自動車の走行データ解析サービスを提供するスマートドライブは8月6日、産業革新機構、ゴールドマン・サックス、モノフル、2020(鴻海グループのファンド)を引受先とする第三者割当増資により総額17億円を調達した。
スマートドライブは、自動車に取り付ける専用デバイスから50〜60項目にわたるデータを取得・解析し、それをもとに自動車保険の開発や走行データ可視化サービスなどを展開するスタートアップ。その解析技術を軸に、法人向け車両管理サービスの「SmartDrive Fleet(旧DriveOps)」や、運転の安全度によって掛け金が変動するテレマティクス保険をアクサ損害保険と共同で提供するなどしている。
走行データの解析技術をもとにさまざまな事業を展開するスマートドライブだが、なかでも特に注目を集めたのが、運転の安全度によってポイントを付与する機能などが特徴の月定額カーレンタルサービス「SmartDrive Cars(以下、Cars)」だ。スマートドライブ代表取締役の北川烈氏は、2018年2月よりスタートしたCarsについて具体的な数字を明かさなかったものの、初動は順調で「年内には全国展開をはじめる」とした。
また、このサービスは本来、スマートドライブのパートナー企業が保有する車両を貸し出すというモデルだが、中古車や新車を販売するディーラー各社からの引き合いも多くなっているという。Carsが提供するデータ解析機能(安全運転によりポイントがもらえるなど)を切り出し、自動車を販売する際にセットサービスして提供できないかというものだ。そのため、スマートドライブは今後、プラットフォーマーとしてこれらの機能をディーラーに提供する役割を担うことも検討しているという。
スマートドライブは今回の資金調達を期に、Carsなど自社のC向け事業の拡大を目指す。調達した17億円はCarsのさらなる開発費用とプロモーションに使用するほか、2018年10月に正式リリース予定の新サービス「SmartDrive Families(以下、Families)」の開発費にも充てる。Familiesは、自動車の走行データを利用して離れて住む高齢の家族を見守ることができるサービスだ。
高齢化が進む日本では、高齢ドライバーによる運転事故は社会課題の1つ。そういった事故が増えるにつれ、「〇〇歳以上のドライバーからは免許を取り上げる」などの議論も出てきた。しかし、そもそも安全運転の度合いは個人によって異なるし、クルマが日々の生活に欠かせないものとなる僻地に住む人は、できるだけ長く免許を保持したいというのが正直なところだ。
Familiesでは、専用デバイスを家族のクルマに取り付けるだけで運転の安全度を計測することができ、より実態に即した形で、彼らが保有する免許を返上させるべきかどうか判断できるようになる。同様のサービスを提供する競合他社は存在するものの、Familiesの強みとしては、シガーソケットに取り付けるだけという導入の容易さ、費用の安さなどがあると北川氏は話す。
走行データの解析という技術を軸に、さまざまな領域へのビジネス展開を模索するスマートドライブ。今回の資金調達では、今述べたC向け事業の強化のほか、物流のモノフルとの連携によりロジスティクス領域でのビジネスを強化するほか、研究開発部門の「SmartDrive Lab」を中国・深センに設立するなどしている。