日本酒スタートアップのClearが7500万円を調達——D2CモデルのECサービス「SAKE100」運営

日本酒に特化した事業を展開するスタートアップのClearは10月31日、KLab Venture Partnersおよび複数の個人投資家から、総額7500万円を資金調達したことを明らかにした。

「日本酒は懐が深く、人生を豊かにする飲み物。世界中の人にその魅力を知ってもらいたい」と語るのは、Clear代表取締役の生駒龍史氏だ。Clearは2013年2月の設立で、日本酒のサブスクリプションコマース事業から始まった日本酒スタートアップ。現在は、2014年にローンチした日本酒メディア「SAKETIMES」、131カ国で読まれる英語版の「SAKETIMES International」を運営する。

また2018年7月からは、D2Cモデルの日本酒ECサービス「SAKE100(サケハンドレッド)」をスタート。高品質・高価格の“プレミアム日本酒”を酒蔵とともに開発し、ネット経由で販売している。

例えば、山形県の楯の川酒造と開発した日本酒「百光(びゃっこう)」は、山形県産の有機栽培で作った酒米を精米歩合18%まで磨いて作る。吟醸酒の精米歩合は60%以下、大吟醸でも50%以下、というのが決まりなので、この磨き度合いは相当なもの。もちろん精米にも醸造にも高い技術が要ることだろう。

SAKE100で扱う日本酒にはほかにも、単に「究極の高級酒を造る」というだけでなく、耕作放棄地となっていた田んぼを開墾し、その土地で育てた酒米を使って醸した、という純米酒「深豊(しんほう)」や、濃厚で甘い、デザートワインならぬ“デザートSAKE”などもある。

SAKE100では「日本酒の魅力をさまざまな価値軸で打ち出すことで、世界中で認知され、親しまれる」ことを目指している。画一化された評価軸を突き抜けた日本酒を提案することで、高価格市場の形成を狙う。

「Clearの強みは、SAKETIMESなどのメディア運営を通じて日本酒の世界にどっぷり漬かり、蔵元や酒販店の動向や、売れ筋の傾向など、業界のことがよく分かっている点だ」と生駒氏はいう。「もともと、めちゃくちゃ日本酒が好きでビジネスのことも分かる集団が、好きが高じてやっている。業界がよく分かる人間がスタートアップ的に戦うことで、勝算があると考えている」(生駒氏)

同社にとって今回の資金調達は、VCが参加する初めてのエクイティによる調達となる。調達資金により、国内D2Cコマース成長のためのマーケティング強化を行うとともに、アメリカ・中国・香港・シンガポールなど、海外市場への展開も進める構えだ。

「世界一の日本酒企業を目指す」と話す生駒氏。SAKE100リリースに当たり、2018年7月、Clearは既存の酒販店を子会社化しているが、これも「制限のない事業展開を行うため」とのことだ。

「酒類小売業免許を新規に取得すると、3000キロリットル以上製造する酒蔵のお酒を売ることができないなど、免許上、制限がある。事業をスケールさせるなら大きい蔵と組む必要があるが、それができないのは困る。そのため、制限のない、旧来の免許を持つ酒販店を子会社化することにした」(生駒氏)

日本酒の輸出は8年連続で拡大しており、2017年の輸出額は約187億円、2018年は200億円を超えるのではないかと見られている。ただ一方、フランスワインの輸出額は年間90億ユーロ(約1兆1800億円)にものぼり、桁違いだ。生駒氏は「日本人以外にも日本酒を飲む人を増やすために、早い段階で海外にもブランドを展開して、アプローチしたい」と話している。

生駒氏はまた「日本酒を“社会ごと化”するために、IPOも目指している」という。「これまでの日本酒業界は“家業”か“免許”で縛られた閉鎖的な世界。『家を継ぐ』『免許があるからやる』ということではなく、社会に絡ませることでその世界を広げたい。そのためには、IPOにより、投資の対象として日本酒が見られることも効果があるのではないかと考えている。今まで日本酒だけの製造・販売で上場した企業はないが、上場することで社会に日本酒の価値・意義をつなげたい」(生駒氏)

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TechCrunch Japan

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