機械学習のデベロッパーツールを開発するExplosionはオープンソースと商用プロダクトを併用

オープンソースの機械学習ライブラリと一連の商用のデベロッパーツールを併用してサービスを提供するExplosionは米国時間9月2日、1億2000万ドル(約131億7000万円)の評価額による600万ドル(約6億6000万円)のシリーズAを発表した。SignalFireはこのラウンドをリードし、同社は投資額は評価額の5%に相当するという。

この投資にともない、SignalFireのOana Olteanu(オアナ・オルテアヌ)氏が取締役会に加わる。なおこのラウンドには、同じ評価額による1200万ドル(約13億2000万円)の追加投資の保証が含まれている。

Explosionの共同創業者でCEOのInes Montani(イネス・モンタニ)氏は、次のように語っている。「基本的にExplosionはソフトウェア企業であり、AIと機械学習と自然言語処理のデベロッパーツールを開発しています。目標はデベロッパーの生産性を上げ、自然言語処理をもっと利用していただき、大量のテキストを理解できるように機械学習のモデルを訓練し、それによって工程の一部を自動化していただくことです」。

同社が発足したのは2016年で、モンタニ氏がベルリンで共同創業者のMatthew Honniba(マシュー・ホニバ)氏に会ったときだ。そのときモンタニ氏はオープンソースの機械学習ライブラリspaCyを書いていた。その後、そのオープンソースのプロジェクトは4000万回以上ダウンロードされた。

2017年、同社は機械学習のモデルのためにデータを生成する商用プロダクトProdigyを加えた。モンタニ氏は次のように語っている。「機械学習はコード、プラス、データであるため、その技術を有効に利用するためには、常にモデルを訓練してカスタムのシステムを作らなければなりません。なぜなら、最も価値があるものは、ユーザーにとって固有の問題(一般性汎用性のない)と、そのビジネスそして、何を見つけたいのかということです。そのため訓練用のデータを作って機械学習のモデルを訓練するという部分には、ほとんど注意を払いません」。

今回資金を調達した最大の理由が、Prodigy Teamsと呼ばれる同社の次のプロダクトだ。モンタニ氏によると「Prodigy Teamsはユーザーに対しホスティングされるサービスで、ユーザー管理とコラボレーションの機能をProdigyに追加します。しかもそれをセキュリティ完備のクラウドで動かすため、Prodigyが好まれている最大の理由、すなわちデータの守秘が損なわれず、いかなるデータもサーバーがそれを見る必要性がありません」。そのためには、データをプライベートクラウドにある顧客のプライベートクラスターに置き、それからパブリックなクラウドサービスにあるProdigy Teamの管理機能を使っていく。

今日では、MicrosoftやBayerなどおよそ500社がProdigyを利用し、また数百万のオープンソースユーザーによる大きなコミュニティもある。Explosionわずか6名の初期の社員たちで、これらのシステムをすべて開発したが、年内には20名に増員したいとのこと。

ダイバーシティに関して、モンタニ氏の意見では雇用に際してこだわり過ぎると、それ自体が問題になる。「何も考えずに結果的にダイバーシティが実現するのはいいけど、義務感に駆られてダイバーシティを気にするようになると、それ自体が問題になる」と彼女はいう。

「現在、自分の会社に20代の白人男性が50名いて、そこにいわゆるダイバーシティのために20代の非白人男性を入れようとすると、なかなかうまくいかずそれ自体が問題になります。しかし私たちの場合、いい人を雇おうとしているだけなので、いい人だけを採用していたら自然にダイバーシティになる。スタートアップの教科書のようなものを気にし始めたら、いろいろなことで制約にぶつかる」。

彼女によると、彼女自身はこれまで、出来合いの教科書のようなものを気にしたことがない。「資金を調達するのも今回が初めてだし、チームは自然に成長した。外部資金を導入するまでは、会社の利益と独立性だけを気にしていた」と彼女は言っている。

しかしお金以上に問題になるのが、モンタニ氏によると、オープンソースに対する投資家の理解だ。会社のあらゆる部分を大きくできるだけの資本を持っているだけでなく、そのビジネスのオープンソースの側面を理解できる投資家を見つける必要がある。「オープンソースはユーザーと顧客と従業員のコミュニティです。彼らは今生きてる人間であり、スタートアップというゲームの『歩(ふ)』ではなく、しかもゲームですらありません。リアルな人間のリアルな営みです」とモンタニ氏はいう。

「彼らは単なる私の手足ではない。だから資本と引き換えに少量の株を売ったからといって、オープンソースは依然として私たちの企業の核であり、妥協できない部分です」とモンタニ氏は言っている。

画像クレジット:Usis/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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