指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」がKickstarterでキャンペーン開始、2014年7月出荷予定

2013年11月に開催したTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルで優勝した指輪型ウェアラブルデバイスの「Ring」を開発するスタートアップ企業のログバーが今日、Kickstarterでキャンペーンを開始した。キャンペーンは35日間で目標額は25万ドル。キャンペーン開始直後の現在、242人の支援者がいて3万7850ドルが集まっている(この記事を書き始めてから書き終わるまでの30分で4000ドル増えた。日本時間2月28日午前7時現在)。2014年4月に量産を開始して、7月に米国、日本、ヨーロッパ、中国への出荷を開始するという。6世代のプロトタイプを経てのデバイス提供開始ということになる。

Ringは6つのサイズでの提供を予定している指輪型のデバイスで、人差し指につけて空中に絵文字やアルファベット、数字などを描くことでジェスチャーを認識してくれる。開発者は低レベルの座標情報を取ってどうこうするというよりも、定義済み、または自分で定義したジェスチャーをRingのAPI経由で利用して、現実世界のデバイスやサービスとつなぐことになる。独自ジェスチャーの定義はスマホアプリ上でできるようだ。RingはBluetooth LEを搭載していて、スマートデバイスと接続もできるが、Ring Hubと呼ぶ中継器を使って赤外線による家電操作が可能だ。Ringのアクティベートには今のところiOS7以上かAndroid 4.4以上を搭載するデバイスが必要で、Windows Phone対応やRing Hub提供は今後の予定となっている。

デバイス的にはモーションセンサーとタッチセンサーを備える。ジェスチャー開始前に明示的にタッチによってジェスチャー開始をRingにユーザーが伝えることによって、小型デバイスながら1度の充電で1000ジェスチャーを認識するだけのバッテリ持続時間を実現したという(より正確な数字はキャンペーン終了前にアナウンスするという)。

ジェスチャーによって、家電や電子機器の操作ができるほか、文字入力や支払いなども可能になるという未来っぽいデバイスだ。小さなLEDとバイブレーターを搭載していて、ノーティフィケーションやアラートをユーザーに伝えるフィードバック機構もある。ジェスチャーによる入力という点でRingとの共通点もありそうなLeap Motionは、こうしたフィードバックが画面だけで、実はそのことが「未来を垣間見れるデバイス。ただし、イライラ棒みたいなもんだけどね」というビミョーなLeap Motionの感想につながっていたように思う。少し複雑なことをやろうと思うとLeap Motionの操作は難しくなり、少なくとも私にとっては学習性無気力感を引き起こすデバイスだった。Ringのタンジブルなフィードバックが、使用感にどう影響するのかは興味をそそられる。

実は去年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルでは、Ringのログバーを優勝とすることについて審査員の間で意見が割れた。応用の幅が広そうで独自性が高いという意味では、「目線が高い」野心的なプロダクトだけれども、端的に言って「風呂敷を広げただけちゃうの?」という意見もあった。美麗な動画で可能性を語り、ごくシンプルな電灯のオン・オフのデモを1つやったのはいいけれど、結局使い物になるプロダクトを本当に実現できるのかどうか疑わしいのではないか、という懐疑的な意見があったのだ。ハードウェア系のスタートアップの人たちに意見を求めてみても、入手可能なバッテリや通信モジュールのサイズや性能から言って「指輪サイズ」は、かなり無理があるのではないか、という話もあった。

この辺のことをログバー創業者の吉田卓郎氏にステージ裏で聞いたところ、むしろ何故デバイスの実現性に疑問を持たれるのか分からないという回答だった。ハードウェア的な意味では、特にサイズを妥協すれば作ること自体は難しくなく、むしろ本当に難しいのはサイズを小さく保ったままバッテリ持続時間を確保することと、ジェスチャーの認識精度を上げる作り込みだと語っていた。ジェスチャー認識のために常時スタンバっていると、とても常用できるバッテリ持続時間にならない。あるいはセンサーから生の座標データを開発者に伝えところで普段幾何学系のアルゴリズムなんて扱わない現代の一般的なソフトウェア開発者にとっては使いづらい。ジェスチャーの定義と認識精度の向上、それをどういうAPIで見せていくかというのがチャレンジだ、という話だっ。Kickstarterでデビューして真っ先に世の中に登場したスマートウォッチのPebbleの登場時なんかもそうだけど、2014年のRingは可能性を広げてファンとなる開発者エコシステムの醸成に腐心するべき時期なのかもしれないね。Leap MotionやPebble同様にアプリストアも用意するようだし、家電や組み込み機器メーカーまで巻き込んで作り込みができれば面白そうだよね。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。