今日(米国時間9/21)TechCrunch Disrupt SF Battlefieldに登場したAgrilystは、温室に備え付けたセンサやそのほかのデータを利用して、温室栽培農家の農業を効率化しようとする。
AgrilystのCEOで協同ファウンダのAllison Kopfによると、ニューヨークの都市農家BrightFarmsで働いているときに、このサービスを着想した。この農家にはVCも投資していた。物理学を専攻した彼女は最初、農業の仕事をするつもりはなかったが、“改良の余地が大きく急成長産業である”ところから農業に惹かれた。
担当した仕事にはデータの取り扱いも含まれていたが、彼女が不満を感じたのは、定量的データが乏しいことと、複数のツールから集めたさまざまなデータを総合的に分析するツールがないことだった。
Kopfは、のちに同社のCTOになるJason CampとともにAgrilystを創り、今年の初めごろに、ニューヨーク市の省エネ環境保全振興アクセラレータNYC Acreに加わった。
屋外農家と違って温室栽培農家は、作物に当たる光の量や空気中の二酸化炭素の量など、作物の成長過程の環境を細かくコントロールできる。なお、二酸化炭素(CO2)は温室効果ガスであるだけでなく、光合成を促進するための素材として温室農家自身が利用している。またビルの中など屋内で行われている温室栽培の多くは、水耕栽培システムを使って土を使わない農業をするため、コントロールする要素がさらに多い。
今では多くの温室に、CO2、光量、湿度などを計るセンサがあり(それにもちろん地温、気温)、農家がチェックするデータの量はかなり多いが、測定のためのハードウェアは進化が遅れている。Kopfによると、農家は毎日大量のデータにアクセスしているが、ハードウェアは少数の古い企業に支配されていて、彼らはイノベーションに関心がない。たとえばセンサはすべて物理的に配線されているので、システムの拡張がきわめて困難だ。
また、収量の測定は多くの場合手作業で行われている。値をノートに手書きで書く。そのため、センサからのデータと統合して分析されることはない。センサデータの変化と収量データをリアルタイムで相関してみることができないから、問題の早期発見もできない。問題は、それが実際に起きてからしか分からない。
Agrilystのプラットホームは、何よりもまずデータの統合化を目指す。ハードウェアの種類などにはこだわらないし、APIのない古いシステムでも、データをExcelにエクスポートできるならそれを利用する。Agrilystのメインのユーザインタフェイスであるダッシュボードが、それら統合したデータを総合的に分析した結果を表示し、収穫のスケジュールを示唆する。将来的には、収量予想も提供したい。
温室栽培農家は、CO2のレベルのほかに、作物に当たる光の量も比較的容易にコントロールできる。これまでのシステムは一定の時間に照明をonにし、offにするだけだが、Kopfは電力の安い時間帯に作物に光を当てるシステムを考えている。“植物はエネルギーをいつ得るかを気にしない”、とKopfは言う。夜中の電気代が安ければ、主に夜中に電気による光を当てればよい。
同社は今、6軒の温室栽培農家の協力を得てベータテストを行っている。本番展開時の料金は、月額1エーカーあたり1000ドルを予定している。
同社の長期的な構想としては、温室用のセンサのハードウェアシステムも、同社のサービス向けに最適化されたカスタム製品を提供していきたい。
Kopfによると、このシステムのマリファナ栽培への応用について、尋ねられることが多い。マリファナ栽培は基本的に同社の想定顧客ではないが、今後はひとつのユースケースとしてありえるかもしれない、と彼女は言う。しかし当面同社は、コロラド州の屋内マリファナ農家ではなく、東海岸のレタスやトマトを中心作物とする大規模温室栽培農家を対象にしていく。