NASAが月面の太陽光が当たる部分に水の存在を確認

NASA(米航空宇宙局)が画期的な発見をした。月面の太陽光にさらされる場所に水が存在することを確認した(NASAリリース)。これまで、太陽光が当たらない月面に氷として水が存在することはわかっていた。次の月へのミッションが、月の南極へのものであるのは、部分的にはそのためだ。月の南極にはこれまで直接太陽光にさらされたことがないクレイターの中に氷が隠れているかもしれないと考えられている。

今回の発見はまったくの驚きではない。というのも、NASAの科学者や研究者は以前、月の太陽光があたる部分に水が存在していた可能性がある兆候を発見していた。しかし今回、NASAの成層圏赤外線天文台(SOFIA)で観測したデータで水の存在を確認できた。SOFIAは月の南半球にあるClavius(クラビウス)クレイターに水の分子があると推測している。

水の存在を証明するのにこんなにも長い時間がかかったことから想像できるかもしれないが、月の水はそれほど多くない。NASAは、1立方メートルに100万分の100〜412を検知することができたと話す。これは標準の12オンス(約355mℓ)ボトルの量に相当する。NASAは、SPFIAが検知できる水の量よりサハラ砂漠の方が100倍多いという。

たとえそうであるにしても、太陽光が当たる月面というどちらかというと厳しいコンディションで水が存在できるという事実は興味深いものであり、さらに研究する価値がある。科学者は水がどのようにしてそこに存在するに至ったのか、実際どのようにして蓄積することができたのか明らかにしたいと考えている。それらを研究し、また科学者は他に水の存在がないか別のクレイターや太陽光が当たるエリアを観察する今後のSOFIAのミッションを通じて、月面での恒久的な駐留を確立する探検者たちによる水の使用の可能性を視野に入れている。

これは間違いなく画期的な発見であり、人間によるさらなる宇宙探検の未来に不可欠なものとなるだろう。そうした長期的な目標には、科学者が研究を行い、ゆくゆくは火星など別の目的地を目指すことができる科学基地を設置することが含まれる。水などその場にあるリソースの活用は目標をより早く、複雑な応急措置を要せずに実現できるかもしれない。水というのは、人間が生き延びるための基本的なものであるばかりでなく、ロケットを打ち上げるための燃料など月から送り出すミッションにとって必要不可欠なリソースでもある。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA

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(翻訳:Mizoguchi

民間初の月面探査機が木曜夜に打ち上げへ

今週木曜日の夜(現地時間)、初となる民間開発の月面探査機が、これまた民間ロケットによって打ち上げられる。契約を仲立ちしたのも民間企業だ。もし4月11日に予定されている月面への軟着陸に成功すれば、宇宙開発とイスラエルにとって歴史的な日となる。

「Beresheet(意味は起源)」プロジェクトは、もとは2010年にチーム参加が締め切られ、最終的には達成チームなしで終わった、賞金総額3000万ドル(約33億円)の月面探査レース「Google Lunar Xprize」から始まった。昨年に終了した同レースだが、参加チームのいくつかはすでに独自の月面探査計画を表明している。

SpaceILと Israel Aerospace Industries(イスラエル宇宙局:IAI)はミッションにて協力し、探査機にカメラや磁気計、そしてイスラエルからの荷物を積み込んだカプセルを搭載し、月面に設置する。

打ち上げ前のBeresheet

 

現時点での計画では、太平洋時間で木曜日の午後5時45分に、ケープカナベラル空軍基地からSpaceXの「ファルコン9」ロケットによって打ち上げられる。打ち上げタイミングは天候や技術的な問題によって変更もありうるが、打ち上げはライブ動画で中継されるはずだ。

そして打ち上げから30分後、ペイロードが分離されコントロールセンターとの交信を開始し、地球を6周しながら月への距離を縮めていく。

これまで探査機を月に軟着陸させた国としては、ロシアや中国、そしてアメリカがあげられる。中国の「嫦娥4号」は初めて、月の「ダークサイド(実際に暗いわけではない)」とよばれる裏側への軟着陸に成功した。また、探査機は現在も稼働中であろう。

過去にはルクセンブルクの宇宙開発企業による探査機「Manfred Memorial」が月のフライバイを行ったが、アメリカや中国、ロシア以外による月への軟着陸は成功していない。Beresheetのプロジェクトが成功すれば、イスラエルの月探査ミッションとしても、そして民間企業としても、はじめての月面軟着陸となる。また、これは民間開発のロケットによる初のミッション成功ともなるはずだ。さらに探査機は月面で最も小さく、また1億ドル(約110億円)という価格も最安だ。

