東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(協創1号ファンド)は8月4日、アドリアカイムに対して3億円の出資を行ったと発表した。同社は、迷走神経を刺激することで心筋梗塞領域を縮小させる世界初・新発想の治療機器の開発を進めている。
東大IPCは、アドリアカイムの技術が日本生まれの世界初新発想コンセプトであること、未解決の治療ニーズ(アンメット メディカル ニーズ。Unmet Medical Needs)に対応するものであることなどの理由からこの度の出資を決定した。今後のアドリアカイムの事業について、東大IPCは積極的に支援する。
アドリアカイムは、オリンパスで医療機器の研究開発に長年携わってきた⼩林正敏CEOや今林浩之CTOが2018年11月に設立した医療機器スタートアップ。国⽴循環器病研究センターとの長年の共同研究の成果を活かし、急性心筋梗塞患者の慢性心不全への移行を軽減するための世界初の迷走神経刺激デバイスの開発を進めている。
急性心筋梗塞患者は、日本国内で10万人、アメリカでは100万人が毎年発症し、大部分の患者さんが救急搬送されて手術を受けているという。近年、カテーテル治療などの治療体制が進歩し、急性心筋梗塞で直接的に命を落とす患者さんは減ったものの、退院後に予後不良となる患者もいるそうだ。
アドリアカイムが開発を進める治療デバイス「ARIS」(開発コード名)は、急性心筋梗塞患者の迷走神経を刺激することで心筋梗塞領域縮小を図るもの。薬剤で実現できない迷走神経の賦活化を電気的刺激で実現し、より高い治療効果を目指しているという。
今回、東京大学大学院新領域創成科学研究科 久田俊明名誉教授(UT-Heart研究所 代表取締役会長)のチームが開発したヒト心臓モデルを用いたシミュレーターの技術を活用。同シミュレーション技術は、従来動物実験に頼っていた電気刺激による神経賦活の現象を予測解析し、同医療機器の開発に大きく貢献した。開発段階の医療機器の検証手法として、非常に有効であり、今後も多方面への活用が期待されるとしている。
東大IPCの協創1号ファンドは、東京大学関連スタートアップの育成促進と、東京大学を取り巻くベンチャーキャピタルの質・量の充実を中心にすえて運用することで、東京大学の周辺に持続可能なイノベーション・エコシステムを構築し、世界のスタートアップ創出拠点のひとつとなることへの寄与を目的としている。
具体的な運用として、今までに6つのベンチャーキャピタルへのLP出資(ファンド オブ ファンズ)と、16社の東京大学関連スタートアップへの直接投資を行い、現在も積極的に東京大学関連スタートアップへの直接投資を行っている。
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