いよいよ明日6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される。日本の観光産業にとって節目となる日だ。そんな中、民泊分野のメインプレイヤーとも言えるAirbnbが新たなパートナーシップ制度を発表した。
Airbnbは6月14日、日本企業36社と手を組み、パートナーシップ制度「Airbnb Partners」を立ち上げると発表した。このパートナーシップ制度は、グローバル組織であるAirbnbとしても初の取り組みとなる。同社はこの発表に合わせて記者会見を開催。Airbnb共同創業者のNathan Blecharczyk氏とAirbnb Japan代表取締役の田邊泰之氏が日本での戦略を語った。
体験型の日本旅行を、日本らしい形で
「一番重要なのは、Airbnbが提供する体験型の旅が日本らしい形で成長することだ」ーー田邊氏は会見でこう語った。
個人が所有する空き家や空きスペースを旅行者に宿として提供できる民泊サービスとして成長を続けるAirbnb。これまでの累計利用者数は3億人を超え、掲載された宿の数は500万件を超える。これは、ホテル最大手のマリオットグループが所有する部屋数の約4倍にもあたる数字だという。
しかし、Airbnbは単に場所だけを提供するサービスではない。例えば、日本のAirbnbに掲載されている宿のなかには、宿のオーナーが持つ日本酒のコレクションを旅行者が楽しめるものもある。ユーザーが旅の最中に現地の人々とふれあい、日本の文化を体験できる“体験型の旅”がAirbnbの最大の特徴だ。
そのような体験型の旅を日本で成長させるためには、もちろん体験型のサービスを現地で提供する必要もあるし、部屋の管理や清掃だけでなく移動、金融などの各種サービスを充実させる必要もある。安心安全といった要素も重要だ。
でも、それらのサービスをすべてAirbnbが単体で提供することはできない。そこで彼らは、各分野でビジネスを行う企業とパートナーシップを組むという道を選択したというわけだ。現時点でAirbnb Partnersに参加する日本企業は36社。銀行のみずほフィナンシャルグループ、保険の損害保険ジャパン日本興亜、旅行のエボラブルアジア、小売のビックカメラ、家具のニトリ、エンターテイメントのカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)など、参加企業は多種多様だ。
日本独自の7つの施策
Airbnbは今後、これらのパートナー企業とともに以下の7つの施策を実行する。
- ハイスタンダードな宿だけを集めた上位プラン「Airbnb Plus」を東京、大阪、京都でも提供開始
- AirbnbでCCCの「Tポイント」が利用可能になる
- パートナー企業のエアトリスティが提供する宿の一括運営サービスをフランチャイズ化し、全国展開。地元ならではの体験型サービスも提供
- パソナと連携してホスト(宿のオーナー)の育成プログラムを強化
- パートナー企業とともに、地域活性化に貢献する旅行プログラムを提供(例:アソビシステムと原宿のポップカルチャーを体験できる宿の提供)
- 住宅系のパートナー企業とともに、“民泊ファースト”な住宅の開発
- 旅行系のパートナー企業とともに、日本独自の保険プログラムを提供
Blecharczyk氏は、「Airbnbを利用する日本のすべての人々が、より快適に利用ができるようコミットする。この新しいパートナーシップによってホストとゲストが必要なサービス、サポートを提供することで、Airbnbのコミュニティもさらに大きく、力強いものになっていくと確信している」と話す。
冒頭でも述べたように、Airbnb Partnersはグローバル組織であるAirbnbとしても初の試みであり、上にあげた7つの施策も日本独自のものだ。2020年には東京オリンピックを控え、インバウンド旅行者も2800万人を突破した日本の観光産業がもつポテンシャルの大きさを物語る。
また、ここ数ヶ月中の出来事だけで言っても、民泊運営ツールのmatsuri technologiesやSQUEEZEが数億円規模の資金調達を実施し、宿泊予約のReluxが民泊施設の取り扱いを始めるなど、この分野ではスタートアップの動きもいよいよ活発化してきた。民泊新法の施行を合図に、日本の民泊ビジネスが一斉に走り出す。そんな気がするのは僕だけだろうか。