シード投資家は、その名の通り、世界を変える力を持っているスタートアップやテクノロジーに誰よりも早く投資している。そのため、2000年代前半のソーシャルメディアや、ここ数年でいえば自動運転車のように、彼らの投資が集まる業界は将来的に爆発的な成長を遂げる可能性が高い。
これを考慮に入れ、この記事では現在シード投資家の間で話題になっている業界やテクノロジーのカテゴリーについて紹介したい。分析にあたってはCrunchbaseのデータを使用し、前年同期比で投資額や投資案件数に著しい増加が見られた業界をピックアップしている。以下が今後注目の業界だ。
自動車:自動車業界でのディスラプションに関する話は、UberやTeslaといった有名企業や、レイトステージ企業の資金調達・買収などを中心に語られることが多い。しかし、実は設立されたばかりの企業の間でもさまざまなことが起きている。今年は、推定で57社が約5500万ドルをシード投資家やエンジェル投資家などから調達しており、2015年の3200万ドルから増加した。自動運転技術のようなテック企業らしい事業を運営している企業も少数存在するが、多くは既存のビジネスモデルに変革を起こそうと、車の売買やシェア、レンタル、駐車、修理関連の新しいサービスを提供している。
AR・VR(拡張現実、仮想現実):シード投資家は、必ずしもたくさんの数のAR・VR企業に投資をしているというわけではない。しかし、ひとつひとつの企業には多額の資金を投じている。これが、今年の投資関連数字からAR・VR業界についてわかることだ。昨年は39社が2600万ドルを調達していた一方、今年は42社が5200万ドルをシード・エンジェルラウンドで調達した。
機械学習:機械学習のサービスを提供しているシードスタートアップへの投資額は昨年急増し、今年もその勢いを保っている。2016年は、これまでに90社が1億2500万ドルを調達したが、2015年の調達額は年間で80社、8200万ドルだった(これでも2014年の調達額合計から2倍以上増えている)。最近投資を受けた企業は、スマート幼児モニターや給与最大化ソフト、さらには”牛用のFitbit”など、数々の面白いプロジェクトに取り組んでいる。
食品・飲料:どうやらシード投資家は、去年にも増して食品・飲料スタートアップに興味を持っているようで、今年は145件以上の投資ラウンドに合計1億2500万ドルが集まった。なお、去年のデータは企業数が155社、調達額が8900万ドルだった。豪華な食事を現地市場で提供するための新しいビジネスモデルやスペシャリティコーヒー専門店、代替タンパク源の開発、食料品やおやつを扱うオンラインショップなどが、この業界で特に注目の分野だ。
農業:種をまいて収穫を待つ、というつまらない冗談を言うこともできるが、農業スタートアップの状況は数字を見れば明らかだ。シード・エンジェル投資家は、今年に入ってからこれまでに、3300万ドルを農業スタートアップに投じており、その額は2015年の合計投資額1800万ドルから倍近く増加した。投資を受けた企業の数を見ても、去年の18社から今年は25社に増えた。人気の分野としては、害虫駆除や病原体検出、収穫物モニタリング技術などが挙げられる。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)