ショッピングモールに出店していない“独立系”のECサイトを集め、ユーザーごとに商品をレコメンドするショッピングSNS「#Cart」がスタートした。
出店するのは、アパレルブランドや百貨店から地方のネットショップまで、大小合わせて約2000店舗。商品を知ってもらうきっかけとなるのは、「公式ユーザー」として参加する100人以上の有名人の存在だ。有名人が商品をピックアップすることで、購買につながる可能性が高まるという。
モデルやアーティストがキュレーターに
公式ユーザーは紗栄子や高垣麗子といった女性モデル、イルマリや大沢伸一といったアーティストなど約100人が参加。各方面でコアなファンを持つ有名人が、キュレーターのような役割で商品を紹介する。
ユーザーは会員登録すると、性別や年齢、閲覧ページ、有名人を含むフォローしたユーザーや店舗に応じて、タイムラインに表示される商品レコメンドの精度が高まる仕組みだ。
例えば、なんとなくイケてるスニーカーを探す場合、好きな有名人がオススメするスニーカーがヒットしやすくなり、それとは反対に、おっさんのユーザーのタイムラインにファンシー雑貨が表示されることはないということだ(ファンシー雑貨が好きなおっさんであれば別だけど)。
商品を購入すると、各ECサイトのポイントと別に、商品券と交換可能な「#Cartポイント」が貯まる。
無名の「あずきパイ」が完売
かつて#Cartは「People & Store」という名称で2014年1月に公開。参加する有名人の知名度もあり、13万ユーザーを獲得した。女性誌「VERY」専属モデル・滝沢眞規子が紹介した青森県のあずきパイが完売するなど、「無名店舗を発掘する流れができた」とサービス運営元のネットコンシェルジェ尼口友厚社長は語る。
公式ユーザーとなる有名人は同社スタッフの人脈で声をかけ、いずれもノーギャラで参加していたが、5月以降は金銭的なメリットも提供する。具体的には、店舗が有名人に商品提供を依頼できる機能を追加し、有名人が商品を紹介した場合に手数料がもらえるようにする。
現時点で#Cartに出店する店舗は初期費用、月額利用料、アフィリエイト料も含めて無料。5月以降は有料プランを用意し、月額費用に応じてネットコンシュルジェに支払うアフィリエイト料率が変わる予定。無料プランは5月以降も引き続き提供する。
独立系ECを束ねて「打倒・楽天」
今や、BASEやSTORES.jpのようなサービスを使えば、専門知識がなくてもECサイトを構築できるようになった。その反面、集客に悩むECサイトは少なくない。集客手段としてはリスティング広告やアフィリエイト広告があるが、「前者は費用が安いが素人には運用が難しい。後者は初期費用が10万円前後で、成果報酬費もかかる」と、尼口氏は気軽に使えるマーケティングツールがなかったと指摘する。
尼口氏が競合と見ているのは楽天だ。「ECサイトにとって楽天の費用が安くないが、選択肢がないので出店している状況。楽天に不満を持つ店舗を束ねることができれば、打倒・楽天も非現実的ではない」。4月27日には、アーキタイプベンチャーズとフューチャーインベストメントを割当先として、総額約2億円の資金調達を実施。今回の資金調達により人材採用を強化し、有名人やECサイトを開拓する。