“打率”5%も当たり前―、9割のVCに断わられる前提で資金調達を効率的にクローズするには?

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【編集部注】執筆者のNathan Beckordは、VCの投資を受けたスタートアップFoundersuiteのCEO。同社は資金調達を行う起業家向けに、CRMや投資家とのコミュニケーションを促進するツールを開発している。

年の変わり目は、起業家の間にも新しい風を吹かせる。新しい会社を設立したり、新たなプロダクトを開発したり、資金調達したりと、彼らに何か新しいことへチャレンジさせる力が新年にはあるようだ。

もしもあなたも、新たに資金調達を行おうと思っているならば、是非この記事を参考にしてほしい。それでは、早速はじめよう。

ステップ1:投資家候補をかき集める

資金調達は数のゲームだ。設立した会社がSnapchatくらいのレベルで成長していたり、これまでに複数の企業を上場させた経験があったりしない限り、起業家はたくさんの投資家にアプローチしなければならない。

「たくさん」の投資家にだ。

そのため、資金調達における最初のステップは、150〜200人ほどの投資家リストを作ることからはじまる。

資金調達の一般的な「打率」(プレゼンの数に対するコミットメントの割合)は、5%と言われている。ここから逆算すると、10人のエンジェル投資家にシードラウンドへ参加してもらいたいとすれば、まず200人をリストアップしなければいけない。

AngelListやFoundersuiteなどの無料サービスを使えば、投資家を分野や所在地から検索することができる。またCrunchbaseを使えば、自分たちのスタートアップに似た(競合ではない)企業を検索でき、そこから投資家情報も確認できる。関連キーワード・フレーズを使って(例:SaaS企業への投資で有名なVC/エンジェル投資家は?)、Quoraから投資家を探すというのも手だろう。

PitchBookMattermarkCB Insightsといった有料データベースには、さまざまな検索・フィルタリング機能が搭載されている。他にもTechCrunchPE HubTerm SheetInside Venture CapitalVenture Pulseといった、資金調達関連の情報を掲載しているニュースサイトやウェブマガジンも参考になる。

ステップ2:候補を絞る

資金調達は営業プロセスそのものだ。そして優秀な営業マンは、誰にどのくらいの時間を使うかというのを強く意識している。

この考え方は、営業と同じくらい(もしくはそれ以上に)資金調達でも重要になってくる。サンフランシスコからメンローパークまで1時間半かけて移動したのに、会いに行った「シード投資家」は20万ドルのMRR(マンスリーランレート)を求めていたり、そもそも新規の取引をやっていなかったりすると目も当てられない。

無駄になった半日という時間は、スタートアップ界では永遠に感じられるほど長い時間だ。

だからこそ、時間の無駄や頭痛や不安の種を減らすために、ステップ1で集めた投資家候補をしっかりと評価し、絞り込んでいかなければいけない。リストから候補者を外す際には、以下のような基準を参考にしてほしい。

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もともとのリストから、大体25〜30%くらいの数まで投資家候補を絞りこめれば、まずまずといったところ。きちんと候補を絞ることで、実際に投資家へコンタクトしだしたときの打率がかなり上がるようになる。

ステップ3:アプローチ方法を考える

このステップの目的は、ステップ2で絞り込んだ各投資家へのアプローチ方法を考え出すことだ。

最も有効なのは、共通の知人を通じた紹介だ(さらにその知り合いによって、投資家が過去に儲けを出していればベスト)。

ある投資家との繋がりを確認するためには、その投資家の名前をLinkedInの検索欄に入力し、1次もしくは2次コンタクトの中にその人がいないか確認すればいい。

もしも共通の知人がいないときは、アプローチしたい投資家のポートフォリオに含まれている企業のファウンダーにメールを送ってみるという「攻略法」もある。その際は、まず信頼関係を築くために、投資家がどんな人だったかや、どんな手助けをしてくれたかといった話をして、その後に紹介をお願いした方が良い。

最後の手段が、紹介無しで直接投資家にメールを送るという方法だ。この方法をとっているスタートアップを多く見かけるが、返信が来る確率が1%以下というのもザラだ。

ステップ4:進捗管理のためのシステムとプレゼン資料を準備する

これまでのステップで、投資家のリストを作って、その絞り込みを行い、各投資家へのアプローチ方法を考えだした。次は、実際に資金調達を行うための準備だ。

各スタートアップには、進捗管理システムを構築することを私は強く勧めたい。アプローチしようとしている投資家の数が多いため、投資家の名前や交渉の段階、会話の内容、確認事項やToDoといった事項の管理がかなり複雑になってくる。

