最近オンラインメディアの記者や編集者と会った際、「ページビュー(PV)の質」という話題になることが少なくない。例えば新聞社だと月間数億PVになるが、ライセンスを取っているのかどうか分からない翻訳記事が並ぶブログメディアだって、2ちゃんねるまとめブログだって、月間で1億前後のPVだったりする。また国内トップクラスのバイラルメディアは、ローンチ数カ月で1500万〜2000万PVにまで成長していると聞く。ネット上にさまざまなコンテンツがあふれる中で、果たして各メディアの1PVというのは同じ性質のものと考えていいのだろうか、という話だ。
東大発スタートアップのpopInでは、そんなPVの質を計測すべく、新たな指標「READ」を4月に発表。現在オンラインメディアへの導入を進めている。
READはオンラインメディアのコンテンツの読了状況を図るための指標だ。導入したメディアの本文領域を自動で解析し、本文領域での滞在時間や、本文のどの位置までを読んだのかという読了率、サイトからの離脱率を計測できるようになる。これによって、読者がその記事を熟読したのか、それともさらっと流し読みたのか、はたまたタイトルと冒頭数行の内容を読んだだけだったのかといったことが分かるのだという。popIn代表の程涛氏は、「バズるタイトル、釣りタイトルが増えている中で、それに合わせた評価基準はない。ウェブが進化するなら評価指標も進化すべき」と語る。READの詳しい説明については、下の動画をご覧頂きたい。
5月末時点でYOMIURI ONLINE、毎日新聞、ダイヤモンド・オンライン、All About、ギズモード・ジャパンなど計75媒体に導入されているというREADだが、今回5月1日~5月31日の期間の計測値を解析したレポートを発表した。
レポートでは75媒体を横断的に調査しているため、媒体ごとの特性は省かれている。だが全体としては、やはり読了率が高い記事の場合は離脱率が低く(読み終えても同じ媒体のほかの記事に遷移する)、サイト外に離脱することが少ないのだそうだ。
僕は程氏に一部の媒体ごとのデータ(媒体名ではなく新聞、CGMといったカテゴリで)も見せてもらったのだけれども、新聞やビジネス系ニュースサイトでは記事を熟読している、つまり本文領域での滞在時間が長く、読了率が高いユーザーが多い一方で、CGMやエンタメ色の強いコンテンツでは、流し読みしてサイトを去るユーザーが多いという傾向が見られた。popInでは今後もREADをブラッシュアップしつつ、レポートを発表していくという。利用は無料で、大手メディアを中心に導入を進める予定だが、問い合わせフォームも用意しており、そこで申し込みを受け付ける。
ではなぜpopInはREADを提供するのか。それは当然彼らのビジネスに繋がっているからだ。popInでは以前からオンラインメディア向けに関連記事や人気記事を表示するエンジンを提供してきた(実はTechCrunch Japanにも導入されている)。現在はこれを「DISCOVER」の名称で運用しており、READのテクノロジーを用いて関連記事の精度を高めるほか、関連記事内と同時にネイティブ広告を配信するという取り組みを行っているのだ。この領域は、米Outbrainが先行しており、最近になって日本でも活動を開始している。また、ヤフーも米Taboolaと組んで「Yahoo!コンテンツディスカバリー」を発表するなどしている。