コーヒーのサブスクリプションサービス「PostCoffee」を運営するPOST COFFEEは10月1日、セレス、朝日メディアラボベンチャーズ、インキュベイトファンド、スタディーズより総額約5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
PostCoffeeはスペシャルティコーヒー(品質の良いコーヒー)を自宅で気軽に楽しめるサービスだ。
現在はエチオピアやケニア、コロンビアなど世界各国から厳選した10種類のシングルオリジンにオリジナルブレンドを加えた全11種のコーヒー豆を用意。これをアプリ上から手軽に注文できる形で提供する。
各パッケージは約10杯分に相当する150gで一律1280円。ユーザーは注文時に豆のままか挽いたものかを選ぶ。
豆が無くなりそうなタイミングに合わせて「アプリからワンタップ」で注文できるのが特徴。最短で翌日ポストに投函されるので不在時でも心配はない。個別で購入することもできるが1280円からの月額会員になると送料が無料になるほか、登録後に3種のコーヒーを飲み比べられるスターターキットを無料で試せる。
このキットではオリジナルドリッパー、3種のコーヒー豆(各1杯ずつ)、ペーパーフィルターがセットになっているのでマグカップとお湯を用意するだけでOK。2週間のトライアル期間が設けられているから、スペシャリティコーヒーを楽しんでみたい人はここから始めるのもありだろう。
POST COFFEEで代表を務める下村氏は、同社を立ち上げる前に渋谷区富ヶ谷でコーヒースタンドをオープンし、2年半ほどバリスタを兼務していたという珍しい経歴の持ち主だ。
近年日本でもブルーボトルコーヒーの上陸などで「サードウェーブコーヒー」の注目度が増しつつあるが、スペシャリティコーヒーの流通量はまだ限定的。下村氏によると販売チャネルが限られるため、都内でも手に入れにくい状況だという。
「質の高いコーヒーとユーザーの距離を最大限縮めることが目標だ。コーヒーはそもそも種類が多く、生産地や焙煎度合いによっても味が異なり、自分に合ったものを選ぶのも大変。まずは手に入りにくいスペシャリティコーヒーをワンタップで、オンデマンドで注文できる仕組みから始めた。ゆくゆくはユーザーの好みとテイストのデータを基に1人1人に合ったコーヒーを提供できるようにしていく」(下村氏)
3月のサービスローンチから約半年、現在のアプリダウンロード数は数千件。徐々にではあるけれど、コーヒー好きのユーザーを中心に有料会員として継続的にPostCoffeeを活用する人も増えてきた。
下村氏の話ではユーザーからのフィードバックなども踏まえて年内を目処に大型のアップデートを加えた新バージョンをリリースする計画。今回の資金調達もそれに向けた人材採用や環境整備が主な目的だという。
「パーソナライズ」機能で個々に合ったコーヒーライフを提案へ
POST COFFEEは2018年9月の設立。創業者の下村氏はもともと兄弟でデジタルクリエイティブスタジオを立ち上げ、デザイナー兼エンジニアとして16年にわたり同社を経営してきた。
スタートアップにCTOとして参画した経験もあるなどテック業界での経験が豊富な一方で、上述したように2年半ほどコーヒースタンドのバリスタを務めコーヒーの知見もある。
PostCoffeeを作った理由の1つは「実際にローカルコーヒー店を経営する中で、その商圏の狭さを経験したから」。そもそも日本ではあまり広がっていないスペシャリティコーヒーをもっと多くの人が楽しめるように、「場所問わずスマホがあれば簡単に良質なコーヒーを手に入れられる仕組み」を作ることからチャレンジを始めた。
今後PostCoffeeではさまざまなアップデートを行っていく予定だが、キーワードは「コーヒーのパーソナライズ」だ。
ライフスタイルやユーザーの好み、好きな食べ物などの質問に応えることで、コーヒーの淹れ方からコーヒー豆の種類、頻度、量、価格といった様々な要素をパーソナライズした上で提供。飲んだコーヒーのフィードバックを繰り返していけば自宅に届くコーヒーもより最適化されていくという。
「(ライフスタイルや好きなスイーツなど)コーヒーに直接関係ない部分も含めて好みを把握し、個々にあったコーヒーを提供する。ユーザー自身が必ずしも直接豆を選ばなくていいような仕組みを作ることでハードルを下げ、より多くの人にスペシャリティコーヒーを楽しんでもらいたい」(下村氏)
ローンチ時から「AIバリスタ」機能についても言及していたが、まずは第一ステップとしてチャットボットのような形で対話しながらコーヒーのパーソナライズを行う。コーヒー豆の種類も30種ほどに増やす予定で、料金もライトなものを追加していくとのことだ。
並行してWeb版とAndroid版の開発も進めていく方針(現在はiOS版のみ)。コーヒー豆については直接農園から手配したものをユーザーにダイレクトに届ける「D2Cモデルのコーヒーブランド」にも取り組むほか、オフライン店舗や新しい焙煎所の開設、リアルなイベントの実施などにも着手する。
「現在はシェアロースターを使って焙煎しているが、今後自分たちで焙煎機を導入して独自の焙煎場を立ち上げる予定だ。近い将来ユーザーが立ち寄れるオープンな場所を開設したいと考えていて、新しい味を体験したり、コーヒーについての理解を深めたりできるような空間を目指す」(下村氏)