ミーティング1回当たりに3つ、4つ確認事項が出てくるとして、100〜150人/社の投資家を相手にすると考えると、その複雑さがわかるだろう。

投資家候補や彼らとの膨大な数のやりとりを管理するためのシステムが必要だ。

多くのスタートアップがExcelやGoogle Docsを使って進捗を管理しているが、1週間もすればスプレッドシートがさまざまな情報で溢れかえってしまうことがよくある。

そこで最近流行っているのが、「かんばんボード」メソッドだ。各投資家を「カード」にして、新規→プレゼン済み→デューデリジェンス→コミット(または交渉決裂)と、交渉の段階に応じてカードを動かしていくというのがこの管理方法の概要だ。ファウンダーに人気のかんばんボードを利用した管理ツールとしては、FoundersuiteやPipedriveTrelloなどがある。

他にもSalesforceなどのCRMを、投資家情報管理の目的で使っている企業もある。どのサービスであれ、投資家候補や彼らとの膨大な数のやりとりを管理するためのシステムを導入すべきだ。

もうひとつこのステップで準備するのが、10〜20ページのプレゼン資料だ。別途1、2ページで、エグゼクティブ・サマリーと予測財務諸表を入れておくことも忘れないように。

プレゼン資料は、交渉時の「主力」として常に必要になる重要なアイテムだ。アドバイスが必要な人は、このガイドが参考になる。またインスピレーションが必要であれば、ここで有名スタートアップのプレゼン資料を見ることもできる。

ここまで準備ができたら、ステップ5へ進む前に、友人やアドバイザー、弁護士、知り合いの投資家を相手に、最低5回は通しでプレゼンを行ってほしい。資金調達中はプレゼン資料を絶えず調整していくことになるので、フィードバックを集めて資料を改良するという習慣をこの段階で身に付けておいた方が良い。

ステップ5:投資家とのミーティング(複数を同時並行で)

投資家候補のリストと管理システムが整い、ようやく本格的に資金調達をはじめる準備ができた。

このステップでは実際に投資家へアプローチし、契約獲得に向けて勢いをつけていく。

まずは、投資家の紹介に応じてくれた知人へメールを送るところからはじめよう。参考メールが以下だ。

題名:投資家紹介のお願い

本文:Jeffへ

自分で立ち上げたスタートアップの資金調達を今やっていて、Jeffが<Xさん、Yさん、Zさん>とLinkedInで繋がってるのを見たんだけど、簡単に紹介してもらえない?

次に、Jeffが紹介できると答えた投資家ひとりひとりについて、新しく簡潔なメールで紹介をお願いする。<>で囲われたところには、自分の会社の情報を入れて使ってほしい。

題名:<Felicis Ventures>の<Aydin Senkut>紹介のお願い|<Acme Analytics シードラウンド:毎月28%成長中>

本文:Jeffへ

現在Acmeで<100万ドル>のシード資金を調達しています。私たちは<商業用ドローンのための解析・支払ソフトを開発しています>。既に<69社の法人顧客>がいて、売上は毎月<28%>伸びています。

<Aydin>のアプローチやポートフォリオ(<例:Flexport>)は、私たちの会社と関連性が高く、是非一度お話したいと考えています。

Acmeの資料はこちらからご覧頂けます。
以上、宜しくお願い致します。

Jennifer

上記のように、会社概要に加えて、投資家にとって魅力的だと思われる指標やアピールになりそうな情報、さらにその投資家と話がしたい理由を3つのセクションに別けて書けば十分だ。

このメールを受け取ったJeffは、転送ボタンを押して、投資家に実際に会いたいか(オプトインのアプローチ)聞くだけでいい。こうすることで、Jeffはほとんど時間をかけず、かつ彼の大事なソーシャル・キャピタルを無駄遣いすることなく、Jenniferを投資家に紹介できる。

紹介者の忙しさと人脈の広さには相関関係があるため、紹介者の負担を減らすというのは極めて重要なことなのだ。

そして、リストに含まれている投資家全員分、上記のプロセスを繰り返す。これまでのステップの各項目をしっかりと行い、投資家が求めるものとプレゼン内容がある程度合致していれば、カレンダーはすぐに投資家とのミーティングで埋まっていくだろう。

ステップ6:ミーティングを繰り返しながら前進あるのみ

ここからが資金調達の本番だ。このステップでは、さらに勢いをつけていかなければならず、そうするための1番の方法は、ミーティングをたくさん行うことだ。毎日、毎週、資金が調達できるまで投資家とミーティングを重ねよう。