もちろん、月面への着陸は極めて難しい。静止軌道が低軌道に比べてずっと難易度が高いように、月へ突入する軌道はより難しく、軌道を安定させ目標地点へと着陸させることはさらに困難なのだ。なお、アポロ11号以降の宇宙船が1969年からおこなった、月からの離脱と地球への帰還の難易度はこれよりさらに上だ。

なお、今回の打ち上げはシアトルのSpaceflight社が仲立ちをしており、またBeresheetは副ペイロードとなる。主ペイロードは Air Force Research Labの「S5実験衛星」で、Beresheetの分離後に静止軌道へと投入される。

もしBeresheetのミッションが成功すれば、それは民間企業による月面探査のさきがけとなるだろう。Lunar Xprizeの他の参加チームや、NASAなど他の宇宙機関と協力した民間企業が、遠くない将来に月を目指すはずだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAの次世代計画は私たちを月と火星に連れて行く…きっといつかは

NASAは太陽系を探査するための公式計画を要約した報告書を発行した。それはとても楽しく読むことができる ―― もしそれが現実味を帯びているかどうかを気にしないならばだが。月の表面への有人ミッション、月を周回する半永久的な基地、火星のサンプルを持ち帰るミッション…これら全てとそれ以上のものがそこには書かれている…それらが次の10年では実現できないかも知れないとしても。

The National Space Exploration Campaign(国家宇宙探査キャンペーン)は低軌道(LEO:low Earth orbit)や国際宇宙ステーション(ISS)のことは忘れて、次の月へのレースに勝利し、火星への道を描くNASAの包括的プランだ。これは、ある意味では、NASAに太陽系全体への拡大と探査に焦点を当てるよう指示した大統領のSpace Policy Directive-1(宇宙政策指令-1)に応えたものである。これは、幸いなことに、政府が既に長期に渡って追求してきていた良い目標の1つである。

したがって、今後の10から20年の計画は、過去数年に渡って行われていたものと似通っているものに見えるだろう。なにしろこうしたことは、極めて長期間に渡って追求され続ける必要があるからだ。

単純な真実は、たとえ全部が上手く行ったとしても、10年以内に月の表面に人間が降り立つことは、危険であることは言うまでもなく、極めて難しいということだ。私たちは単に「できた」と言うためにそのミッションを行うことはできない。私たちのこれからの月ミッションは、月の周回軌道と、惑星間旅行のための着陸船を活用する長期的な戦略の一部でなければならないのだ。言い換えると、短期的なアポロスタイルの派手な着陸(タッチダウン)に数十億ドルを費やすこともできるし、あるいは数多くの分野で有意義な支配力を発揮するために、長期的なインフラに数十億ドルを投資することもできるということだ。

その目的のために、NASAは野心的だが達成可能な短期的な目標をいくつも抱えていて、そうした仕掛中の目標の向こうに、Lunar Gatewayや月着陸船のような未来のプロジェクトが控えている。結局のところ、もしOrion宇宙船とSpace Launch System(SLS)の計画が遅れる(あるいは期待を上回る)ならば、そうしたシステムを使って、月の軌道上に半永久的な施設を建設し人間を送り込もうとする計画に重大な波及効果が及ぶだろう。

その優先度合いは基本的に3つの計画に沿っている:

1. 商業的取り組みを強化する

NASAは数十年に渡って、例えば国際宇宙ステーション(ISS)への補給任務などの、低軌道(LEO)に向けての打ち上げを行ってきている。いつでも行うことができる準備は整っており、商業的取り組みが引き継ぐ準備も整っている。

「これからの数年のうちに、LEO経済における、NASAの歴史的かつ中心的な役割に取って代わる、幅広い顧客基盤が出現することが非常に重要だ」と報告書には記されている。これからの数年の目標は、有効性や競争力などの研究を行いながら、基本的には資金調達と契約を指揮することである。

この動きに依存する形ではあるが、米国は2025年までにISSに対する直接的な資金注入を中止し、その代わりに商業的プロバイダーに依存できるようにする可能性がある。これは私たちがISSを完全に見放すということを意味するわけではない ―― NASAがただ消耗品と宇宙飛行士の供給をやめるというだけのことだ。

実際には、潜在的にはISSを完全に置き換えることを目指した新しい商用LEO開発プログラムに資金を提供するために、1億5000万ドルが確保されている ―― 少なくともその一部がそのために執行されている。それはほぼ同じ規模である必要はないが、私たちのものであると呼べる軌道上プラットフォームが1機ないし2機あることは良いことだろう。

