業界の大物が語る「インターネットのビジネス、次はどう進化するのか?」

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10月4日、5日に福岡県のヒルトン福岡シーホークで開催中された、B Dash Ventures主催のスタートアップイベント「B Dash Camp」。その最初のセッションは「インターネットのビジネス次はどう進化するのか 2018秋編」だった。

登壇者は、ディー・エヌ・エー代表取締役社長兼CEO・守安 功氏、LINE取締役CSMO・舛田 淳氏、gumi代表取締役会長・國光宏尚氏、AnyPay取締役会長・木村新司の4人。モデレーターは、B Dash Ventures代表取締役社長・渡辺洋行氏が務めた。メインテーマとなったのは、モビリティー、VR/AR、ブロックチェーン。 1時間のセッションでさまざまなトピックが飛び交ったが、ここでは各ゲストが発言した内容を人物別にまとめてレポートする。

bdash01.JPGまずモビリティーについて。ディー・エヌ・エーの守安氏が「現在の私の事業領域はモビリティとヘルスケア。特にAIに力を入れており、50人規模のエンジニアが研究を進めている」と言及。自動運転とクルマの所有、ここでどういう役回りを演じられるのかが重要と語った。

「クルマはいわば鉄の塊を動かしているわけで事故のリスクが常にある。将来的には人間が移動手段としてクルマを所有し、運転するものではなくなるのではないか。ロボットのほうが安全なのは目に見えている」と子安氏。個人的には5年ぐらいで自動運転が勝つだろうと考えているとのこと。

「もちろん一気に移り変わるわけではない」とも。「例えば、北米で自動運転を研究しているWaymoは年内に営業運転を始めるとしているが、サービス開始時は走行できる道や停車できる場所が限られるので、当面はバスとタクシーの間のような存在になるのでは。まずは地域限定できちんと仕組みを作ってから、他地域に広げていくのいいのではないか、それには100億や200億が必要になる」と語った。

bdash02.JPGVRについてはgumiの國光氏。いわゆる6DoFと呼ばれるハイエンドのVRゴーグルの販売台数は、一昨年は100万台、去年は500万台と増えている。PS4の8000万台超からしても、かなり伸びていることがわかる。今後の普及に重要な要素は、適正価格のハードとキラーコンテンツ。現在6DoFのゴーグルは20万円ぐらいするが、2019年春には6DoF対応ゴーグルの「Oculus Quest」が399ドルでいよいよ出てくる。これに加えてNintendo Switchにおける「ゼルダの伝説」に相当するVRのキラーコンテンツがくれば一気にくると考えられる。

また、日本ではバーチャルYoutuberも盛り上がってきた。VRゴーグルであればリアルで実現できない表現が可能。スマホ上でバーチャルYoutuberを2Dで見ているユーザーを、VRへ引き込める要素が十分あるとのこと。

VRゴーグルのその先は、やはりARグラス。メガネは古くから人類にすでに受け入れられているデバイスなので、ここに情報を表示できるデバイスは一般ユーザーも装着の違和感が少ない。2020年ごろにはアップルなどがARグラスを出してくると予想されるので、いまのうちにVR上のUI/UXの研究を磨いておけば、ARグラスのUI/UXに転用できる。「ここを獲っていくのは大きい」とのこと。國光氏は、スマホの登場で巨大企業に成長したメルカリやLINEと同様に、ARグラスの登場で急成長する企業も出てくるのではないかと予想した。

國光氏はブロックチェーンの可能性についても触れ、いまはCGM、UGCなどを含むデジタルコンテンツは容易にコピーできて不特定多数にまったく同じものを渡せてしまうが、ここにブロックチェーンの技術を導入すればデジタル作品であっても唯一無の価値が出てくると言及した。

bdash04.JPGLINEの舛田氏は、モバイル決済とブロックチェーンについて語ってくれた。モバイル決済は各プレーヤーが出そろってきたことで、普及する素地が整ってきたとのこと。競合として考えているのは、インドのPaytmとヤフージャパン、ソフトバンクの合弁で誕生したPayPay。そして楽天とのこと。メルカリ(メルペイ)はまだ発表されていないのでなんとも言えないとも。

現在LINEでは、独自開発のプライベートブロックチェーンを利用した「LINEポイント」を国内向けに、「LINK」というコインを海外向けに発行している。親会社の韓国ネイバー社が発行している「NAVERコイン」を含め、LINEペイなどで相互利用が可能になれば利便性がかなり高まる。ちなみにLINEペイは日本よりもタイや台湾のほうが普及しており、特に台湾では納税時の決済手段としてLINEペイを使えるので取扱高が高い。ポイントが付くLINEペイにユーザーが流れているとのこと。

bdash03.JPGAnyPayの木村氏はブロックチェーンについて。いまここに力を入れて開発を進めていき、金(ゴールド)のように信頼性を高めることが重要。絶対に改竄できないところが最大のメリットであり、たとえば未公開株を仮想通貨のトークンのように発行しておけば、コピーすることができないので安全性がかなり高い。日本は流出事件が2件あった影響で世界的には1年半ほど遅れている印象。また、日本では一攫千金のイメージが広がっていることに懸念を示していた。FacebookのID、パスワードの漏洩事件についても「ログインIDがサーバにあること自体が問題。これらをブロックチェーンで管理できれば」と指摘した。

登壇者が4人ということもありバラエティー豊富な意見交換となったが、守安のモビリティーに懸ける強い想い、國光氏のVR/ARへの意気込みとそれに寄せる期待が印象に残った。

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TechCrunch Japan

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