日本の商品を台湾・ASEAN諸国に販売したい企業へ越境EC支援を行うアジアンブリッジは6月5日、ニッセイ・キャピタルと事業会社1社から総額3億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。今回の資金調達は同社にとって外部からの初めての調達で、シリーズAラウンドにあたる。
アジアンブリッジが提供するサービスは大きく分けて2つだ。1つは日本企業が通信販売で海外展開する際の越境EC支援で、台湾をテスト拠点とした事業が軌道に乗り、現在の利用企業は約50社。資金調達を機にASEAN各国への事業拡大を目指すという。
もう1つはクラウド型の現地法人通販システム「bamb(バンブ)」だ。bambはいわゆる「カート」をベースにした通販システムとは異なり、在庫管理と会計処理をベースとするシステムで、通販事業を行う国に会社を設立することなく、その国に在庫を置いて通信販売ができるというものだ。
アジアンブリッジ代表取締役社長の阪根嘉苗氏によれば「現地に在庫を置かずに海外向け通販事業をやろうとすると制限が多い」という。「アジアでは通信販売の決済方法は、まだまだ代金引換が一般的だが、EMS(国際郵便)を利用した発送では代引きを選択することができない。せっかくのいい商品でも買える人が少なくなってしまう」(阪根氏)
「では現地にパートナー企業を見つけて商品を仕入れてもらおう」となっても、今度は商品の買い取りリスクを恐れてパートナーがなかなか見つからないのが現状だと阪根氏は言う。「そこに課題を感じ、日本の海外通販進出が進まない実情を見て、bambを2年前にリリースした」(阪根氏)
bambでは、商品を販売したい企業の商品を現地に置き、委託で販売する形を取っている。現地からの発送となるため、代引きでの販売も可能となる。現地で発信する広告のローカライズや許認可、申請などもアジアンブリッジがサポートすることで、日本企業の海外通販進出のハードル、リスクを下げている。
またアジアンブリッジでは、アジアではまだ浸透していないが日本では当たり前となっているサブスクリプション(定期購入)の手法を、越境ECでも提供できるよう支援を行っている。定期購入の仕組みがアジアで浸透していない理由について阪根氏は「リピート通販を成立させるには、日本流の丁寧なフォローが必要だから」と話している。
「定期購入はメールや電話、手紙などでコミュニケーションをどう取るかがカギ。これをサブスクリプションの概念がない現地の企業で対応するのは難しい。でもアジアでは、そういったきめ細かいフォローをしてもらうのがうれしくない人はいないはず。日本のよいものを、長く使ってもらえるように当社でサポートしていく」(阪根氏)
とはいえ、定期購入というものがどういう仕組みか知らない人々に、そのメリットを伝えるのは簡単ではない、と阪根氏は言う。
「ウェブでも大きくわかりやすく説明を書くようにしているけれども、2回目の商品が届いたときに『クレジットカードが不正利用された』とか『詐欺会社だ』といったクレームが来ることも。苦労はある。でもウェブやメール、手紙などでフォローすることで、徐々にサブスクリプションのスタイルは浸透してきている」(阪根氏)
阪根氏は台湾出身で日本育ち。第二の故郷・日本のものが大好きで「日本と台湾、そしてアジアとの架け橋になって日本のよいものを届けたい」と6年在籍したリクルートを退職し、2010年にアジアンブリッジを設立した。
「今はスキンケア用品やサプリメントなどを定期購入で販売する企業を中心にサービスを提供しているが、定期的に届いてうれしいものは、ほかにも日本にたくさんある。地方特産のおいしいものが月替わりで届くとか、地酒が順番に届くといった頒布会形式の通販もサポートしていきたい。日本に来なくても、日本のものを手に取ってもらえるようになればいいと思う」(阪根氏)
アジアンブリッジでは調達資金により、現在ベータ版で提供しているbambの機能強化を行い、台湾以外の拠点へも展開していく。来月にもベトナム、シンガポール、マレーシア、タイへパイロット展開を行い、ブラッシュアップを図る。2年以内にASEAN全域へのサービス提供を目指す。