より一般的な観点から見れば、LEO事業から撤退することで、より野心的なプロジェクトに向かうための巨額の資金とリソースがNASAに与えられることになる。

2. 月を攻略する

月は計画された太陽系探査計画のための、すばらしい足場となるエリアだ。そこは地獄のように環境が厳しい。つまりそこでは火星のような生活環境や宇宙線被曝などのテストを行うことができるのだ。月を覆う地表の下には大量の有用なミネラルがある筈で、おそらくは利用可能な水さえも見つかる筈だ。このことで基地建設が大いに単純化されるだろう。

残念ながら、人類が最後に月へ足を踏み入れたのは数十年前であり、ロボット着陸船による帰還さえも、数えるほどしか行われて来なかった。だから私たちはそれを正しい方向へ向かわせようとしているのだ。

2019年に始まる商業的な月面着陸船とローバーの計画もある。すなわち着陸ではなく、開発が始まるということだ。これらの努力と成功に基づいて、さらに多くのミッションが私たちの月面に対する基礎知識を向上させるために開始または遂行される予定だ。こうした基礎知識は、ドリルや掘削などへの応用という観点からは、まだほとんど何も知られていないのだ。

一方、Orion宇宙船とSLSは、2020年に初めて軌道上のテストが行われる予定であり、もし全てが順調に進んだならば、数年のうちに宇宙飛行士たち(とおそらくは少量の貨物)を月の周回軌道の上に送り込むことができるだろう。それが証明された後、Orionの変種である貨物宇宙船が、一度に10トンのペイロードを軌道に乗せることができるようになるだろう。

これらは皆、月の周回軌道に乗る宇宙ステーションLunar Gatewayを投入するための前準備に相当するものである。Lunar GatewayはNASAの宇宙飛行士たちが搭乗し、深宇宙へのテストベッドならびに実験室として利用されることになる。彼らは、来年までに体積、質量、材料、技術の基礎を確定しようとしており、2022年までには月の軌道上に最初のコンポーネントを乗せたいと考えている。

3. 皆に、私たちが既に火星にいることを思い出させる

NASAは科学者で溢れている。そして彼らに将来の火星ミッションについて質問したならば、彼らは既に取り組んでいる多くの火星ミッションを激しく指さしながら、熱い言葉を語り始めることだろう。驚くようなことではないが、政府のロードマップは、はるかな未来ではなく比較的近い未来に焦点を当てている。ここでの事実は、火星はすでに優先課題であり、すでに重要なミッションが計画されているが、有人ミッションや基地設置に関しては、何を語っても時期尚早で無責任なものになるということだ。

Insightはすでにルートに乗っており11月には着陸する予定である。またMars 2020 Roverは来年の夏に打上げ予定である。両者は将来のミッションを計画する上で、重要で興味深い沢山の結果を生み出してくれるだろう。Mars 2020は、数年後に計画されている別のミッションで持ち帰るためのサンプルを収集する予定だ。火星の岩石でいっぱいの貨物船で、何ができるか想像できるだろうか?遠くにチームを送り出す前に、それらの試料をまず実験室に送り込んで分析をしたいと思うのは当然だ。

NASAにとっては2024年が、おそらく2030年代の火星有人ミッションについて決定を下すことを約束しているもっとも早い時期である。その段階でも決定されるのはおそらく軌道周回を行うミッションだろう。当然のことながら、そのミッションから得られる信じられないほど貴重な観測と学んだ教訓に基いて、新しいミッションが計画されることだろう。おそらく2030年代の終わりには火星に人間の足跡を残せるのではないだろうか。

それは少々残念だろうか?まあ、商業区間で物事が進行する速さを考えると、それ以前にプライベートな火星ミッションを目にする可能性は高い。しかし、NASAはある種の義務を負っている。それは科学機関であり、納税者からの資金提供を受けている以上、民間企業が選択しないようなレベルまでその仕事を正当化しテストする必要があるのだ。

この報告書は約束されている内容は重いものの、実際の施策と厳密な日程に関しては扱いが軽い。すなわち多くのゴールがまだ遠く「2024年にはっきりする」以上のことは自信をもって明らかにすることができないと思われる。宇宙に関する急速な進歩が見られるこの時代に、そうした遠く漠然としたゴールを持つことは、少々不満かもしれないが、それがこのビジネスの性質というものなのだ。

一方、NASAや業界全体を再編している数多くの商用宇宙産業たちによる、エキサイティングな開発のネタが枯渇する心配はない。もしNASAの慎重なアプローチが気に入らないのなら、宇宙へと自分のミッションで乗り出すことができる ―― 本当に。そう考えるのはあなた1人ではない。

