世界最大級の投資銀行15社が出資者として名を連ね、現在までに20万人の課金ユーザーを獲得しているメッセージング・アプリのSymphonyが新たな資金調達を完了したことが分かった。同社が今回調達した金額は6300万ドルだ。そして、内情に詳しい情報提供者により、Symphonyのバリュエーションが10億ドルを超えたことも明らかとなった―これで、TechCrunchが2016年12月に報じた内容が正しかったことが証明されたことになる。
今回の資金調達ラウンドには、新たにフランスの投資銀行であるBNP Paribasも参加しており、彼らは今後Symphonyの取締役会に参加することになる。Symphonyによれば、既存投資家の大半もまた今回の資金調達ラウンドに参加しているという。それにはGoogle、Lakestar、Natixis、Societe Generale、UBS、Merus Capitalなどの企業が含まれており、Bank of America、BlackRock、Citibank、Deutsche Bank、Goldman Sachs、HSBC、JP Morganなど世界最大級の投資銀行も名を連ねている。Symphonyの累計調達金額は2億2900万ドルだ。
TechCrunchで2016年12月に前回の資金調達を報じた際、私たちは同社のバリュエーションについても触れていたが、それと同時に、Symphonyがシンガポールを中心とするアジア諸国の企業から200万ドル程度の資金を調達しようとしていることも伝えていた。
しかし、Symphonyのスポークスパーソンはこの件に関するコメントを控えている。また、彼らは今回の調達ラウンドが前回のものの延長線上にあるのか、もしくは新しいラウンドなのかも明らかにしていない。
「私たちに興味を示す投資家は大勢おり、彼らとの対話は常に行っています」とスポークスパーソンは話し、「私たちはすでに十分な資金を調達したと考えています」と加えた。また、BNP Paribasは「戦略的パートナーであり、それが私たちが彼らと手を組むことを決めた理由の1つでもある」とも話している。
BNP Paribasのグローバルマーケット部門長であるOlivier Osty氏は、「デジタルトランスフォーメーションはBNP Paribasのグローバルマーケット戦略の中核であり、私たちにとって、フィンテック(企業)と手を組むことはその重要なプロセスの一部です。Symphonyのような、エキサイテイングかつイノベーティブな企業とのパートナーシップにより、私たちは顧客に格別なサービスを提供することができます」と語る。
Symphonyは主に金融業界をターゲットとしたセキュアなメッセージングサービスを提供している。ユーザーとなる企業は、同アプリを利用して社内の従業員とコミュニケーションをとれるだけでなく、同じセキュアなフレームワークを利用して社外の人々ともメッセージのやり取りをすることが可能だ。SymphonyをSlackと同類のサービスとして考えることもできるだろう。しかし、Symphonyが他のメッセージング・サービスと異なるのは、同社が金融企業に特有の安全性に関するニーズに対応したプラットフォームを構築してきたという点だろう。
Symphonyの競合には他社が提供するメッセージング・アプリだけでなく、これまでに金融企業が利用してきたその他のコミュニケーション・サービスも含まれる。その1つがBloombergのターミナルで、これにはSymphonyよりもはるかに高いコストがかかる(ターミナル1台につき、年額2万5000ドル程度)。一方、Symphonyの利用料金はユーザー1人につき月額15ドルだ(これがSymphonyが「ブルームバーグキラー」と呼ばれる所以でもある)。
Symphonyはフリーミアムモデルを採用しているが、無料ユーザーの数は明らかにしておらず、「数千人単位」であると述べるに留めている。
他のメッセージング・アプリと同じく、Symphonyには基本的なメッセージング機能に加えて多種多様な機能を備えている。その例が、音声/ビデオ通話、そしてDow Jones、Selerity、Chart IQ、S&P、Fintech Studiosなどが提供する拡張機能のマーケットプレイスだ。
彼らの戦略は今のところ上手くいっているようだ:彼らはこれまでに160の金融企業を顧客として獲得しており、今回調達した資金によって他の業種にも拡大していく構えだ。次にSymphonyが狙うのは、金融業界と同じくメッセージングサービスに安全性を求める法律関連や会計業界。また、これらの業種と同じように厳しいプライバシールールを敷くヘルスケア業界もターゲットとして捉えている。
「プラットフォームを世界中に拡大していくにあたり、今回の調達ラウンドに参加した投資家からのサポートに非常に感謝しています」と語るのは、Symphony創業者兼CEOのDavid Gurlé氏だ。「Symphonyのコミュニティが広がるにつれ、私たちは顧客により大きな価値を与えることができており、今回の資金調達はそれを象徴するものです。Symphonyの効率性は、統合されたコラボーレーション・プラットフォームと合理化されたワークフローによってもたらされており、顧客がレガシーツールを廃してSymphonyを中核ツールとして利用したいと願っているという事実がそれを裏付けています」。
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