支払い残高が月割り定額で返済時1%キャッシュバックがあるUpgrade Cardとは?

ピアツーピア型の融資会社であるLendingClub(レンディングクラブ)を立ち上げたRenaud Laplancheルノー・ラプランシュ)氏は、3年前に2番目の事業を明らかにした。消費者金融のスタートアップのUpgrade(アップグレード)だ。現在、従業員数は350名。およそ20億ドル(約2170億円)を20万人の顧客に貸し出し、外部から14200万ドル(約154億円)の投資を受けている。

当時、この混雑する市場に飛び込むのは狂乱的なことだったが、フィンテック系スタートアップが急増する中、それ自体が既存の大手銀行や歴史あるクレジットカード会社に代わる、より確かな市場だと思われていた。例えば、VisaやMastercardなどの最大手では、支払い期限を過ぎると延滞金が発生するが、後払いサービスを提供しているスイスのユニコーン企業であるKlarna(クラーナ)は、小売店の取引手数料と延滞金を財源にしているものの、利息は取らない。また、Max Levchin(マックス・レヴチン)氏の金融会社であるAffirm(アファーム)は、多額の入金をしている顧客からは延滞金は取らないが、利息は取ることになっている。利息は30%という高利率になる場合もある。

Upgradeの場合は少し違う。あと払いを売り物にはしていない。とはいえ、顧客に有利で顧客のことを思ったサービスをうたっている点では、同じ枠に当てはまる。例えば、同社が力を入れている個人向けローン商品はクレジットカードの支払いに利用する人が多いのだが、同社はそれを信用健全化ツールとして表向きには信用スコアを高める方法を人々に提供している。

また、ごく一部の利用者には、年間35.89%という高い利率を課している。

最新のクレジット商品である「Upgrade Card」は、さらなる利便性で他の先頭に立っている。ラプランシュ氏によれば、このカードは「基本的にクレジットカードの支払い能力と、銀行ローンの低コストをひとつの商品に合体させたもの」だという。

さらにこのハイブリッド型カードについてラプランシュ氏は「LendingClubは12年前に個人向けローンの1000億ドル市場を創出しました。Upgrade Cardにはその10倍の規模があり、顧客にとっては10倍安いものになります」と語る。

我々は、顧客に向けた善良さや安さをうたった消費者金融商品には本能的に疑いを持つ。Upgradeは、カード利用者にカードの残高から毎月最小金額の支払いを求めるのではなく、残高を定額となるよう月割りにする。それに利息が加わる。それは1年から3年で支払いが完了するように組み立てることができる。

「これは、住宅ローンや自動車ローンのような明瞭な支払い計画です」とラプランシェ氏は話す。「それにより予算が立てられます。そして、適切な期間で、毎月支払いを続けて残高を減らしていこうという気になれます」。好きなだけ完済を先延ばしにできるクレジットカードと違うところだ。長期間先延ばしにすれば、結果として利息の支払額だけでも膨大になってしまう。

繰上返済違約金はなく、完済した時点でカードは補充される。さらに、使うほどにキャッシュバックやその他の特典がもらえる一般のクレジットカードとは異なり、Upgradeの利用者は残高を返済するごとに1%のキャッシュバックが受けられる。

もちろん、通常のクレジットカードと同様に年率があり、6.49%から上限は29.99%。他のカードと比べても決して優しい利率ではない。公正を期して言うなら、Apple Cardの最初の年率は13%だ。

ラプランシェ氏はさらに「どの融資商品もそうだが、返済を怠ったり、低い信用度からスタートした利用者は、カードを使いながら完済ができる利用者よりも利率は高くなる」ことを認めた。

Upgradeは、この新商品でCross River Bank(クロスリバー銀行)と提携した。同行はニュージャージー州フォートリーに11年前に創設されたが、これまでに少なくとも1億2800万ドル(約139億円)を調達している。その中には、昨年末に確定したバイアウトファンドであるKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)からの投資1億ドル(約108億円)、2016年にBattery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)、Ribbit Capital(レビット・キャピタル)などが参加した投資ラウンドでの2800万ドル(約30億3000万円)も含まれる。事実Cross River Bankは、Affirm、TransferWise(トランスファーワイズ)、 Coinbase(コインベース)といったフィンテック系スタートアップ(少なくとも創設当初は、消費者保護規制への準拠を維持し、大手銀行との衝突を避けたいと願っている企業)の拠り所となっている。

昨年8月に6200万ドル(約67億2000万円)のシリーズCラウンド投資を決め、最後の資金調達を達成したUpgaradeは、おそらく新たな資金調達ラウンドに向かうだろう。しかし、それを問われたラプランシェ氏は「私たちは大丈夫」とだけ答えた。

それまでは、自前の資金で前に突き進む計画だ。Upgrade Cardの他に、このサンフランシスコを拠点とする企業は、来年の第1四半期に普通預金口座を始めようとしている。これは、今週の初めにRobinhood(ロビンフッド)が発表した高利回りの資金管理口座と同じ動きだ。

これは理解できる。経済が落ち込めば(米国と中国との間で続く小競り合いを見れば、そしてその他の解明されていない疑問のことを思えば、そうなる傾向にあるが)、人々は預金や資金管理口座などの安全な場所を求めるようになるからだ。

そうした動きが、Upgradeのみならず同様のフィンテック系企業が深刻な不況の中を生き延びる手立てとして十分なものかどうかはわからないが、ラプランシェ氏は以前にもっと厳しい経験をしている。

LendingClubは、初のピアツーピア型の融資会社として2014年の夏に華々しく公開市場にデビューし、2016年まで続いた。しかし、ラプランシェ氏は辞任を要求され、その直後に米証券取引委員会から会社の利益を不当に膨らませたとして起訴された。

彼は不正を認めることなく、昨年、米証券取引委員会と和解している。また、彼は罰金を支払い、証券業界からの3年間の追放という処罰を受け入れた。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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