今週木曜日の夜(現地時間)、初となる民間開発の月面探査機が、これまた民間ロケットによって打ち上げられる。契約を仲立ちしたのも民間企業だ。もし4月11日に予定されている月面への軟着陸に成功すれば、宇宙開発とイスラエルにとって歴史的な日となる。
「Beresheet(意味は起源)」プロジェクトは、もとは2010年にチーム参加が締め切られ、最終的には達成チームなしで終わった、賞金総額3000万ドル(約33億円)の月面探査レース「Google Lunar Xprize」から始まった。昨年に終了した同レースだが、参加チームのいくつかはすでに独自の月面探査計画を表明している。
SpaceILと Israel Aerospace Industries(イスラエル宇宙局:IAI)はミッションにて協力し、探査機にカメラや磁気計、そしてイスラエルからの荷物を積み込んだカプセルを搭載し、月面に設置する。
現時点での計画では、太平洋時間で木曜日の午後5時45分に、ケープカナベラル空軍基地からSpaceXの「ファルコン9」ロケットによって打ち上げられる。打ち上げタイミングは天候や技術的な問題によって変更もありうるが、打ち上げはライブ動画で中継されるはずだ。
そして打ち上げから30分後、ペイロードが分離されコントロールセンターとの交信を開始し、地球を6周しながら月への距離を縮めていく。
これまで探査機を月に軟着陸させた国としては、ロシアや中国、そしてアメリカがあげられる。中国の「嫦娥4号」は初めて、月の「ダークサイド(実際に暗いわけではない)」とよばれる裏側への軟着陸に成功した。また、探査機は現在も稼働中であろう。
過去にはルクセンブルクの宇宙開発企業による探査機「Manfred Memorial」が月のフライバイを行ったが、アメリカや中国、ロシア以外による月への軟着陸は成功していない。Beresheetのプロジェクトが成功すれば、イスラエルの月探査ミッションとしても、そして民間企業としても、はじめての月面軟着陸となる。また、これは民間開発のロケットによる初のミッション成功ともなるはずだ。さらに探査機は月面で最も小さく、また1億ドル(約110億円)という価格も最安だ。
もちろん、月面への着陸は極めて難しい。静止軌道が低軌道に比べてずっと難易度が高いように、月へ突入する軌道はより難しく、軌道を安定させ目標地点へと着陸させることはさらに困難なのだ。なお、アポロ11号以降の宇宙船が1969年からおこなった、月からの離脱と地球への帰還の難易度はこれよりさらに上だ。
なお、今回の打ち上げはシアトルのSpaceflight社が仲立ちをしており、またBeresheetは副ペイロードとなる。主ペイロードは Air Force Research Labの「S5実験衛星」で、Beresheetの分離後に静止軌道へと投入される。
もしBeresheetのミッションが成功すれば、それは民間企業による月面探査のさきがけとなるだろう。Lunar Xprizeの他の参加チームや、NASAなど他の宇宙機関と協力した民間企業が、遠くない将来に月を目指すはずだ。
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(翻訳:塚本直樹 Twitter)