数日前、MozillaのFirefoxエンジニアリング担当副社長、Jonathan Nightingaleは私の取材に対して新しいFirefoxを説明し、「もうこれはブラウザとは呼べないかもしれない」と述べた。
Nightingaleは、「ブラウザというのはすでに語感が古臭い。ユーザーはブラウザで以前ほどウェブサイトをブラウズしない。ブラウザは高度なウェブ・アプリを動作させたりソーシャル・ネットワークにアクセスしたりする手段としてもっぱら使われている」という。つまり開発者はブラウザの利用法の大きな変化に対応して、ブラウザのあるべき姿を考えなおさねばならないということだ。
コードネームはAustralis:タブは角丸に、機能は単純に
Mozillaの未来型ブラウザ計画はAustralisと呼ばれている(Mozillaはプロジェクトのコードネームに星の名前をつけるのが好みのようだ〔タニア・アウストラリスはおおぐま座の連星〕)。このプロジェクトの成果は近くFirefoxのNightly版v.25として公開される。その後、Firefoxの通常のリリース・チャンネルで公開され公開され、最終的には安定版での公開となるはずだ。
ただしNightingaleによればこのバージョンが安定版として公開されるまでにある程度時間がかかるかもしれないという。
冒険をいとわないユーザーならMozillaのあまり知られていなUX部門から開発途上版をダウンロードしてインストールできる(ただしその結果クラッシュするのはもちろん、HDDがずたずたになるなどの事態が起きても自己責任で)。
ではAustralisとは何か? 従来のFirefoxよりGoogle Chromeに似ているというのが第一印象だ。 現在のAustralisのテーマは角を丸めたタブでその下にURL窓、検索窓、各種アイコンと並ぶ。右端は三本の横棒のアイコンの設定オプションだ。
Nightingaleによれば、Australisのコンセプトは「できるかぎり高機能化すると同時に操作をできるかぎり単純化する」ことだ。このため開発チームはユーザーが実際にブラウザをどのように操作しているか詳しく観察した。新デザインは明快で直感的になっているという。たとえば、現在のデザインでは選択されていないタブは枠も表示されず、アイコンだけを残して背景に溶け込んでしまう。Chromeでどんどんタブを開いていくとやがてタブの表示幅が狭くなりすぎてアイコンも見えなくなってしまうが、Australisではタブの最小幅が設定されており、タブの数が表示の限界を超えるとタブ・バーがスクロールできるようにした。
AustralisのUIテーマが安定版に実装されるのは10月以後になるということだが、 Nightingaleは「現在公開されているバージョンもAustralisのデザイン・コンセプトの影響を受けている」と強調した。「読込中止、読込、再読込」がひとつのボタンに統合されたのもその一例だという。
またこうした新デザインはAndroid版Firefoxにも用いられている。このアプリは4000万ダウンロードを記録しているという。念のために付け加えるとMozillaは現在でもiOS版を諦めたわけではない。しかしAppleの現在のApp Storeの約款ではMozillaとしてiOS版をリリースすることはできないのだという。しかしMozillaチームはブラウザ以外の分野でのiOSアプリの開発を考えているようだ。
カスタマイズ
Australisの単にUIデザインの改良だけではない。ルック&フィールを含めたブラウザのカスタマイズの方法も大きく変わる。Mozillaは現在多様なカスタマイズ・ツールを提供しているが、必要なツールが探しにくく、使いやすさも高いとはいえない。MozillaのGavinSharpは私の取材に対して「ここでの目的はユーザーがそれぞれのニーズに合わせて簡単にカスタマズでできるようにすることだ。しかしせっかくのカスタマイズ機能もユーザーが存在に気づかなければ意味がない。われわれはユーザーがFirefoxのほとんどあらゆるパーツを自由に削除、追加、配置できるようにし、またそのカスタマイズ機能を今までよりユーザーの目につきやすいようにすることにした」と語った。
もちろん未来のブラウザを作るにはデザインだけでは足りない。MozillaではユーザーがSocial APIのようなツールをどのように利用しているか詳しく調査している。またパフォーマンスの改善のためにはOdinMonkeyやasm.jsのプロジェクトを実施している。
とはいえ、Australisが公開されたときにユーザーがまっさきに気づくのは新デザインだろう。率直に言ってChromeとの類似を否定するのは難しい。この点をめぐっては間違いなく賛否の論議が巻き起こるに違いない。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)