操作やクリックを記録してガイドに、社員間で共有もできる知識収集ソフトScribeが約34億円調達

社員は入社・退職の際、往々にして知識も一緒に持ち運ぶ。また、ひと握りの従業員が何かについて方法論を知っていても、大勢を相手に個別に教える時間がないこともある。そこで、Scribe(スクライブ)の出番だ。このソフトウェアは、操作やクリックを記録し、編集・共有が可能なスクリーンショットやテキストとともに、1分とかからずにステップバイステップのガイドに変換する。情報は、Chromeの拡張機能やデスクトップアプリケーションから記録することができ、また、必要になるまでリポジトリに保存しておくこともできる。

同社は現地時間10月18日、3000万ドル(約34億円)のベンチャーキャピタルを得てスタートした。金額には、Tiger Global ManagementがリードしたシリーズAの2200万ドル(約25億円)が含まれる。既存の投資家から、Amplify Partners、Haystack Ventures、XYZ Venture Capital、AME Cloud Ventures、Morado Ventures、SEVなどが参加した。Amplify Partnersは2021年初めに、800万ドル(約9億円)のシードラウンドをリードした。

McKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)やGreylock Partners(グレイロック・パートナーズ)を経験した共同創業者でCEOのJennifer Smith(ジェニファー・スミス)氏は、数年前、オペレーション業務の進め方に関して社員間で知識の差があると見て、起業家で元Google(グーグル)のエンジニアであるAaron Podolny(アーロン・ポドルニー)氏とともに、サンフランシスコを拠点とするScribeを創業した。

スミス氏が経験してきた領域は、組織やオペレーション業務だ。1200人以上の創業者に、ソフトウェアの売買方法や、あれば良いと思うものについて話を聞いたところ、この10年間、この領域に変化が見られないことがわかったという。

「この領域の業務はまだ手作業で行われています」と同氏はTechCrunchに話した。「方法論を伝える標準的な方法がありません。Scribeがあれば、これが標準となります。記録ボタンをクリックしてタスクを実行すると、ステップバイステップの指示が自動で生成されます」。

Scribeは創業以来、こつこつと積み重ね、今では世界中で1万社がこのソフトウェアを利用し、何かの方法論について他の人と共有している。その中には、政府や学校など、スミス氏とポドルニー氏が当初ターゲットとしなかった組織による利用例も含まれている。

前述の投資家に加え、ラウンドに参加したエンジェル投資家には、元Microsoft(マイクロソフト)会長のJohn Thompson(ジョン・トンプソン)氏、Adobe(アドビ)のプロダクト最高責任者であるScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Gainsight(ゲインサイト)のCEOであるNick Mehta(ニック・メータ)氏、Opendoor(オープンドア)のCEOであるEric Wu(エリック・ウー)氏がいる。今回の投資の一環として、Amplify PartnersのゼネラルパートナーであるMike Dauber(マイク・ドーバー)氏が取締役会に加わる。

Scribeは、デジタルプロセスの記録と共有を目指し、ベンチャー企業をひきつけた最新の企業となった。例えば、8月にはTangoが570万ドル(約6億5000万円)を調達した。同社は、ワークフローのベストプラクティスを自動的に記録し、チームがトップパフォーマーから学ぶことができるChrome拡張機能を開発した。

XYZのマネージングディレクターであるRoss Fubini(ロス・フビーニ)氏によると、Scribeは複雑なものを簡単に見せてくれる会社だという。同氏は、スミス氏が、Greylockで多くの有名スタートアップの法人向け販売を支援したことを評価しており、スミス氏とそのチームが、当時と同じように「仕事を上手く進める方法を示す」製品を作っていると信じている。

「そして、企業はそのためにお金を払ってくれるでしょう」と同氏は付け加えた。「これは旅の最初の一歩に過ぎません。文書化について問題を抱える企業と話をすると、そのような根底にある部分が見えてきます。私たちは、ジェニファーと彼女のチームが仕事を続け、市場を開拓し、その価値に見合った対価を得られるよう、資金面で支援します」。

Scribeには、無料版とプロ・法人プランがある。プロセスのやり方を学ぶために費やす非生産的な時間を、平均で50%近く削減することができる。

スミス氏は、調達した資金によりチームの規模を拡大し、スタートアップからフォーチュン500社に至る顧客の要望に応えたいと考えている。また、20人の従業員の大半は女性とマイノリティで構成されており、これはスミス氏が、包摂的で、文化と人材を優先する組織の構築に注力している中で、誇りに思っていることだという。また、同氏は研究開発や製品開発にも投資し、将来の収益につなげたい考えだ。

「Scribeを方法論を共有する際の新しい共通の基準にしたいと考えています」とスミス氏は付け加えた。「我々はZoomやSlackからインスピレーションを得ていますが、これらはどちらも標準的で辞書的な存在になっています。そのためには、同僚や顧客とのつながりを深め、流通を促進することが重要です」。

画像クレジット:Scribe / Scribe founders Jennifer Smith and Aaron Podolny

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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