最後のナノメータ問題: 光→電子変換の不効率を一挙に解消するグラフェン感光素子

われわれシロウトの知識では理解できない未来の科学技術を、本誌もときどき取り上げるが、今回のもその一つだ。それは、グラフェンによる感光素子(光センサ)。

高速なデータの多くが今は光ファイバのケーブルで送られるが、それにはつねに、“最後のナノメータ”という問題がつきまとい、最後には光信号を電子のパルスに換えなければならない。そのためには光検出器というものを使って光を検知し、信号の変換を行う〔光回路と電子回路がそれぞれ別〕。そこにグラフェンが登場するとどうなるか。

六角形が並んだ形の単層の炭素原子を使って、ウィーン工科大学の研究者たちは、光子を電子に変換するための超微細で超高速で超効率的な方法を作り出した。これまでの光検出器は大きくてかさばっているものが多いが、この方法では約1平方センチのチップが最大2万の入力を受け取れる。これならコンピュータは、メモリとのデータのやりとりを光で行えるし、メモリの、光で動作する“スイッチ”〔ビットの1←→0書き換えスイッチ〕も可能だ。一つのUSBポートで2万ポートのルータを使える、と考えてもよい。

“光を電気信号に換える素材はたくさんあるが、グラフェンは特別に速い”、と研究者の一人Thomas Müllerが、ニュース記事の中で言っている。“この技術はデータの長距離伝送に重要なだけでなく、コンピュータ内部のデータ伝送が光で行われることが、今後はますます重要になる”。

非常に特殊な変換技術だから、部品間が光で結ばれたPCが登場することはないだろう。でも大型のメインフレームなら、銅線による接続が光に換わるかもしれない。Ethernetやシリアルポートは、絶滅種になるのだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))