神戸市とmobby rideは8月9日、神戸市中央区の神戸港に面する公園「メリケンパーク」にて、電動キックボードの実証実験を開催した。mobby rideは、Gunosyの創業などに関わった木村新司氏が創業したAnyPayの新規事業で、電動キックボードのシェアリングサービス「mobby」の運営会社。mobby rideは福岡市の実証実験フルサポート事業に採択され、同市での実証実験も進められてきた。
今回の実証実験に使われたのは、mobby rideが海外で展開しているセグウェイ製の電動キックボード。GPSとLTE通信機能が備わっており、アプリの設定によって最高時速や使用範囲を変更できる。この電動キックボードの最高時速は25kmだが、今回は最高時速を10kmに制限したうえで、メリケンパークの一部地域を有効エリアに設定、指定エリアから出るとエンジンがかからないようにしたうえで実証実験が行われた。
というのも、時速10〜25km程度で走行できる電動キックボードは、国内では現在のところ原付(原動機付き自転車)に分類されており、そのままでは公道を走行できない。現在でもネット通販を中心に手軽に購入できるが、私有地以外ので利用は道路交通法違反になるので注意してほしい。どうしても公道で走りたいなら、バックミラーなど原付の走行に必要な装備を施したうえで車両登録を済ませ、キックボードにナンバープレートを装着しなければならない。もちろん、公道を走るには原付免許が必要で無免許では乗れない。
実証実験は10〜16時に開催され、100名程度が集まった。キックボードは赤信号での急発進といった誤操作を回避するため、停止状態からはエンジンがかからないようになっている。手動でキックボードを強く前に蹴り出したあとにエンジンがかかる仕組みだ。この感覚を掴むまで少し時間がかかった参加者もいたが、多くの参加者はスタッフの説明を受けただけですぐに乗りこなせていた。
実際に乗車してみたところ、見通しのいい場所での時速10km程度の走行であれば安全性はある程度確保できると感じた。急停止にはブレーキレバーを使う必要があるが、通常はエンジンレバーの調整で速度を落とせるし、片足を地面につけてキックボードを駐めることも簡単だ。自転車に乗り慣れていない人は、乗車時にバランス配分に慣れる必要があるので少しの練習が必要だが、シニアでも十分に乗りこなせるのではないか。
市関係者によると、神戸では市が所有している大きな公園や施設を数多くあり、電動キックボードなどのマイクロモビリティを広範囲で実証実験するには便利な場所とのこと。神戸市は坂道も多いので、利用範囲が広がれば市内移動の利便性は高まる。一方で、今回の時速10km制限の電動キックボードであっても下り坂ではそれ以上のスピードが出てしまうし、大きな荷物を持った状態で運転すると事故になる確率も上がる。
自転車より速くて原付より遅い、この乗り物を国内で普及させるには、現在は自転車用として都市部を中心に整備されている車道脇のスペースを活用するか、交通量の少ない特定地域の移動に限定するといった落とし所になるかもしれない。
市関係者は、電動キックボードをシニアの移動手段としても考えているとのこと。時速6km以下に制限しつつ、転倒の確率が下がる三輪仕様として、免許やナンバープレートなしで利用できる電動自転車として活用方法もあるのではないかと語る。スマートフォンを活用するシェアリングモビリティをシニアが使いこなせるかという問題はあるが、高齢ドライバーの自動車事故が大きな社会問題になっている中、新たな移動手段の開発は急務だ。
欧米では、まずはサービスを開始し、そのあとに発生した問題について法整備を進めて行くスタイルだが、日本ではさまざまな規制をクリアにしてからでないとサービスを開始できない難しさがある。一方で、米国などで大きなシェアをもつLimeが、デジタルガレージと共同で日本市場に参入することを発表。今後各社がのような形態で電動キックボードを国内導入していくのが注目だ。
なお8月下旬から9月上旬にかけて、福岡市では住友商事やKDDI、デジタルガレージが主体となって、LimeとBirdの電動キックボードの実証実験を開催予定だ。西鉄バスを中心に政令指定都市ではバスにいる公共交通網が群を抜いて発達している福岡では、市内の道路の交通渋滞が大きな問題。実証実験を重ねることで、こういった問題の解決策が生まれるかどうか期待したい。