数億ドル(数百億円)のミッションを抱えているのに、なぜ90年代に作られたソフトウェアを使ってそれを設計し、打ち上げているのだろうか?それは多くの新規宇宙企業が問うている問題であり、Epsilon3(エプシロンスリー)は、こうした企業のオペレーションを、スプレッドシートやWord文書から現代的で協調的な作業プラットフォームへと導く手助けをしようとしている。
TechCrunchは2021年、Epsilon3がデビューしたときに記事にしていた。それ以来同社は、打ち上げオペレーション用のOSをプロトタイプからプロダクトへと移行し、顧客と契約することに熱心に取り組んできており、現在ではその数は数十社になっている。そしてこのたび、プレシードで280万ドル(約3億2000万円)を調達した。
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「2021年は、初期の顧客にMVP(実用最小限の製品)を提供することに尽力していました」とEpsilon3の共同創業者でCEOのLaura Crabtree(ローラ・クラブツリー)氏は語っている。「新規のプラットフォームに乗り出すことをためらう人もいましたが、新しいやり方に適応しようとする意欲が感じられたことは、うれしい驚きでした」。
同社はまた、Y Combinator(Yコンビネーター)の2021年夏のコホートの一環として、自らの適応プロセスにも時間を費やした。
「私は航空宇宙の出身ですので、顧客のことは理解しています」と、SpaceX(スペースX)とNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)で働いた経験を有するクラブツリー氏は語る。「ビジネスの構築とその運営方法について学ぶために、YCに参加しました。自社が構築したいと考えるものから顧客が必要とするものへと移行し、構築すべきことの優先順位を設定するプロセスを開始することにおいて、YCの支援は大変有益なものでした」。
Epsilon3のプラットフォームは元来、打ち上げや衛星の継続的なオペレーションを行うための近代的手段として意図されていたが、それ以上の用途があることが、初期の顧客からも示されていた。
「このソフトウェアがさまざまな業界で幅広いユースケースを生み出していることに驚いています」と同社のCOOであるMax Mednik(マックス・メドニック)氏はいう。「実際に多くの顧客が、新しいハードウェアや統合、テスト手順のために当社のソフトウェアを使用しています。こうした企業は、チームが成長し、野心的な目標を達成しようとしているときに、WordやConfluence、Wikipediaを使ってもうまくいかないと感じているのです」。
「【略】のように、情報へのリンクが付いた巨大なスプレッドシートや、すべてのファイルが保存された共有ドライブ上の巨大なフォルダでなんとかやっていくことはできますし、当社が支援している一部の企業もそのようにしています。しかし、間違いを犯しやすいのです」と同氏は続けた。「何かをテストする際にデータを書き出したり、過去のすべての実行にアクセスしたり、監査履歴を保持したりすることが頻繁にあるような状況では、他のツールはうまく機能しません。同じデータのコピーを何百万も保持することになります。何らかの問題が発生した場合、膨大な時間を失う可能性があります」。
Epsilon3は、テスト中にデータを追跡して記録するライブテレメトリ用のAPIを有しており、等しく堅牢でありながら脆弱さが少ないテスト方法を実現している。また、多重オペレーターのサインオフなどの機能も備えており、これは複数の人がデータポイントやフローをチェックして検証する必要がある航空宇宙や防衛産業では必須の要件といえよう。
他のサービスやプラットフォームを統合することも、ユーザーフレンドリーであるためには重要である。全体として、宇宙関連事業の開発用ソフトウェアプラットフォームであるFirst Resonance(ファースト・レゾナンス)に似ているように聞こえるかもしれない。これらの企業は、軌道上に乗る資産の構築と打ち上げという、長く複雑なプロセスの異なる部分にそれぞれ適合しているため、競争相手ではなく仲間であることは理に適っている。
「私たちは(First Resonanceと)データのやり取りについてすでに話をしています」とクラブツリー氏。「彼らは設計とハードウェア部分に、私たちはその後のテストとオペレーションに関わっていますので、ユーザーにそのループバックを提供できればと思っています。他のツールからのデータ統合に向けた足がかりを築きたいと考えており、そこに生まれる大きな付加価値を見据えています」。
「多くの人がより充実した自動化サポート、そしてJiraのようなツールやインフラ、メトリクス、分析用の統合を求めています。当社のAPIの隣にネイティブ統合を構築することで、相互運用が可能になります」とメドニック氏は付け加えた。
同社にはまだやるべきことが数多くあるが、顧客はすでに手に入れているものに喜んでお金を支払っているようである。メドニック氏によると、同社は2021年からARR(年間経常収益)を50倍に拡大し、顧客数も3倍以上になったという。その中にはFirefly(ファイアフライ)、Astrobotic(アストロボティック)、OrbitFab(オービットファブ)、Venus(ヴィーナス)、Gilmour Space(ギルモア・スペース)、Stoke Space(ストーク・スペース)、その他まだ公表されていない企業も含まれている。
「インフラサイドでは多くのレベルアップがなされました」と同氏は振り返る。「これほど大勢の人たちとテストしたことがあるだろうか、という感じでした。そう、私たちはベストを尽くしました。順調にいったと思います」。
「それ以上のものでしたよ、マックス。成功裏に進んだと思います」とクラブツリー氏は応じた。
「本当に、すばらしい成果が得られました」。
今回の資金調達の焦点は、プロダクトとチームの拡張を継続することに置かれている。同社は当初の3人の創業者チーム(Aaron Sullivan[アーロン・サリバン]氏が共同創業者兼チーフエンジニア)から計21人に成長した。まだ規模は小さいが、このようなスタートアップにとっては「ガレージ」段階をはるかに超えている。
280万ドルのシードラウンドには、プレシード投資家のStage Venture Partners(ステージ・ベンチャー・パートナーズ)とMaC Venture Capital(マック・ベンチャー・キャピタル)の他に、新たな投資家としてLux Capital(ラックス・キャピタル)、Village Global(ヴィレッジ・グローバル)、Y Combinator、Pioneer Fund(パイオニア・ファンド)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)、Broom Ventures(ブルーム・ベンチャーズ)が参加した。
画像クレジット:Epsilon3
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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)