大阪大学大学院人間科学研究科教授の入戸野宏氏らによる研究グループは2月18日、日本人の乳児の顔の形状を分析し、その「かわいさ」には客観的な特徴が存在することを明らかにしたと発表した。日本人の赤ちゃんの顔をベースにした体系的な研究はこれが初めてとのこと。
赤ちゃんの顔のかわいさについては、1943年にオーストリアの動物行動学者コンラート・ローレンツが提唱した「ベビースキーマ」という概念がある。大人が赤ちゃんに対してかわいいという感情を抱かせる身体的特徴を分析したものだが、研究対象は白人の赤ちゃんに限られていた。そこで同研究グループは、同様の方法を使って日本人の赤ちゃんの顔に関する実験を行った。
実験には、保護者から提供してもらった生後6カ月の赤ちゃん80名の無表情な正面顔の写真を使用した。それを20歳から69歳の日本人の男女200名に見せ、「まったくかわいくない」から「非常にかわいい」までの7段階の評価を付けさせた。そして、平均得点の高いほうから10名、低い方から10名を選び、両グループの顔を平均化し、かわいさが高い顔と、低い顔とを合成した。
そこから、かわいさが低い顔から高い顔にするには、どの部分を変形させればよいかというパターンを導き出したところ、「ベビースキーマ」の特徴と一致したという。さらにこの変形パターンを50枚の赤ちゃんの顔に適用して、かわいさを増した顔と減らした顔を作り、そのペアを20歳から69歳の日本人の男女587名に見せ、かわいいと思う方を選ばせた。すると、9割の人がかわいさを増した写真を選んだ。ただし、若い男性だけは、女性や中高年の男性にくらべて正答率が低かった。
このことから、赤ちゃんのかわいさには、個人の好みとは別に、多くの人が共通して感じる客観的な特徴が存在することが判明した。この研究で作成された「日本版かわいい乳児顔データセット」Japanese Cute Infant Face(JCIF) dataset)は、インターネット上で公開されている。