メッセンジャーサービスというと、まず「LINE」や「Facebook Messenger」あたりを思い浮かべる人は多いんじゃないだろうか。もちろん他にも「Snapchat」だって「WeChat」だって「カカオトーク」だってあるし、最近ではクローズドSNSとしてスタートした「Path」もメッセンジャーアプリ「Path Talk」をリリースしており、果たしてどのサービスで誰とコミュニケーションを取ればいいのか迷ってしまう。そんな中で今度は画像SNSの「Pinterest」が「メッセージ機能」をグローバルで同時に開始した。スマートフォンアプリとウェブのどちらからでも利用できる。またメッセンジャーが1つ増えるのか?とも思ったのだけれど、この機能は「友人関係ありき」の既存のサービスとは異なるのだとPinterest共同創業者でCCO(チーフクリエイティブオフィサー)のEvan Sharp氏は語る。
国内ユーザーは半年で1.8倍に
まずPinterestについて改めて紹介しておくと、このサービスはお気に入りの画像をPin(ピン:ブックマーク)して、(コルクボードに写真をピンで留めるところから名付けられた)ボードと呼ぶスペースに保存できるサービスだ。ボード上にピンされた画像は、グリッドと呼ぶ、画面一面に画像が並ぶインターフェースで閲覧できる。Facebookアカウントでのログインが可能なので友人のボードをフォローすることもできるが、ボードをみて、同じような趣味趣向を持つユーザーをフォローしていって、ソーシャルグラフでなくインタレストグラフを作ることに主眼を置いている。
検索エンジンが「検索(Search)」によって「特定の答え(例えば東京とサンフランシスコの距離、といった1つの正解があるもの)」を提供するのであれば、Pinterestは1つの正解ではなく、様々な物事との出会いを通じていくつもの可能性を提供する「発見(Discovery)」のためのツールだそうだ。
2010年にサービスを開始しており、2012年には楽天が同社に出資。その後日本法人のピンタレスト・ジャパンを設立し、2013年11月には日本語版のサービスが始まった。日本法人代表取締役社長の定国直樹氏によると、日本語版開始から半年弱でユーザー数は1.8倍になっているそうだ。ユーザー数自体は非公開とのことだが、グローバルではこれまで7億5000万以上のボードに300億以上のピンが登録されている。また、トラフィックの75%はスマートフォンおよびタブレットによるものだという。米国の状況をお伝えすると、2014年5月に2億ドルという大型の資金調達を実施。現在は検索連動型の広告の導入も一部の企業限定で試験的に開始している。ちなみに日本のマネタイズについては現在具体的なスケジュールはなく、ここ1〜2年でまずユーザー拡大を進める。
新機能は「コンテンツありきであって、友人ありきではない」
今回導入されたメッセージ機能は、2013年5月に導入された「友人にPinを紹介する」という機能を発展させたもので、10人以内のグループを作成して、メッセージを送受信したり、自分のPinやPinterest上での検索結果を共有したりできる。この機能によって、ユーザー間で「(Pinterest上での)発見」を共有したり、休暇の計画やリフォームのプランを相談するといった使い方ができるとPinterestは説明する。
確かに、「この機能のために友人とPinterestを利用する」というものではなくて、「普段からPinterest上にアイデアや好みのアイテムをPinしているユーザーにとって非常に価値がある」というものだ。Pinretestユーザーであれば、LINEやFacebook Messengerで逐一お気に入りのアイテムのURLを貼り付けて会話するよりはるかに効率よく情報を共有できる。これが冒頭でSharp氏が語っていた「友人関係ありき」のメッセンジャーとは異なる点だという。
繰り返しになるが、友人ではなくPinterestで同じプロジェクトを共有するユーザー同士のコミュニケーションでこそ最大の価値を見いだすことができる。逆に言うと、Pinterestを利用していないユーザーにどうやってその価値を理解してもらうかは課題になるのかもしれない(一応、FacebookやSMS経由で非Pinterestユーザーとも情報を共有できるそうだ)。
ちなみに競合について尋ねたところ、Sharp氏は「既存のスタートアップには(競合は)いない」とした上で、あらためて「コンテンツありきであって、友人ありきではない」と説明した。また国定氏も「Pinterestでやって欲しいのは『発見』と『実行』。これらをより早く、より深くするのがメッセージ機能」だとしている。