物議を醸したUberの元幹部が約260億円のSPACの計画を米証券取引委員会に登録

現在SPAC、つまり特別目的買収会社が大流行しており、SPACを立ち上げようとする人があらゆる場所から現れている。

最近の参入者の中には、Uber(ウーバー)の元CEOのTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏の副官で元幹部のEmil Michael(エミル・マイケル)氏もいる。おそらくこの人物はシリコンバレーウォッチャーの関心を引くと思われる。マイケル氏は10月2日、ブランクチェック(白紙の小切手)会社のIPOで2億5000万ドル(約260億円)を調達し、テクノロジーセクターの企業を幅広く買収する計画をSEC(証券取引委員会)に登録した(SECリリース)。

ニュースサイトのIPO Edgeは同日、SPACがすでに動きを始めた可能性があると報じた(IPOリリース)。

登録書類には、少々いわく付きの面々が特別アドバイザーとして記載されている。Uber初期の投資家で同社のアドバイザーも務めたShervin Pishevar(シャービン・ピシェバー)氏は、性的に不適切な行為により複数の女性から告発(Bloomberg記事)された後に以前勤めたベンチャーキャピタルを辞めた。Alphabet(アルファベット)の元エグゼクティブチェアマン、そしてかつてのプレイボーイのEric Schmidt(エリック・シュミット)氏(dailymai記事)。Ascend Communications(アセンド・コミュニケーションズ)の創業者であり投資家でもあるBetsy Atkins(ベッツィー・アトキンス)氏は数多くの取締役会に名を連ね、昨年それについて本を書いた(Amazonサイト)。現在はさまざまな役職につきながら、Volvo(ボルボ)、Wynn Resorts(ウィンリゾート)、Oyo Hotels(オヨホテルズ)の取締役会の一員だ。

マイケル氏は、Tellme Networks(テルミーネットワークス)のフィールドオペレーション担当上級副社長を務めた後、スタートアップのKloutのCOOに就いた。その後Uberに移り、事業担当上級副社長を4年近く務めた。

マイケル氏はUberで名を上げたが、ひんしゅくも買った。会社に批判的なジャーナリストを黙らせるため、彼らのネガティブ情報を探す会社を雇うと公にコメントしたのだ。その後、カラニック氏を含む他のUber幹部と一緒にソウルの「エスコートバー」に行ったと報じられた。 実際、同氏が2017年に会社を辞めたとき、Uberは同氏自身の意志で辞めたかどうかについて明言しなかった。

伝えられるところによると、Uberでの行状にもかかわらず、あるいはおそらくまさにそのために、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に選出された後、マイケル氏の運輸長官への就任が検討された。同氏は現在、SPACを利用して未公開企業を公開させてテクノロジー業界へ戻ろうとしている。

確かに数は少ないが、SPACを利用する傾向はハイテク企業に多く見られるようになった。問題を抱えたNikola(ニコラ)などの電気自動車(EV)メーカーや、8月にSPACとの逆さ合併で公開する計画を明らかにしたEVトラックメーカーのHyliion(ハイリオン)などだ。ちなみにNikolaはすでに上場し、Hyliionのディールは第4四半期に完了する予定だ。

産業界の他のセクターの企業も続こうとしている。ちょうど10月2日、若い男性と女性を対象とした健康商品とサービスを提供するD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業であるHims(ヒムズ)は、Oaktree Capital Management(オークツリー・キャピタル・マネジメント)がスポンサーを務めるSPACとの合併により公開すると明らかにした。

9月、住宅売買プラットフォームのOpendoor(オープンドア)は、Social Capital Hedosophia Holdings Corp II(ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィサ・ホールディングス・コープII)との逆さ合併により公開することに合意した。Social Capitalは投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が立ち上げに成功した多数のSPACの1つだ。

そして8月下旬、マサチューセッツ州バーリントンを拠点とする3D金属印刷システムメーカーであるDesktop Metal(デスクトップメタル)が、通信分野のベテラン投資家Leo Hindery(レオ・ヒンダリー)氏により昨年設立されたTrine Acquisition Corp(トライン・アクイジション・コープ)というSPACとの逆さ合併によって公開することに合意した。

マイケル氏は、SPACに関心を寄せ始めている人々に比べM&Aの経験が少し豊富だ。例えば2016年に、Uberの中国事業をライバルのDidi Chuxing(滴滴出行)に株式を対価として売却することに関与した。

現在、データサイト「SPACInsider」を運営する元インベストメントバンカーのKristi Marvin(クリスティ・マービン)氏によると、同氏が話をしたり聞いたりする人の中で、SPACの立ち上げに関心のある人の範囲が非常に広がった。また、そうした人々のすべてが投資ビークルを管理する能力があるわけではないともいう。

「もし『5億ドル(約530億円)以上の会社を買収したことはありますか。対象となる業種でのオペレーションの経験はありますか。報告に必要とされる項目が何か理解していますか』と聞いてみれば」と彼女は言う。「よくある答えは『ノー』です」。

カテゴリー:VC・エンジェル
タグ:特別目的買収会社、Uber

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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