投資家はファウンダーの熱を感じることができ、それがファウンダーの自信に繋がり、さらにそれがスタートアップ自体の魅力を引き立たせる。逆に、資金調達が長引いてプレゼンの勢いが落ちると、投資家もそれを感じ取ってしまう。

ミーティングの形式は、カフェでのカジュアルなものから、オフィスでの正式なもの、スカイプを通じたものまでさまざまだ。ほとんどの場合、ミーティングの時間は30分から1時間くらいになる。挨拶を終えたら、まず忘れずに紹介者の話をして、もしも紹介者と親しい関係にあれば知り合ったきっかけについても触れるようにする。

プレゼンの流れはそのときどきで変わってくるが、重要な点はしっかりカバーできるように話を進めたい。

1、2分の間小話をしたら、いよいよプレゼンを開始する。私は投資家にどんな形でプレゼンを行えばいいか尋ねることが多い。「どのようにお話すればよいでしょうか?資料に沿ってお話するか、まずデモからお見せするか、このままお話をつづけましょうか?」といった感じで質問し、投資家をプレゼンに巻き込むのも手だ。

直接会わずにプレゼンを行うときは、画面共有ソフトをしっかりと準備し、ビデオ会議システムのソフトのアップデートに10分も浪費してしまうようなことがないようにする(実際にこれはよく起きる)。

プレゼンの流れはそのときどきで変わってくるが、重要な点はしっかりカバーできるように話を進めたい。さらに投資家からも、投資先企業にどのような価値を提供しているか(一般的な「付加価値」)や、投資が決まったら自分たちのスタートアップをどのようにサポートしてくれるかなどについて話を聞くことをオススメしたい。

そして「どのくらい興味を持って頂いていますか?」や「投資を決めるまでに、どのようなプロセスをとられていますか?これ以降のステップはどのようになっていますか?」といった質問でミーティングを締めくくる。

(この時点で、ステップ4で構築した進捗管理システムの存在に感謝することになるだろう。どういたしまして)

ステップ7:クロージングに向けて

20回もミーティングを繰り返せば、資金がすぐに集まりそう(約2ヶ月)か、時間がかかりそう(3〜6ヶ月)かなんとなく掴めてくるだろう。ほとんどの企業は後者のため、心配する必要はない。

ミーティングが上手く進めば、段々と投資家からも深い話がでてくるだろう。つまり彼らが興味を持っていれば、話題が評価額や投資条件へとシフトしていくはずだ。その後、プライスドラウンド(投資実行前の評価額が決まっている場合)であればタームシートを、コンバーチブルノートを発行する場合は、コミットメントレターを投資家から受け取ることになる。

一方で、15〜20回ミーティングを繰り返した後にタームシートをもらえなくても、諦めてはいけない。資金調達は数のゲームだ。ステップ1で触れた「打率」を覚えているだろうか?プレゼン数に対するコミットメント数が5〜10%であれば問題ないのだ。この数字を逆から見ると、90〜95%の確立で投資家に断られるということになる。だからこそ、断られるのもプロセスのうちだと割り切り、まだやりきっていないうちに諦めてはならない。

意思の弱いファウンダーはすぐに諦めてしまうが、賢いファウンダーは諦めどきを知っている。一般的に言って、最低でも50人/社の投資家と話し、それでも何の興味も持ってもらえないようであれば、一旦資金調達は諦めて、もっとトラクションを獲得してから再挑戦した方が良いかもしれない。

そうでなければ、パイプラインに残っている投資家と頻繁に連絡をとって、どうにか話を進めよう。自分の会社の最新情報や新機能を知らせるメールを送っても良い。ゴールは投資家から何らかの回答を受け取ることだ。もしも答えがNOであっても、パイプラインからその投資家の名前を消すことができる。粘り強さと少々の運があれば、きっと誰かが良さに気づいてくれるはずだ。

初めてのタームシートを受け取ったら、それを利用して他のファンド(やエンジェル投資家)に決定を急がせよう。口頭でのOKをもらったら、Paul Grahamのハンドシェイクディールの手順(The Handshake Deal Protocol)に従って、確約を得るようにする。コミットメントやタームシートの数が増えるにつれて契約力が強まり、クロージングは近づいてくる。

最後に

以上が資金調達のプロセスだ。無事クロージングを迎えたあとは、同僚や紹介者と祝杯をあげるなど「クローズ後の栄光」を楽しんでから仕事に戻ろう。次のラウンドは、もう12〜14ヶ月後に控えている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。