは確かだ。しかし、収益のために大量のユーザーと好意的な評価を犠牲にしていたかもしれない。とは言うものの、Facebookが先週の収支会見でこの写真アプリに広告を載せる計画はないと語ったのは少々驚かされた。需要がないからではない、とZuckerbergは言った。

「Instagramは実に良くやっていて成長も実に早く、それがこのアプリにとって正しい方向だと私は考えている。そして今はこの巨大なコミュニティーを作り上げる絶好の機会であり、100%そこに集中すべきだ。ビジネスチャンスに関しても私は極めて楽観的だ。Facebookで広告を出している多くの企業が、Instagramにコンテンツを載せて高いエンゲージメント率を得ている。だからもっとこれを拡大したいと言う話も来ているし、それはわれわれが考えていることでもある。しかし今は ― 私としては彼らがここまで急成長していることを誇りに思うだけだ。成長は益々早く、1億人達成はFacebookよりも早かった」

おそらくFacebookがInstagramに成長のために十分な時間を与え、成功する広告体験を見つけた時、彼らがこの買収を収益化するのを見ることになるだろう。やり方にはいくらでも選択肢がある。

Instagramはブランド広告の美しい写真をフィードに流すことができるだろうが、ユーザーにクリックさせてブラウザーに飛ばすことは避けるかもしれない。だから私は、Instagramは企業がフォロワーを増やすための広告から始め、ユーザーをアプリに滞留させようとするだろうと思う。

企業は自分たちが投稿した写真を、まだフォローしていないユーザーにも見せるために、料金を払うかもしれない。こうしたフォロー広告のソーシャル版では、ブランドをフォローしている人の友達やフォロワーをターゲットすることも考えられる。あるいは、Instagramの新しい写真タグ付け機能を使って、ブランドがユーザーの写真のリーチを増やせるようにすることも考えられる。例えば私が自分の靴の写真にNikeをタグ付けしたら、Nikeはフォロワーを増やすために料金を払って、この写真を友達のフィードのトップに表示させたり、投稿した一週間後に再び表示させたりするかもしれない。

またInstagramは、Twitterのプロモーテッドアカウントのように、特定ブランドのフォローを薦める推奨アカウントを試すこともできる。テベロッパーが料金を払ってフィードにアプリを表示してダウンロードさせるアプリインストール広告は、Facebookの新たな寵児となったが、Instagramでも同じことができるかもしれない。

FacebookとInstagramがこの「成長>広告」戦略をとれるのは、長期的に考えているからだ。Googleが月ロケットを打ち上げようというほどの長期ではないが、Facebookは少なくともしばらくの間、この分野を支配し続けることを確信している。巨大なユーザーベースとネットワーク効果が、幸運にも彼らに若干の余裕をもたらしている。しかし、ギャンブルであることに変わりはない。Instagramが広告を始める頃までに何か新しいメディアがユーザーの注目をさらっていくリスクは常にある。それは綱渡りのようではあるが、健全なコミュニティーと上質な体験、そして維持可能なビジネスモデルへと通じる道だ。

[画像提供:Metrowest, MacStories

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(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

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