無印良品やFrancfrancも採用、インテリア試着アプリ「リビングスタイル」が2億円調達

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店頭で「インテリアの試着」

インテリア選びの失敗でありがちなのは、「部屋のサイズに合わない」「他の家具と相性が合わない」のどちらかだろう。こうした問題を解消すべく、3Dシミュレーターを使って接客する家具販売店が増えてきた。

タブレットやスマホを使って来店者の部屋の間取りを作成し、店頭で売っている家具を配置する。いわば「インテリアの試着」を体験してもらうことで、意思決定までの期間短縮や購買単価の向上につながるメリットがある。

無印良品が接客で利用するiPadアプリ。店頭で販売する商品でシミュレーションできる

無印良品が接客で利用するiPadアプリ。店頭で販売する商品でシミュレーションできる

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20ブランド、30万点を3D化

こうした3Dシミュレーターを家具販売店に提供するのが、2007年10月設立のリビングスタイルである。無印良品やFrancfranc、島忠など20ブランド、30万点の商品を3Dデータ化。商品を配置するシステムとあわせて提供する。

家具販売店の多くは、カタログ用の写真は撮影しても、3D化を前提とした写真は持っていない。リビングスタイルは各社の商品を1点1点、あらゆる角度から撮影し、フィリピンの協力会社を通じて3D化している。

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生地サンプルをスキャンすることで生地感を再現している

3D化に必要な写真は想像以上に多い。例えば、イスであれば正面、横、上、裏側、アーム部分、足の部分まで、多ければ30枚近くの写真を撮影することもある。生地のサンプルをスキャンすることで、生地感も再現している。

家具メーカーはシーズンごとに新商品を出したり、その反対に販売終了商品も出てくる。こうした商品の入れ替えにも対応し、店頭では販売中の商品で3D接客するためのデータベースを構築している。

「業界シェアは9割」

実際に、3Dシミュレーターを導入すると、どれだけ売り上げに貢献するのだろうか。リビングスタイルの井上俊宏社長によれば、導入企業の1社は売上高6億5000万円のうち、10%は3D経由で、購入者は約5000人に上るのだという。

「消費者は家具購入までに店舗と自宅を何度か往復し、部屋のサイズや床、壁の色、手持ちの家具の色などを確認する。これらを3Dシミュレーターに落としこむと確認作業が不要になるので、購入につながりやすい。」

リビングスタイルの井上俊宏社長

リビングスタイルの井上俊宏社長

店頭で3Dシミュレーターを使って接客する家具メーカーの9割は、リビングスタイルを選んでいると井上氏。「将来的に3Dデータを作り直す金額や、店頭スタッフに3Dシミュレーターの使い方を説明する手間を考えると、他社への乗り換えリスクも少ない」と強気だ。

リビングスタイルは3Dデータ制作費用、システム利用のための初期構築費と月額ライセンス費用が収益源となる。3Dデータは商品1点につき約1万円、月額ライセンス費は対応端末に応じて40〜50万円。

自宅で家具を置けるARアプリ強化

7月12日には、三井不動産のコーポレートベンチャーキャピタルファンド(CVC)とアコード・ベンチャーズの2社を引受先として、シリーズAとなる第三者割当増資を実施。調達は9月まで継続し、総額2億円になる見込み。この資金をもとに自宅で家具の3Dデータを仮想的に配置するARアプリ「RoomCo(ルムコ)」の開発を強化する。(App StoreGoogle Play

ルムコは、スマホのカメラ画面に映し出された空間に、家具の3Dデータを実寸で配置できるのが特徴。リリース前のアプリを見せてもらったが、タップ操作で家具の向きや色を変えられるので、自分の部屋にマッチするかがイメージしやすそう。

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開発中のARアプリ

似たアプリとしては、イケアの「IKEAカタログ」を思い浮かべるTechCrunch読者もいるかもしれないが、大きな違いはブランド横断で家具を選べる点だ。すでに3D化した家具メーカーの商品を配置でき、気に入った商品は各社のECサイトで買えるようにする。

家具以外にも、観葉植物や家電を扱うメーカーからの引き合いもある。今後はアプリ経由の商品の売り上げや店舗への送客に応じて、手数料を取るアフィリエイトモデルで収益化を検討する。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。