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(翻訳:sako)

宇宙から定点観測、NASAが地球の1年間を映す動画を公開

epic-storms-pacific-ocean1

去年の今頃、NASAはDSCOVR衛星に搭載されるEPICカメラで撮影した画像を初めて公表した。そのカメラは、それ以降も地球よりおよそ100万マイル離れたLagrange Point 1と呼ばれる場所から撮影を続けていた。

3000枚以上の画像をまとめ、NASAは太陽が照らす地球の1年間の様子が分かる動画を制作した。

EPICは2時間毎に少なくとも1セット分の画像を撮影する。地球を散発的にしか撮影していないが、それでもEPICの記録は雲の動きや空に駆け巡る大きな天候パターンを明らかにする。1セットの画像では10の異なる波長を記録している。赤、緑、青の波長を組み合わせることで動画で見える地球の色を再現している。

たった1年の短い期間だが、EPICはすでにいくつか興味深い天体イベントを記録した。

皆既日食

Series of EPIC images showing the moon’s shadow move across the Earth during a total solar eclipse / Images courtesy of NASA/NOA

EPICの画像から、皆既日食の過程で月の影が地上を移動している様子が分かる:NASA/NOAの画像

3月、EPICは皆既日食で地球の上を月の影が移動している様子を捉えた。地表で月の移動経路に当たる場所にいた人たちは、皆既日食を見ることができた。

皆既日食の間、月は地球と太陽の間を通過する。地上で空を見上げると、短い間太陽が暗い丸い影に変わって日食を見ることができる。

月の移動

Series of EPIC images showing the lunar transit that took place in July, 2015 / Images courtesy of NASA/NOAA

2015年7月にEPICが捉えた月の移動の様子:NASA/NOAAの画像

DSCOVRの特異な地点からは、毎年1回か2回、月が移動している様子を見ることができる。

DSCOVRは常に地球と太陽の間に位置していて、月は地球の周りを回っているのだから、DSCOVRからは常に月が見えるだろうと感覚的に思うかもしれない。しかし、EPICが捉えられる範囲は狭いこと、地球と月は相当離れていること、さらに月の軌道は5度ほど傾いていることから、月はEPICの撮影範囲からは大抵の場合外れているのだ。

Earth/Moon to scale / Screenshot from BuzzFeed video “209 Seconds That Will Make You Question Your Entire Existence”

地球から月までの距離を表した画像:BuzzFeedの動画「209 Seconds That Will Make You Question Your Entire Existence」のスクリーンショット

最初の月の移動が目撃されたのは2015年7月16日で、2回目の写り込み は今年の7月4日に起きた。

Series of EPIC images showing the second lunar transit that took place July, 2016 / Images courtesy of NASA/NOAA

2016年7月、2回目の月の移動が確認されたEPICの画像:NASA/NOAAの画像

天候と北極、南極

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  2. epic-smoke-from-forest-fires.png

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皆既日食と月の移動に加え、EPICは太平洋を進む3つの大型ストーム(最初の画像)、東南アジアで発生した山火事(2枚目の写真)、そして北極、南極の様子(3つ目と4つ目の写真)も捉えている。

EPICが1年の間で北極と南極のどちらの様子も捉えられるのは、1年に季節があるのと同じ理由で、地球が傾いているからだ。

北極がEPICの方に傾いている時、太陽の方に傾いていることを意味するため、北半球は夏であることを示す。同様に南極がEPICの方に傾いている時、南半球は夏だ。

EPIC Science 観測装置

EPICはアメリカ海洋大気庁が2015年2月にローンチしたDSCOVR衛星に搭載されているEarth Scienceのための観測装置だ。この衛星は常に太陽と地球の間にある特別な重力均衡地点「Lagrange Point 1」と呼ばれる場所に位置する。地球と太陽の間にDSCOVRは常に「駐車」しているため、継続的に太陽を向いている地球(太陽が照らす地球)を観測することができる。

DSCOVR location in relation to the Earth and sun / Image courtesy of NOAA

地球と太陽とDSCOVRの位置:NOAAの画像

DSCOVRの観測地点から、科学者は1年を通しての雲の範囲や天候パターンを研究することができる。EPICの光学画像からオゾンやエーロゾルの量、雲の高さや移り変わり、植物の生息地域、火山のあるホットスポット地域、地表に降り注ぐ紫外線量などを計測することが可能になる。

EPICはこれまでになかった地球の定常的な観察画像を提供している。DSCOVRのミッションは5年がかりのもので、私たちは少なくとも次の数年間、EPICが撮影する太陽が照らす地球の画像を見ることができるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website