ブラックフライデーにはまだ10日ほど早いが、今年の企業のショッピングシーズンは既に始まっている。ここ数ヶ月だけでも私たちは合計500億ドルに及ぶ買収を目撃してきた。その最大のものは、2週間前に340億ドルで行われたIBMによるRed Hatの買収だ。一体何が起きているのだろうか?
全てがそこまで大規模の取引というわけではないが、見慣れない大きな規模の取引が今年は続いている。大きなテック企業たちが、昨年の納税の一部として、海外から送金することが可能になったことで、こうしたことが起きることを預言していた人たちもいた。
今年これまでに見た、数十億ドル規模の取引のいくつかを見てみよう:
- SalesforceはMuleSoftを3月に65億ドルで買収した
- AdobeはMagentoを5月に16億8000万ドルで買収した
- MicrosoftはGitHubを6月に75億ドルで買収した
- CiscoはDuo Securityを8月に23億ドルで買収した
- AdobeはMarketoを9月に47.5億ドルで買収した
- SAPは昨日Qualtricsを80億ドルで買収した
- Vista Equity Partnersは昨日Apptioを19億4000万ドルで買収した
需要と供給
大企業は現在その財布の紐を大幅に緩めていて、マーケティングから分析、セキュリティー企業に至るあらゆるものを買収している。彼らはオープンソースと各種の製品を入手しつつあり、クラウドとオンプレミスの橋渡しをする方法を探している。ソフトウェアは沢山あり、そうした取引間にあまり脈絡はみられない。
そうした取引に共通しているのは、そうした買収提案が、単純に拒絶するにはあまりにも巨額であるということだ。こうした企業たちはキャッシュを豊富に持ち、欠けている部分を埋める機会を探し、次々に対象を見つけて行く。
買収価格がこれほどまでに高騰している理由の1つは、買収できる企業の数には限りがあるためだと、Constellation Researchの創業者兼主席アナリストのRay Wangは語っている。彼が見るところ、現在買収対象としてふさわしい企業は、カテゴリーごとに3〜5社ほどしかない。彼はこれを、カテゴリーごとに10-15社の買収対象がいた10年前と比較して語っている。成長可能なスタートアップの数が限られているため、そうした企業を追い求める企業間の競争は激化しているように見える。そうした状況を現金で膨らんだ財布と組み合わせれば、こうした太っ腹な取引が続出するというわけだ。
大企業に買収される企業たちは、その売却を普通に正当化することができる。株主と投資家に報いることができるからだ。また買収する側の大企業は、自分自身で開発するよりもプロダクトロードマップを迅速に進めることができる。買収したチームを、国際マーケットやメガセールスチームに引き合わせることができるのだ。
購入か構築か
それでも、企業は比較的少額の収益に対して、常識外れの大きな金額を使っている。過去3週間の取引では、私たちはIBMが約30億ドルの収益を上げる企業に340億ドルを支払うところを見たし、SAPがわずか4億ドルの収益をあげる企業に80億ドルを支払うのも目撃した。
これは見たところ、確かに払い過ぎのように思える。しかしConstellationのWangは、結局これは最終的には、構築かそれとも購入かという古典的な意思決定に落ち着くのだと言う。SAPはQualtricsと同様の製品を作ることもできた筈だが、単純にそれを買収してSAPの強大なセールスパワーを使うこともできた。「SAPは10万の顧客に売り込むことができます。Qualtricsとの重複は10%しかないのです。数は大切です。そしてそれは新しいプロダクトをマーケットに投入する役に立つことでしょう」とWangはTechCrunchに語った。
Wangは、これが多くの買収の背後にある戦略だと考えているが、それでも買収金額の数字が少々常軌を逸していることは認めている。彼の言うように、こうした数字はかつては3年分の平均収益に対して、3倍程度のものだった。それが今では15から20倍に達しているのだ。こうした数字は正当化することが難しかもしれないが、それは買い手にとっても買われる側にとってもウィン=ウィンであると彼は考えている。もちろん投資家にも大きな利益をもたらすものだ。
これまでのやり方を守る
Red Hat、GitHub、Qualtricsのような例では、買収された企業は大企業の内部で、分離独立したユニットして留まることが多い。少なくとも暫くの間は。それでももし意味があるのなら、大きな企業内での意味のあるクロスオーバーが図られることもある。
しかし、Real Story Groupの創業者兼プリンシパルアナリストのTony Byrneは、こうした大企業はウォールストリートの意見に耳を傾ける傾向があり、顧客は自分たちのお気に入りの製品とサービスに関しては、耳にすることに用心深くなると語る。「最初のプレスリリースで発表される、連続性についての当初の社交辞令を信じることはできません。彼らは何よりもまず、ウォールストリートに耳を傾ける大企業なのです。もし投資家たちに対する説明に合致しない提供物がある場合、それはあまり大切にされることなく、廃棄されたり分離されたりする危機に直面することになります」とByrneは説明した。
また、取引が実際に終了するまでは、2社がどのように上手く合うことになるのかを知ることも難しい。買収する側の企業が、相手が何を持っているのか、そしてどうやってそれを売れば良いのかを知らない場合もある。2つの会社が上手く合わなかったり、創業者たちや主要幹部たちが新しいヒエラルキーにスムースに入り込めないこともある。彼らはそうしたこと全てを事前に把握しようとはしているが、実際にそれがどうなるかを知ることは、いつでも容易だとは限らない。
それにもかかわらず、私たちは尋常ではない高いレベルの巨額買収を目にしていて、おそらくは、さらに多くのケースを目にすることになるだろう。
画像クレジット: Jamie Jones / Getty Images
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(翻訳:sako)