最近、スタートアップと話すときに聞くのが「Airbnbを(ときにはUberも)を徹底的に研究した」という言葉だ。特に聞くのはCtoCの領域だろうか。フリマ、旅行・アクティビティをはじめとしてあらゆるところでそういった声を聞く。
その中でもっとしっくりきたのが、4月28日にオープンしたスペースマーケットの「スペースマーケット」ではないだろうか。このサービスは、いわば“BtoB向けのAirbnb”だ。企業の持つ遊休スペースや利用時間外のスペースを、会議や株主総会、研修、イベントなど向けに貸し出すためのマーケットプレイスとなる。
当初利用できるのは、都内を中心にした100スペースほど。提供されるスペースは貸し会議室やオフィススペースにとどまらない、青山迎賓館(結婚式場)、ユナイテッド・シネマ豊洲(映画館)、門間箪笥店(古民家)、正蓮寺(お寺)、オバケン(お化け屋敷)、Coca-Cola Park(野球場)など、ユニークスペースが並ぶ。なんと現在は「お城」などもそのラインアップに入れるべく営業活動中だそうだ。
価格はスペースの性質にもよるが、「ホテルなどで会議をすると、平均で20万円程度かかるという資料があったがそれより安価になる」(スペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏)とのことだ。 実際僕がサイトを見たところ、VOYAGE GROUPのオフィス入り口にあるバースペース「AJITO」やフォトクリエイトセミナールームが利用無料で提供されているのにはじまり、1時間数千円の会議スペース、1日利用45万円の「代官山TSUTAYA」、さらには詳細は問い合わせとなっているスペースまでバラエティに富んでいる。なお、利用は最低3時間(スペースによっては1日)からになるという。
当初は、会場の性質や稼働率、運用をどこまでサポートするかなどの条件によって、20〜50%の手数料を取る。今後は広告でのマネタイズなども検討する。年内1000スペース、3年後5000スペースまでの拡大を狙う。また今後はスペース管理やセキュリティ、イベントへのケータリングなど、パートナーと組んでの派生事業も検討する。
“披露宴会場の課題”が起業のきっかけに
代表の重松氏は、NTT東日本に新卒で入社した後、同社の同期でフォトクリエイト代表取締役社長の白砂晃氏に誘われて同社へ。こそで新規事業のほか、広報、人事を担当。新規事業で立ち上げたウェディング事業は、全国で年間約3万組の結婚披露宴(日本全体では25万組程度らしい)で導入されるに至ったという。
実はここに、スペースマーケット創業のきっかけがある。重松氏はウェディング事業を通じて知ったそうだが、披露宴会場は優秀なスタッフがいるものの、披露宴がない場合、特に平日などは遊休スペースとなる。だが本業とは異なる分野で営業をかけ、スペースの利用を促すことは難しい。
また一方で、フォトクリエイトは各種イベントの写真を撮影し、オンラインで販売する事業を展開していたため、スペースの情報にも詳しく、同時にイベントなどで利用するスペース探しに広告代理店などが苦労している様をずっと見てきた。起業自体は以前から考えていたということだが、この2つの点から重松氏はスペースマーケットの企画を始めたのだという。余談だが同氏の妻はサイバーエージェント・ベンチャーズのキャピタリストとして活躍する佐藤真紀子氏。家庭内の会話で事業計画をブラッシュアップしていったそうだ。
「最初はオフィスの『間借り』のマッチングを考えたが、それではマーケットが小さい。Airbnbから発想したが、受け入れられるのは大きいハコではないかと考えた。イベントだけでなく、株主総会や採用説明会などでイベントスペースは求められている。需要が顕在化しているビジネス領域からまずはやっていこうとなった」(重松氏)。海外でも、「Liqudspace」「eventup」といった、スペースを貸し出すマーケットプレイスには注目が集まっている。また国内でも、サムライインキュベートが投資する「軒先.com」などがある。