「食品のデリバリーサービスはもう必要ないよ」と思っている諸君。それは間違いのようだ。ヘルシーな食品を扱うデリバリーサービスのTerritoryが新たに670万ドルを調達することに成功したのだ。
元々Power Supplyという社名で営業していたワシントンD.C.のTerritoryは、今回調達した資金によって配達地域の拡大と、これまでにビジネスを展開していたワシントンD.C.、カリフォルニア南部、サンフランシスコでの基盤強化をはかる。
この資金調達のタイミングは縁起がいい。Territoryと同じように食品配達サービスを手がけるMaple(Momofukuのシェフとして有名なDavid Chang氏が出資していたスタートアップ)が先日サービスを停止したばかりなのだ。調理済みの食品デリバリーサービスを手がけていたSpoonRocketもまた昨年営業を停止している。
After 2 years of serving NYC, we’ve closed our doors.
It’s been an honor, thank you for the support.
More info at https://t.co/6OdDagxnDu. pic.twitter.com/IVNS1arVHC— Maple (@maple) May 8, 2017
Territoryに出資する投資家や創業者たちが望むのは、同社がこの食品デリバリーサービス業界における新しいプレイヤーとなることだ。Territoryでは、地域のシェフたちがあらかじめ定められたメニューに従い、栄養士たちによって選ばれた食材を調理する。
Territoryの創業は2011年。The Motley Foolでフィナンシャルアナリストとして働いていた共同創業者のPatrick Smith氏とRobert Morton氏の2人が、ワシントンD.C.で食品系サービスを手がけていたJeff Kelly氏とJosh Krieger氏とタッグを組むことにより誕生した。
同社は2011年にワシントンD.C.でサービスを開始。2015年にロサンゼルス、2016年にサンフランシスコ、そして今年初めにダラスへと事業を拡大してきた。スローペースな事業拡大は同社の成長戦略に従ったものだ。
現在、Territoryは合計で200万件の配達実績をもち、350の地域でサービスを展開している。
Teritoryの成功の鍵となったのは同社の市場開拓戦略だ。彼らは地域にあるフィットネスジムや健康センターを通して顧客を獲得してきた。
健康志向の人々をターゲットにしたのは、創業者自身のライフスタイルが理由だった。
「私は長い間、自分の健康にまったくの無関心でした。(中略)そんな中、私は自分の寿命に限りがあることに改めて気がついたのです」とSmith氏は語る。「それがきっかけで、私はフィットネスや食品の栄養に関心をもつようになりました」。当時、Smith氏が求めるような食品を提供するデリバリーサービスは数えるほどしかなかったと彼は語る。だから、自分でやろうと決めたのだ。
Morton氏によれば、Territoryの創業者たちと同じように健康志向の人々は他にも沢山いたという。20代から40代の社会人のあいだで健康的なライフスタイルが一種の”はやり”になっていた。そこで、Territoryはジムのオーナーたちと手を組み、ジムを利用する人々に同社が提供するヘルシーな料理をアピールしてきた。
同社は地域のシェフと協力し、栄養士が監修したレシピにそって調理された料理を顧客に提供している。
Territoryはこれまでに、パレオダイエット用のメニューと通常のメニューを提供してきた。
同社は今回調達した資金によって新しく30日間のダイエットメニューの提供を開始する。これは、「食事への過度な欲求の原因となったり、メタボリズムや消化に悪影響を与える食事を除いたもの」で、MedStar Healtyが提唱する基準に基づいたものだ。カロリーは350〜600に抑えられ、30〜60グラムの炭水化物、750ミリグラム以下のナトリウム、7グラム以下の脂質を含む(この基準はAmerican Diabetes AssociationとAmerican Heart Associationが定めるガイドラインをもとに作成された)。その他にも、管理栄養士のAshley Koff氏が提唱するMediterraneanダイエット用のメニュー、妊婦向けのマクロ栄養素メニューの提供も開始する。
Terittoryが提供するすべての料理の価格は13ドルだ。
Territoryにとって第1回目の資金調達ラウンドに参加したUpfront VenturesのパートナーであるKara Nortman氏にとって、Territoryのビジネスモデルは投資せずにはいられないほど魅力的なものだった。他社が苦戦を強いられていたマーケットで、Territoryはトラクションを獲得し続けていた。Nortman氏はその理由を知りたかったのだ。
Nortman氏によれば、Territoryはスーパーマーケットで買い物をしなくなった人々(主にミドル〜アッパクラスの人々)の行動パターンを変化させ、従来とは違った形で彼らの消費パターンに応える方法を模索しているという。このビジネスモデルがもたらした実績は、同社への再出資を正当化するには十分だった。
今回の調達ラウンドには新規投資家のNRVとLewis & Clark Ventures、既存投資家のThe Motley Fool Holdingsなども参加している。
「テクノロジー、食品配達に関する知識、そして地域のシェフやレストランが作るヘルシーでおいしい料理を組み合わせることにより、Territoryはロイヤリティの高い顧客を獲得することに成功しています。そして、それが高いマージン率や成長ポテンシャルの大きさにつながっています」とNRVの共同創業者兼マネージングディレクターのTed Chandler氏は語る。
Smith氏と彼らのチームの考えでは、Territoryが提供する料理はダイエットサプリメントなどに頼らない方法で人々の健康を促進するものだという。
「これまでは、『これはどんな効用のあるサプリメントですか?』という考え方が主流だったが、今ではそれが『これはどんな効用のある食品ですか?』というものに変わりつつある」とSmith氏は話す。「遺伝子シーケンシングやマイクロバイオームなどの研究はまだ始まったばかりだが、食品の栄養に関するガイドラインはすでに明確なものが出来上がっているのです」。
Smith氏が最終的に達成しようとしている社会的ミッションは、ブルジョワジーへの食品デリバリーにとどまるものではない。他の企業が新しいライフスタイルを提唱するのと同じように、Territoryの料理はより広範な家庭に受け入れられると彼は考えているのだ。
「これを達成することは私たちにとって非常に重要な目標です」とSmith氏は語る。「健康的な生活をおくるための秘訣は、良いものを食べ、よく運動することに尽きます。私たちはその方法を提供し、彼らのライフスタイルにある問題を解決するのです」。
食品へのアクセスは同社にとって最重要課題である。同社は、農家から学校に直接食材を届ける社会プログラムを米国全土で展開している。また、貧困者のための無料食堂に約100食の料理を寄付したり、従業員にボランティア活動を推奨するなどしている。
「これらの活動は私たちが真摯に取り組んでいるものであり、私たちにとって非常に重要な意味をもつものです」とSmith氏は語る。「これは、より多くの人々の健康状態を最大化するために私たちができることなのです」。
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