日々のプロセスを自動化、開発者が重要なタスクに集中できるようにするツールのRaycastが約16.9億円調達

開発者向け生産性向上ツールのRaycast(レイキャスト)は、Accel(アクセル)とCootue(クーチュ)を中心としたシリーズAで1500万ドル(約16億9100万円)の資金を調達した。また、このラウンドには、エンジェル投資家として、Hopin(ホピン)のCEO兼創業者であるJohnny Boufarhat(ジョニー・ブファルハット)氏、Stripe(ストライプ)の製品責任者であるJeff Weinstein(ジェフ・ワインスタイン)氏、GitHub(ギットハブ)の元CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、Checkout.com(チェックアウト・ドットコム)のCTOであるOtt Kaukver(オット・カウクバー)氏などが参加した。

Raycastは、元Facebook(フェイスブック)のソフトウェアエンジニアであるThomas Paul Mann(トーマス・ポール・マン)氏とPetr Nikolaev(ペトル・ニコラエフ)氏によって2020年に設立された。彼らは、異なるSaaSツール間で開発者が継続的にコンテキストスイッチを行うことで日々失われる時間を取り戻す方法を模索していた。

「私たちが会社を始めたのは、コンピューターとの向き合い方を改善したいと思ったからです。私たち自身も開発者として、ほとんど価値を提供しない忙しい作業に多くの時間を費やしていることに気づきました。むしろもっと重要な仕事に時間を費やしたいと思ったんです。これがRaycastの前提であり、仕事を早く終わらせるためのツールを提供します」RaycastのCEOであるトーマス・ポール・マンは、TechCrunchのインタビューに答えている。

Raycastは、コマンドラインにインスパイアされたインターフェースにより、開発者が情報を見つけ、更新することを容易にすることを目的としている。このプラットフォームは、日々のプロセスやタスクの自動化を可能にし、開発者が重要なタスクに集中できるようにする。このデスクトップソフトウェアは「Superhuman」や「Command E」などの同業他社を参考にしており、ユーザーはキーボードショートカットを使ってすばやくデータを引き出し、修正することができる。ユーザーは、Jiraでの課題の作成や再修正、GitHubでのプルリクエストのマージ、ドキュメントの検索などを簡単に行うことができる。基本的に、Apple(アップル)のSpotlight検索の開発者向けバージョンであり、ソフトウェアエンジニアが開発作業以外のすべての部分を単一のツールを使って操作できるようにすることを目的としている。

Raycastの成長に関して、わずか12カ月で、2020年10月に130人だったデイリーアクティブユーザーを現在までに1万1000人以上に増やし、その間に2000万以上のアクションがプラットフォーム上で実行されたと述べている。チームは現在12名のメンバーで構成されており、年内にはさらに多くの人材が入社する予定だ。

また、Raycastは、エクステンションAPIとストアをパブリックベータ版として公開し、開発者がカスタムエクステンションを構築し、チームやコミュニティで共有できるようにした。同社によると、このベータ版では、1カ月間にコミュニティが100以上のエクステンションを構築し、Figma、GitHub、Chrome、Notion、YouTube、Twitterなどのサービスにも接続しているという。Raycastは現在、エクステンションAPIとストアを公開し、世界中の開発者に開放している。

画像クレジット:Raycast

マン氏は、今回の資金調達について、Raycastは開発者の生産性向上分野のリーダーになりたいと語っている。「それが、今回の資金調達の目的です。今回の資金調達は、チームの規模をさらに拡大するために使用します。私たちは、このプラットフォームを誰もが利用できるようにして、誰もが望むツールを構築できるようにしたいと考えているんです」と述べている。

Raycastは今回の資金調達を利用して、開発者やツールのコミュニティの構築に注力し、プラットフォームの成長を加速させるとともに、チームレベルでのRaycastの導入も計画している。同社は今後も個人の開発者に重点を置いていくが、生産性向上のためのツールやワークフローを他の人と簡単に共有できるようにすることにも可能性を見出している。米国時間11月30日より、企業は早期アクセスプログラムに登録して、チーム向けの新機能を利用できるようになる。ユーザーは、チームのニーズに合わせてカスタムエクステンションやリンクを構築・配布できる、独自の社内ストアを作成することができるようになる。

「チームはエクステンションを構築し、それをチームメンバーと個人的に共有することができます。カスタムセットアップで生産性を向上させる社内ツールがあれば、チームメンバーも恩恵を受けることができるよう、それをチームメンバー内に共有することができます。これにより、チームとしての生産性を維持し、普段抱えている忙しい業務に費やす時間を節約することができます」とマン氏は語る。

RaycastのシリーズA資金は、2020年10月に行われた270万ドル(約3億円)のシードラウンドに続くものだ。今回のラウンドは、Accelがリードし、YC、Jeff Morris Jr.(ジェフ・モリスJr.)氏のChapter One(チャプター・ワン)ファンド、さらにエンジェル投資家のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏、Calvin French-Owen(カルヴィン・フレンチ・オウエン)氏、Manik Gupta(マニック・グプタ)氏が参加した。

AccelのパートナーであるAndrei Brasoveanu(アンドレイ・ブラソヴェアヌ)氏は「Raycastへのシード投資を担当して以来、Raycastが開発者コミュニティで成長し、牽引していることに感銘を受けてきました。これは、Raycastが開発者にとって不可欠なツールになる可能性を秘めているという当初の確信を裏付けるものであり、APIやストアの立ち上げやチームへの拡大によって、チームがさらに前進することに期待しています。我々は、トーマス氏とペトル氏の野心的な冒険を引き続きサポートできることをうれしく思います」と述べている。

画像クレジット:Raycast

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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