大学共同利用機関法人の核融合科学研究所は、11月5日、日本とドイツのヘリカル方式の装置を使った世界初の比較実験で、核融合のプラズマ封じ込めの際の障害となる乱流の制御に、磁場構造が重要な影響を及ぼすことを明らかにしたと発表した。これは乱流制御に新たな可能性を示すもので、「従来にない磁場構造を持つ革新的核融合炉を目指した研究」に大きく貢献するとのことだ。
この研究は、核融合科学研究所の田中謙治教授、沼波政倫准教授、仲田資季准教授と、ドイツのマックス・プランク・プラズマ物理研究所のフェリックス・ワーマー博士、パブロス・サントポウロス博士らとの国際共同研究によるもの。核融合科学研究所は、ヘリカル方式の核融合を研究する世界最大級の実験装置、大型ヘリカル装置(LHD)を所有し、マックス・プランク・プラズマ物理研究所は、同規模のヘリカル方式の実験装置、ヴェンデルシュタイン7-X(W7-X)を所有している。
核融合は、超高温のプラズマを磁場で閉じ込めることで可能となるが、プラズマは2つの原因により拡散してしまう。ひとつは粒子の衝突、もうひとつが乱流だ。粒子の衝突による拡散は、プラズマを閉じ込める磁場の構造で低減できることがわかっているが、乱流による拡散については、まだわからないことが多く、制御は大変に困難とされていた。
そこで、同規模のヘリカル式実験装置を持つ核融合科学研究所とマックス・プランク・プラズマ物理研究所はそれらを使い、プラズマの体積、密度、温度をほぼ等しく揃え、磁場構造だけが異なるという条件で、世界初の比較実験を行った。それにより、衝突拡散はW7-Xのほうが格段に低く、乱流拡散はLHDのほうが数分の1と低いことがわかった。この結果は、日欧のスーパーコンピューターによる同条件のシミュレーションでも確認された。
これらの実験装置の磁場構造が、それぞれ衝突拡散の低減、乱流拡散の低減に役立っていることがわかり、これらの長所を組み合わせることが「非常に有効」だという。現在、核融合科学研究所とマックス・プランク・プラズマ物理研究所は、LHDとW7-Xを発展させてプラズマの拡散をさらに低減させる磁場構造を、スーパーコンピューターを駆使して探求している。「このような革新的な核融合炉を目指した研究が、今回の成果をもとにさらに進展すると期待されます」と核融合科学研究所では話している。