最もリクエストが多かった消費税計算、会計ツールを決済大手Stripeは約30カ国で提供開始

消費税計算を専門とするTaxJar(タックスジャー)を2021年4月に買収したのに引き続き、Stripe(ストライプ)は米国時間6月10日、税分野でさらに大きな動きに出た。企業価値950億ドル(約10兆3855億円)もの決済巨人である同社はStripe Taxという新プロダクトを展開する。自動でアップデートされる消費税計算(消費税、VAT[付加価値税]、GST[商品サービス税]をカバー)や関連する会計サービスを、Stripeの決済を利用するまず30カ国超の顧客に提供する。

Stripe TaxはTaxJarとは別のサービスだが、関係がないわけではない。Stripe Taxはここ数カ月かけてダブリンにあるStripeのオフィスで制作され、StripeのEMEA(欧州、中東、アフリカ)担当責任者Matt Henderson(マット・ヘンダーソン)氏は、その過程でTaxJarがこの分野で強い会社だとチームは気づいた、と筆者に語った。それが最終的には2社のM&Aにつながった。

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消費税、そして特に課税と追跡に対応するよりシームレスな方法の確保は事業をオンラインで行う人にとって悩ましい問題だ。

デジタル、そして物理的商品は130カ国超で課税されるとStripeは話す。課税に関する規則は絶えず変化するため、規則やコンプライアンスの複雑さは大きく異なる。一方で、消費税の取り扱いミスはかなり高額の罰金につながり、時に支払い期限を過ぎた未払額の利子は30%にものぼる。

驚くことではないが、消費税ツールはStripeの顧客から最もリクエストが多かった機能だったとヘンダーソン氏は話した。こうした要望は、新型コロナウイルスの影響でeコマースとデジタル決済が非常に増えたために2020年にさらに大きなものになったようだ。

おそらくそれはStripe TaxをStripeのプロダクト立ち上げでも大きなものの1つにしている。2021年初めの巨大な資金調達を発表してから初のプロダクトであるということはいうに及ばないだろう。

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これまでStripe顧客は消費税に対応するのに(TaxJarのような)サードパーティのサービスに頼っていた。あるいは、より典型的な例として、そうしたStripe顧客は複雑でかなり地域によって異なる複数の税法に対処する労力を最小化するために、商品やサービスを販売する場所の数を制限することを選ぶこともある。

「税に対応するのに興奮して朝ベッドから飛び起きる人はいません」とStripeの共同創業者で社長のJohn Collison(ジョン・コリソン)氏は声明文で述べた。「大半の企業にとって、税コンプライアンスの管理は頭痛の種です。当社は消費税の計算と徴収に関するすべてを簡素化します」。

Stripeは同社の顧客に行った調査で、3分の2が消費税実行の問題が実際に成長を制限したと答えた、と述べた。

TaxJarは消費税を扱うための強固なシステムを構築したが、マサチューセッツに拠点を置きリモートチームを抱える同社は主に米国マーケットにフォーカスしている。米国の消費税も非常に複雑だ(米国には1万1000もの税務管轄区域がある)。

このため、米国以外の国のための消費税ツールを構築する余地がある。このように、TaxJarとStripeが今後どのように統合するかにかかわらず、Stripe Taxの広範なフォーカスはStripeにとっての地理的ギャップを埋めている。

もう1つ、2社の間に注意すべき主要な相違点がある。

TaxJarはかなり確立されたオペレーションでStripeの注意を引いた。TaxJarは買収発表時に2万3000もの顧客を抱えていた。Stripeは(賢くも)TaxJarを独立事業会社とし、これはTaxJarを利用する新規・既存顧客がこれまで通りTaxJarを使えることを意味する。つまり、少なくとも当面はTaxJarを使うためにStripeの決済顧客である必要はない。2つのプラットフォームの統合が今後さらに進むとしてもだ。

一方、Stripe TaxはStripe顧客との接点と付き合いを増やすことを目的とするプロダクトとしてゼロから構築されている。

Stripe Taxは顧客の所在地と販売するプロダクトに基づいてリアルタイムの税計算を提供している。顧客のための透明な項目分け、(欧州のように)ビジネス顧客が一定の売上高以下であれば自社コードを提供して税金ををリバースチャージできる地域でのタックスID管理、書類提出と送金を簡単にするためのすべての取引での調停と報告などだ。

しかしStripe決済の外でStripe Taxを使う方法は現在のところない。

これは一部の顧客にとっては問題となるかもしれない。最近、大手小売の多くがマーケットプレイスを通じた販売、ウェブサイトを通じた販売、ソーシャルメディアを通じた販売などをカバーする「オムニチャネル」アプローチを取ろうとしているが、そうしたエクスペリエンスのすべてがStripeで提供されるわけではない。Stripe Taxの将来のイテレーションがそこをカバーするかどうか、注目する価値がありそうだ。

StripeのStripe Tax以外の最も大きなプロダクトの立ち上げは2020年12月のStripe Treasuryだ。これは、同社が現在いかに基本的な決済事業以外のところで多様化を図り、広範でさらに多くの取引にプラットフォームを開放することに注力しているかを強調している。

まだ招待制であるTreasuryでStripeは銀行業務サービスを展開するために銀行と提携し、顧客がStripe駆動の事業からの売り上げを管理できる方法を提供している。

Stripe Taxが利用できる国はオーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、ニュージーランド、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、米国、英国だ。

カテゴリー:フィンテック
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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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