ようやくテクノロジーが欧米の不動産ビジネスを変えようとしているが、新興市場の方が住宅の購入や賃貸に関し深刻な問題を抱えている。世界各地で不動産に関する情報が不足している中、利用できる情報もでたらめにまとめられている上、さまざまな関係者が自分の利益を追求しながらこの業界に深く関わっているため、そのうち誰かを飛び越えてビジネスを行うこともできないでいる。
インドで誕生した新たなスタートアップのDoorkeysは、業界の透明性や効率性を高めるため、住宅売買のプロセスをオンライン化しようとしている。
Rising Straits Capitalの会長を務め、不動産業界での豊富な経験を持つSubhash Bediと、サービスマーケットプレイスMydala.comの共同ファウンダーであり実業家のArjun Basuによって設立されたDoorkeysは、200万ドルの資本金とともに9月1日にローンチした。
不動産取引のオンライン化
同社のプラットフォームは、基本的には売り手と買い手を結びつけるマーケットプレイスとして機能している。仲介業者を全て排除するNoBrokerのような競合サービスとは違い、Doorkeysは仲介業者の存在を認めている。同サービスは、言うならば既存のシステムや関係者に変更を加えず、全体をそっくりそのままデジタル化しようとしているのだ。
「アメリカでさえ仲介業者を取り除くことができていないのに、インドのような透明性が極めて低い市場でそれが実現すると思いますか?」とBediはTechCrunchとのインタビューで話していた。「仲介業者を考慮しないコンセプトは現実離れしているように感じます。私たちは、Doorkeysを仲介業者用のオンラインCRMシステムのようにとらえようとしているんです」
ユーザーはDoorkeys上で、地域や価格といった条件をもとに候補となる物件を探すことができます。さらに全ての売り手(=仲介業者)はレート付けされているため、内覧やその後の契約をアレンジする業者を選ぶ際に、買い手は高いレーティングの業者を探しだしたり、彼らの過去のパフォーマンスに基づくコメントを確認することができるのだ。つまり、Doorkeysは仲介業者が買い手の利益を1番に考えるという、現在のインドの仲介業者にはあまり意識されていない考え方に対するインセンティブを生み出そうとしているのだ。
「インドには50万以上の不動産仲介業者が存在します。不動産市場はとても細かく分散しているものの、私たちは仲介業者にツールを提供しつつ、街や近隣地域に関する彼らの知識を利用することで、この規制の行き届いていない分野のフレームワークを構築しようとしているのです」とBasuは付け加え、さまざまなオフラインのプロセスにも仲介業者の力が必要であると説明した。
Doorkeysは、売り手・買い手のどちらからも利用料を受け取っておらず、その代わりに契約時のコミッション(詳細非公表)を通じて収益をあげている。既に同社は、向こう2年間のうちに年間純利益7000万ドルを達成するという野心的な目標を掲げている。
「私たちは、既にいくつかの国内最大級の仲介業者ネットワークに入り込んでおり、Doorkeysの付加価値についても彼らに理解してもらっています。仲介業者は物件の引き合いに関する情報(旧来の広告業界で言えば虚偽の引き合い情報)に対して、そこまでの大金は支払っていません」とBasuは語る。
ローカル市場へのフォーカス
Bediは、以前不動産テクノロジー企業に対する投資環境の偵察のためにインドを訪れたが、その結果にがっかりしたところで、BasuとDoorkeysのアイディアについて話しはじめたと説明する。
BediとBasuによれば、当分の間Doorkeysはニューデリー市場に注力し、急速な拡大路線をとることはない。
「最初にニューデリーというローカル市場でサービスを開始するのはとても重要なことです」とBasuは説明する。「私たちはまず、ローカルレベルでユニットエコノミクスを成立させなければいけません」
インドの上位8都市前後が国全体の不動産取引の約80%を占めていることから、今後の目標は、インドの全ての地域を攻めるのではなく、大きなボリュームを占める中核都市に進出することだと彼は語った。
彼らのモデルが正しいことを証明するための上記のような計画を踏まえ、Doorkeysはコスト面も”締めて”いきたいと考えている。現在同社は40人の社員を抱えており、今年の終わりまでにはその数を倍に増やす計画だ。
「創設メンバーは今後もこのサービスに資金を投入していくほか、さらに今後数ヶ月間のうちに、不動産業界に大きな影響力を持つ企業や投資家からのシードマネーの受け入れも予定しています。そして、最終的に私たちは”A級”投資家の獲得を狙っています。そうは言っても、Doorkeysは多くのアセットを必要としないモデルのため、重要なのは現金燃焼率を抑え、サービスの普及を待つということです」とBediは語る。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)