神戸市と渋谷区は、2020 年に内閣府による「グローバル拠点都市」に選ばれている。スタートアップ・エコシステムの構築を目指して起業家支援を行なってきたが、VC や起業家コミュニティ、実証実験のフィールドなど、互いの環境を補い合う目的で、2021年7月6日に連携協定を締結した。第一弾として、地域の壁を超えて新たな働き方や価値創造に取り組む『NOROSI Startup HUB(ノロシ・スタートアップ・ハブ)』を開始すると発表した。
起業家育成、人材交流、PR支援といったことはもちろん、新型コロナウイルスの影響もあり一気に普及したオンラインコミュニケーションを促進し、実験都市の神戸と起業家集積都市の渋谷をつなぐ狙い。将来的には女性起業家支援も目指す。本日よりメンバー募集を開始、8月にキックオフ、9月にチームアップ、来年2月にDEMO DAYを予定する。
チームアップにあたっては、SlackやZoomといった既存のツールも用いるが、今回主催を務めることとなった神戸のスタートアップ、アドリブワークスが提供するアイデア出しやチームアップを推進する「triven(トリブン)」を用いたり、神戸市と渋谷区含む日本各地のコワーキングスペース相互利用サービス「triven Pass(トリブン・パス)」の無料アカウントも特典として配布予定。同社は神戸新聞とトーマツが共同運営する官民連携コミュニケーションスペース「ANCHOR KOBE」と渋谷区のコンソーシアムいずれにも関与しており、そこから今回のツール採択に至ったという。
本プロジェクトに参加し、ビジネスアイデアを研磨していくにあたり、行政連携、実証実験の協力、両自治体ネットワークの活用、投資家からのメンタリングなどを受けることができる。最終的に実証実験までを目指すため、ある程度の神戸か渋谷へ関与することが望ましくはあるが、アイデア提案者、プロジェクト推進者のいずれかとして日本全土からアイデアを申込み可能。個人、企業の新規事業部門、大学の研究機関など幅広く募集している。
実証実験にスタートアップ支援と意欲的な神戸市
DEMO DAYではテスト画面を用いてのプレゼンも行うことからエンジニアも募集しており、神戸市に集積する大学や高専にも声がけを進めていく予定だという。神戸市は阪神・淡路大震災の教訓から医療機関や研究所の誘致を強化しており、山も海もある環境を生かして実証事件の場所としても機能するよう行政が推進してきた。さらに「若者に選ばれるまち」の実現のためスタートアップ支援に取り組んできているが、2025ビジョンでは、5年間で1000社の支援を目指す。すでにITスタートアップの聖地となっている渋谷区とともに、さらなる成長に取り組む。
神戸市は、市長自らシリコンバレーの著名VC「500 Startups」と会談してイノベーションを自治体でどう起こすか学ぶなど、非常に意欲的な姿勢である。今回の連携を担当した神戸市新産業課のメンバーも、近隣住民や市役所職員からの登用でなく、従来新規事業等に関わってきた外部の人間を中途採用してチームを構成している。職員も「行政でここまで活動的に動かせてもらえる環境は稀有であり、ありがたく感じている」と語った。